↑↑ 治るとこうなるわけ!! ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー 豊田真由子、新型コロナ対策は何を目指すかを明確にすべき 「対策」は「目標」によって変わる 8/20(金) 18:30配信 https://news.yahoo.co.jp/articles/66ed296a749bfea8e6e2c73a1461ea56869234fb?page=1
緊急事態宣言が延長・地域拡大されました。
感染者が急増し、ロックダウン法制整備を求める声なども聞かれますが、果たして今、日本に本当に必要なことは、何でしょうか? 日本は、一体何を目指しているのか?「対策」は「目標」によって変わってくる まずもって、「日本は、一体何を目指しているのか?」を明確にするべきです。何を目標とするかによって、取るべき政策や国民に求める行動は、全く変わってきます。そこがはっきりしないまま、緊急事態宣言を繰り返しても、出口も見えず、国民は混乱・疲弊するばかりです。 まず、あれだけ五輪で大騒ぎしておいて、感染爆発・非常時・緊急事態宣言延長となり、「大変だから、みんな我慢して!!」と、あたかも、国民が「自粛をしないから悪い」かのように言われても、正直、多くの方は、「は?・・何それ?」という気持ちになっているのではないでしょうか。 五輪を開催した時点で、国民の心理への影響は確実に有るわけですから、デルタ株の流行もあり、結果、感染が増えるであろうことは、当然予想されたことです。それなのに、コロナ渦が1年8か月経ってなお、医療体制の整備ができていなかったということが、現下の最大の問題なのではないでしょうか。 感染症対策の流れを単純化し、「入口、中間、出口」と考えれば、感染しないようにする(=「入口」の人数を減らす)ことは、国民の努力に期待するところも大きいでしょうが、感染した人を重症化させない、重症者を死なせない(=「中間」と「出口」の被害を減らす)ことは、基本、個人の努力でどうにかなるものではなく、政治と行政が頑張るところです。残念ながら、1年8か月経っても、そこの結果が見えてこない(個々の職員の方が、ものすごく頑張っていることはよく分かっているのですが・・)ことが、日本のコロナ対策の悲しいところ&国民の大きな不信の元なのだと思います。 ――――――――――――――――――― そして、必要な方策を決めるための前提となる、最も大切な事が、定まっていないと思います。それは「日本は、一体何を目指しているのか?」ということです。 例えばニュージーランドは、8月17日、国内最大の都市オークランドで、2月以来となる国内での新規感染例が、たった1件報告されたことで、全土で3日間(オークランドは7日間)のロックダウンを、同日深夜に開始すると発表しました。NZは「感染者ゼロ」を目指し、コロナ当初から極めて厳格な国境管理等を行い、繰り返しロックダウンを行ってきました。 一方、感染状況がかなりひどかった欧米は、現在、ある程度の感染者が出ていても、「ピーク時よりはずっとマシ」と受けとめ、かつ、ワクチン接種の進展もあり、感染拡大防止の規制(ロックダウン、マスク着用義務、営業規制等)を緩和していっています。(※規制の再強化が行われる場合もあります。) これは、どれが正解というよりも、これまでの感染状況や、国民がどこまでを許容するか、といったことを反映した価値判断の違いといえます。それぞれに対して、国内外で賛否両論あります。 では、「日本は、一体何を目指し、そのために何をすべきか?」ということですが、ここまで感染が拡大した中で、仮に法整備をして「ロックダウン」を行ったとしても、ニュージーランドのような状況を実現するのは、難しいでしょう。(一定の感染拡大抑制にはなると思いますが。なお、最近になって、国内の人出が減ってきているのは、感染急増を受けて、一人ひとりが危機意識を持ち、自発的に行動変容した結果であり、政府に何か言われたからではないように思います。) 