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菅政権の愚策で日本の自動車産業が衰退危機…コスト削減で外資依存、台湾の半導体支配を助長
https://biz-journal.jp/2021/02/post_206257.html
2021.02.17 05:50 文=深田萌絵/ITジャーナリスト Business Journal
「Getty Images」より
コロナ禍で動画配信、オンラインミーティングやストリーミングゲームが流行し、半導体チップの需要がうなぎのぼりとなって、自動車メーカーがチップを調達できない事態に追い込まれている。
今や自動車1台に50〜80個のマイコンが必要であり、自動車生産コストの3割が半導体部品だ。そして、その調達費用は2030年には自動車コストの5割に達すると予想されるほどである。
半導体不足で自動車メーカーは減産を余儀なくされ、その影響はトヨタ自動車、日産自動車、本田技研工業(ホンダ)などの日系メーカーから、フォルクスワーゲン、フォード、フィアット・クライスラー(ステランティス)などの欧米メーカーにまで波及している。
自動車メーカーの苦境は、運転支援、大型ディスプレイ、コネクテッドカーなどの目新しい機能を満たす処理のために必要な半導体部品が調達できないことで、悪化している。
■半導体不足の元凶
車載の半導体不足に関する原因は、いくつか挙げられている。
味の素のCPU向け絶縁体不足、旭化成の半導体工場火災などが指摘されているが、それだけにはとどまらない。この10年かけて日本の半導体メーカーがチップ製造を台湾へ委託することが進行していたことにある。
日本企業のルネサスだけではなく独インフィニオン、蘭NXPなどの車載チップに強いメーカーがチップ製造を委託していた台湾大手半導体ファウンドリのTSMCが、車載チップの供給を満たしていなのだ。
日米欧の首脳らが、車載チップ不足で台湾当局とTSMCの製造強化について協議しているところからも、チップ不足の原因は世界の半導体製造シェア55%を誇るTSMCだとみるべきだろう。
ここで奇妙なのは、車載用チップの多くは28ナノ、40ナノなどのレガシーテクノロジーで、かつ変更の難しい車載認定ラインであるため、最先端プロセスを利用するスマホなどのコンシューマへ転用することは難しく、車載ラインをコンシューマに充てることはないという点だ。単純に、TSMCが計画通りに受注した車載チップを製造せずに、車載チップ製造ラインの人員リソースをコンシューマ製造ラインに優先して割いているのではないかという疑惑がある。
TSMCの最高経営責任者(CEO)であるC・C・ウェイ氏は1月15日の英文ニュースで、「車載チップ不足解消がTSMCにおいての最優先事項」と語ったと報じられたが、同日に出た中文ニュースでは「5Gとハイパフォーマンスコンピュータに焦点を当てている。認証期間が長く、製造プロセスが複雑なため、自動車用チップの増産をまだ決定していない」と、矛盾する回答を行っている。
このウェイ氏のコメントから、「英語圏の人々には車載が最優先だと調子のいいことを言って、中国語圏の人々に対しては車載増産を決定していないと答えるのはおかしいのではないか」と、自動車業界から不満の声も上がっている。
中国が国家戦略計画「製造2025」で、半導体が産業の肝だとして自給率75%を目指しているにもかかわらず、日米欧の政府が自国の半導体自給率を甘く見ていたことにも責任がある。
■キングメーカーは台湾へ
自動車メーカーだけでなくエレクトロニクスメーカー全般にいえることだが、半導体製造を外資に依存するのは高リスクだ。ところが、半導体市場は投資額が大きい一方で競争が激しく利益確保が難しいため、各国政府が自国半導体企業を支えてこなかったという背景がある。
2008年のリーマンショック前までは、日本のエレクトロニクスメーカーはパソコンや携帯、スマホに強かったが、チップ製造を台湾にアウトソースした結果、新製品リリースのタイミングでチップが供給されずにシェアを落としたということが何度もあった。
台湾半導体企業は、自分たちが選んだ“仲間”へ優先的にチップを供給して市場で勝たせるという、“キングメーカー”の役割を果たしている。
奇妙なことに、世界的な車載チップ不足による減産が指摘されるなかで、テスラだけが40%の増産を発表しており、チップが不足しているとの報道はない。車載半導体の供給不足で日米欧の各自動車メーカーが数万台ずつ減産したが、ちょうどテスラの増産分20万台が市場の自動車需要分に穴が開かないように供給されるのは偶然だろうか。
トヨタが米国市場でピックアップトラック減産に踏み切るが、そのタイミングでアマゾンがピックアップトラック投入を発表した。
各社減産分を増産する企業が存在するという流れが、半導体を牛耳る企業が自動車市場での勝者を決める“キングメーカー”となったと言われるゆえんである。
■同郷・血縁でつながる台湾半導体企業群
日本で上場する某ファブレス半導体企業の社長から、「台湾には半導体シンジケートが存在し、逆らうとチップが供給されなくなるという話を聞く」と聞いたことがある。