一方で、欧米のように、規制を緩めて、あそこまでの感染状況を甘受するということも、許容されないでしょう。(ちなみに、「日本の感染状況は、欧米に比較するとかなり少ない」とよく言われますが、所在する東アジア・近隣のオセアニアの先進国と比較すると、残念ながら、かなり悪いと言わざるを得ません。物事は、公正・客観的に論じないと、問題を見誤るという一例だと思います。) であれば、日本の現実的な目標と対策としては、個々人が、引き続き必要な感染防止策を取りながら、ある程度の社会経済活動をきちんと維持しつつ、ワクチン接種を進め、そして、新型コロナ用病床・医療スタッフを大幅に増やし、重症者・死者を、できる限り出さないようにする、ということになるのではないでしょうか。 以下、そのために何をなすべきか、考えてみます。 ◆臨時の新型コロナ病院の開設が必須。医療スタッフは全国から確保<亡くならせない> 「高齢者のワクチン接種が進んだこと等により、感染者は増えていても、これまでに比して、重症者・死者は少ない」との主張がなされることがあります。確かに、「数字だけ」見るとそういうことになるのですが、しかしながら、一人の方の死であっても、ご本人やご家族にとっては、甚大な苦しみ悲しみであり、それに、必要な医療が適切に受けられないことで、自宅療養や入院調整中に亡くなる方が出てきていることは、決して看過できることではありません。東京都では、自宅療養者が2万人を超え、今月に入り18日時点で、少なくとも7名の方が自宅療養中に亡くなっています。 また、呼吸状態に異変の生じた自宅療養者に酸素を投与する「酸素ステーション」が設置されることになっていますが、それはあくまでも、病院への入院を待つ間、命をつなぐ・重症化を防ぐといったための一時的な応急処置に過ぎず、「酸素を投与したら、病状が回復して自宅に戻る」という前提でシステムを構築すると、実態を見誤ります。やはり、必要なのは、「必要な医療を、適時適切に提供できる病床と医療スタッフ」です。 実は特措法では、都道府県知事は「医療機関が不足して、医療提供に支障がある場合には、臨時の医療施設を開設し、医療を提供しなければならない。」とされています。つまり、医療が逼迫した状況において、臨時の新型コロナ病院を開設することは、都道府県知事の「義務」なのです。(もちろん、国が開設することもあり得ます。) (※)新型インフルエンザ等対策特別措置法 (臨時の医療施設等) 第31条の2 都道府県知事は、当該都道府県の区域内において病院その他の医療機関が不足し、医療の提供に支障が生ずると認める場合には、その都道府県行動計画で定めるところにより、患者等に対する医療の提供を行うための施設であって都道府県知事が臨時に開設するものにおいて医療を提供しなければならない。 現在、もはや我が国の既存の病院では、新型コロナ用の病床をこれ以上確保することはできない、ということなのであれば、他国のように臨時の新型コロナ病院を早急に作るべきです。数百・数千の病床を1か所にまとめることで、比較的少ない医療スタッフや医療資源を有効に活用して、多くの患者に対応することができるようになります。がんや脳・心疾患治療等、新型コロナ治療と同様に重要な、通常の医療への影響も抑えることができます。 他国の例も参考になります。 例えば英国は、NHS(National Health Service)という国営の医療システムで、病院の9割以上が公的病院で国の管轄下にあり、2020年3月からのロックダウン時には、短期間で国内の医療体制を新型コロナ感染症用にシフトしました。新型コロナ用の病床・ICUの増床、さらに重症患者も受け入れ可能な「ナイチンゲール病院」という専用の仮設病院が全国に設けられました。 また米国では、連邦制の下で各州政府の権限が強く、各州の実情に応じて、州知事等が強力な権限を行使しました。ニューヨーク州では、2020年3月、州内の病院に病床増床の命令を発するとともに、大型展示場に1000床など、州内8か所に臨時病院を設置、米海軍の病院船の使用も政府に要請し、9万床を確保しました。 日本でも、グループ病院が、駐車場に数十床のコロナ病床を作るなど、例があります。 臨時の新型コロナ病院を開設することについては、「医療スタッフが集まらない」、「ECMO等の機器が足りない」といった声を聞きます。確かに、重症者の集中治療は、医療の中でも難しい分野で、ECMOや人工呼吸器を適切に使用できるようになるには、かなりのトレーニングが必要とされます。特に、新型コロナが発生してから、こうしたトレーニングを担える指導者自身が、現場で新型コロナの対応に当たっているため、トレーニングを進めることができず、なかなか対応できる人員が増えないとも聞きます。 しかし、できない理由をいくら並べ立てていても、命は救えません。「危機だ!!」というのであれば、完璧でなくても、やれることを最大限なんでもやる、ということが必要だと思いますし、そうした気概を持たれている方も多くいらっしゃると思います。 自衛隊の医官・看護官やフリーランス、感染拡大がひどくない地域の医療従事者の方々に来ていただくなど、「救える命」を「救えたはずの命」にしないために、今こそ知恵と力を絞るときだと思います。(なお、自衛隊には、紛争地での重篤な治療に対応できる医官1000人、看護官1000人が所属しており、今回国が設置したコロナワクチンの大規模接種センターには、医官90人、看護官200人が派遣され、8月25日のセンター終了後は、それぞれの勤務地に戻られる予定です。) ◆保健所業務を地域の診療所や民間事業者へ委託。診療所による往診・治療。医療機能を強化した宿泊療養施設の拡充等 <病状を悪化させない> 「新型コロナ患者の入院は、原則重症者に限る」という政府方針転換の問題点は、前回述べた通りですが、忘れてならないのは、「軽症・中等症」と「重症」は、全く別のものというわけではない、ということです。基本的には、軽症・中等症の方が、病状が悪化して重症になるわけで、であれば、「重症者を亡くならせない」という前の段階として、軽症・中等症の方に適切な医療を提供することで、「重症者を増やさない」ということも、極めて重要になります。 重症者を増やさない、自宅療養中に亡くなるような方を出さないために、以下のような方策を取ることが必要だと思います。 (@)保健所・自治体の健康観察や調整業務を充実させるために、地域の医療機関や、民間事業者への委託を活用する。 以前からずっと言われていることですが、現下の状況で、入院調整や健康観察、濃厚接触者追跡といったすべてを保健所・自治体に委ねるというのは、明らかにキャパシティを超えています。新規感染者の急増で、新型コロナ検査陽性の結果が出てから、保健所から連絡が来るまで数日を要することもあります。そして、陽性者に対しては、入院・宿泊療養調整、そして、引き続きの健康観察や買物代行といった形で、継続的なサポートが必要です。 保健所の増員が難しいのであれば、東京都など一部地域で行われていますが、健康観察等を、地域の医療機関や民間事業者へ委託して行っていただくといった方策を、広く考えるべきです。 (公共サービスを民間委託することについては、法理論上、「相当程度の裁量を行使することが必要な業務や、統治作用に深く関わる業務(公の意思の形成に深く関わる業務や、住民の権利義務に深く関わる業務等)については、民間委託になじまない」とされていますが、住民の権利義務に深く関わる業務であっても、守秘義務やみなし公務員規定などの必要な措置を講じることで、法令上民間委託が可能とされます。) (A)地域の診療所が往診(治療、酸素投与等も)するなど、積極的に役割を果たしていただく。 陽性の検査結果が出ても、保健所から連絡が来るまでの間、医療との関わりが一切無い、そして、連絡が来ても、病院にも宿泊療養施設にも入れない、という状況があることも、ご本人や家族にとっては、大変心細いことです。そして、必要な医療が提供されないまま、自宅療養中に亡くなることの無念は、計り知れません。 陽性結果が出た方に対しては、自治体の「フォローアップセンター」だけではなく、当該地域の診療所が、電話や往診といった形で、感染した方のフォローをしていただくということが望ましいと思います。