その後、調査を重ねるにつれて、台湾の半導体企業の多くが100年以上前から同郷・血縁関係で成り立っていることがわかった。その中心にいるのが、戦中の蒋介石を支えた上海疎開地を牛耳るマフィアのトップ・杜月笙であり、米制裁対象のファーウェイ最高財務責任者(CFO)の孟晩舟は、杜月笙と周恩来の共通の部下、孟東波の孫である。
台湾メモリ大手ウィンボンド及びマイコン中堅ヌヴォトンは、杜月笙の右腕で上海電線工場利権を得ていた焦廷標の息子焦佑鈞が創業者である。そのウィンボンドと同時に創業したのが、先祖代々の仲間である孟家のファーウェイと、台湾大手半導体製造にまで成長したTSMCであり、この3社は支え合いながら成長してきた。
また、焦佑鈞は、側近の張汝京に出資してWSMCを創業させ、後にTSMCと株式交換による統合でTSMCの株主となる。その後、張汝京は中国大手半導体SMICを創業し、TSMCが株主となった。
こう見ると、ファーウェイのチップ製造を行っているTSMCもSMICも、焦佑鈞が支配者である。そしてファーウェイ製品の組み立てを行うフォックスコンの郭台銘と張忠謀は親戚だ。
ARMを買収したソフトバンクグループの初期の投資家である蔡崇信の祖父は、杜月笙の弁護士・蔡六乗だ。その蔡崇信の妻・呉明華は、台湾土着のビジネスグループである台南幇の重鎮の孫娘。その台南幇の仲間うちがエヌビディアCEOのジェンスン・ファンと、その親戚のアドバンスト・マイクロ・デバイセズ(AMD)のCEOであるリサ・スーだ。
こう見ると、世界の主要な半導体メーカーが仲間意識の強い同郷血縁関係にある華人にかなり牛耳られており、彼らに逆らったり、にらまれたりすると「半導体調達がひっ迫」する羽目に陥るというわけだ。
■高まる外資依存のリスク
今回の世界的な半導体不足で、エレクトロニクス産業にしろ自動車産業にしろ、半導体製造を台湾に依存するリスクの高さが露呈した。コメの自給率が100%である一方、日本では“産業のコメ”と呼ばれる半導体チップの自給率にまで経産省が注力しなかったことが原因である。
半導体製造を外資に委託することで、コスト削減やバランスシートの改善というメリットが得られるが、その一方で日本の国策産業であったエレクトロニクスは低迷し、いまや自動車産業まで凋落の危機に晒されている。
過去に、台湾で上場していたファブレス企業も台湾ファウンドリから納品がなされずに倒産、日本のコンピュータ・メーカーが台湾にチップ製造を委託して9割が不良品だとして1割しか納品されず、いつの間にか中国闇市場で同チップが大量に流通していたというトラブルも業界では指摘されている。
では、コスト削減のために、日本企業は海外で半導体を生産すべきなのかというと、それも違う。日本のエレクトロニクス企業が凋落した原因は、中国に半導体工場を設立し、チップの設計から製造技術までが流出したことにある。
2011年の時点で、パナソニックの中国人社員が「チップ営業を努力しても、本物が半額以下で闇市場に流れているので勝ち目がない」と零していた。
■半導体製造は国家戦略
半導体製造を「コスト」でしか捉えられなければ、半導体企業だけでなく「国家」が衰退することになる。
中国の「製造2025」でも発表されたが、高い半導体自給率は強い国家の戦略となるため、米国はそうはさせまいと闘ったのだ。韓国はサムスン、LGが戦略的に半導体製造を維持し、台湾も半導体産業支配で世界のエレクトロニクス産業から自動車産業までも支配しようとしている。
菅政権最大の愚策は、日本のエレクトロニクス産業を侵食し、自動車産業を支配するために供給を怠ったTSMCに日本人の血税を注いで、半導体工場をつくらせようとしていることだ。過去に日本は半導体素材、製造装置で世界トップレベルであった。同じだけの金と土地を日本企業に与えれば、日本の半導体復興は自前で可能なのに、外国企業に利権を与えるのは癒着以外の何物でもない。日台連携を目指して滅んだエルピーダのことを忘れたか。
日本の国策半導体企業であるDRAM大手エルピーダは、産業活力再生特別措置法(産活法)いよって台湾と連携して復興を目指したが、台湾企業に技術が流出して類似品大量市場投入によるDRAM価格暴落を招き、会社更生法を申請するに至った。
もともと日本は半導体製造で輝かしい技術を持っていた。そして、今も素材から半導体製造装置まで、多くを日本企業が占めている。今こそ、日本の半導体企業に対して投資し、解雇された半導体企業社員を呼び戻すべき時なのである。
菅政権は中小企業を潰し、地方銀行に中小企業を買収させて外資に売り飛ばす方向で銀行法改正に動き、そして産業の心臓部分である日本の半導体産業を潰そうと動いている。
国民には自粛を押し付ける一方で、菅義偉総理は3カ月で会食100回以上、長男は総務省役人を高級料亭で接待することに明け暮れている。
国民を思いやらず、日本経済の未来も考えず、法律改悪で利権漁りに明け暮れる政権には早期に退陣していただかなければ、日本は追い詰められた半導体産業だけでなく自動車産業まで滅びる運命となる。
(文=深田萌絵/ITビジネスアナリスト)
深田萌絵(ふかだもえ)
ITビジネスアナリスト
早稲田大学政治経済学部卒 学生時代に株アイドルの傍らファンドでインターン、リサーチハウスでジュニア・アナリストとして調査の仕事に従事。外資系証券会社を経て、現在IT企業を経営。
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