東京都の一部地域では、症状が悪化した場合には、往診で酸素投与や投薬治療も行われています。 ただ、都の委託で新型コロナ患者の往診等を手掛ける医師は、約550人ほどで、都内2万2千人(全国では7万4千人)を超える自宅療養者を、十分にケアできる状況ではありません。ある医師は「感染をおそれ、診療所内に反対の声もあった。診療所内のマンパワーは限られているし、往診だといろいろな検査ができない・機器が使えないといった限界もある。しかし、今やれることを、頑張ってやるしかない。そして、みんなの力を結集しないと乗り切れない。」とおっしゃっていました。まさにそのとおりだと思います。 「国民の生命と安全を守る」−『安全・安心』というのは、こういった「使命感と熱意と具体的な行動」があって、初めて実現できるものなのだと思います。 (B)医療機能を強化した宿泊療養施設を増やす。 さらに、一軒一軒往診に回ることに要する時間や労力を考えれば、医療機能を強化した宿泊療養施設を増やし、軽症・中等症の方をそこに集めることで、限られた医療資源を有効に活用し、患者の不安に応え、急変に迅速に対応することが可能になります。 そもそも、「重症者以外は、基本的に自宅療養」という政府方針は、家庭内感染をどんどん増やし、急変にも対応できないといった点で、問題が多いといえます。 なお、新型コロナウイルスの軽症から中等症の患者の重症化を防ぐ「抗体カクテル療法」について、これまでは入院患者に限っていましたが、8月13日の厚労省通知で、宿泊療養者も対象として認められることとなりました。抗体カクテル療法は、発症後、できるだけ早期に投与することが重要なので、アナフィラキシーへの対応等に留意しつつ、使用できる状況が増えることは望ましいと思います。 ただし、抗体カクテル療法の薬剤は、中外製薬の親会社であるスイス・ロシュと米リジェネロンが海外で製造したものを国が買い上げ、新型コロナ対応に当たる病院に配布する、ということになっていますが、現時点でロシュ等の製造能力は、世界で年間約200万回分と限られており、日本の調達予定量は年内20万回分です。 「期待が大いに高まったのに、結局、不足して必要な人が使えない」ということが繰り返されないか、心配です。重症化リスクの高い方に限って使用するといった、現実的な対応が求められます。 新型コロナワクチンの接種には、国が音頭を取り、大幅に報酬を上げ、自治体も様々に募集をかけて、医療従事者を集め、急ピッチで進めました。一方で、国民の命を救うための医療従事者が集められない、でよいはずがありません。 ◆危機下においては、危機に応じた対応を<皆の力を結集する> 「危機です、非常事態です!」という言葉がよく発せられます。であるならば、まずは「危機に応じた対応」を、言ってる側が全力でやって、形にしてください、というのが、国民の思いではないかと思います。
そしてまた、国民は、「お客様」ではなく、この国と社会を、ともに守り、良くしていく同志であると、わたくしは考えます。今、大切なのは、現実に即して、皆が力を合わせて、やれることを最大限やっていく、ということだと思います。 「自分と家族を守り、他者を守り、社会も守る。」−そうすることではじめて、新興感染症を真に克服することができるようになるのではないか、と思います。 ◆豊田 真由子 1974年生まれ、千葉県船橋市出身。東京大学法学部を卒業後、厚生労働省に入省。ハーバード大学大学院へ国費留学、理学修士号(公衆衛生学)を取得。 医療、介護、福祉、保育、戦没者援護等、幅広い政策立案を担当し、金融庁にも出向。2009年、在ジュネーブ国際機関日本政府代表部一等書記官として、新型インフルエンザパンデミックにWHOとともに対処した。衆議院議員2期、文部科学大臣政務官、オリンピック・パラリンピック大臣政務官などを務めた。
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