次期夏季五輪開催パリ roth4242 https://number.bunshun.jp/articles/-/846892 フランスメディア「東京五輪は“開催するしかない”」その理由は? 24年パリ五輪は順調〈スポンサー目標額46%を確保〉 posted2021/02/04 17:02 <Number Web> photograph by AFLO text by 高崎順子 Junko Takasaki 新型コロナウイルスの感染拡大が収まらず、東京でも3月7日までの緊急 事態宣言の延長が発表された。すでに1年先送りにされている2020年東京 オリンピックは、予定通り7月に開催されるのだろうか? 延期か、中止か、 強行か? 行方を占う報道が各国でなされているが、筆者の住むフランス では、「東京五輪は2021年に開催される」の報道が多数を占めている 。 日本政府やIOCの公式見解は、異議を挟まず、事実として淡々と報じられる。 フランスの通信社AFPの情報をそのまま配信するところも多い。独自記事では アスリートたちの準備状況や心情を取材したり、選手のワクチン接種問題を 取り上げるものもあるが、東京五輪自体は「やる」が既定路線なのだ。 パリ五輪は「スポンサー契約の目標額46%を確保」
この状況には、フランスが東京の次の2024年五輪開催地・パリを擁している ことが関係している。パリ五輪の準備はすでに始動しており、昨年末の時点で スポンサー契約の目標額の46%を確保、コロナ禍を鑑みても順調な進み具合に ある。 ここで東京五輪が延期または仕切り直しとなり、パリ五輪の準備スケジュール に影響が及ぶのは、できる限り避けたいわけだ。また新型コロナの先が見えな い以上、この状況下でも東京で開催してもらい、続く五輪運営の試金石とした い狙いも感じる。 「東京五輪の主催者は様々なオプションを持っている。我々は東京がどのよう になっていくかを観察したい」 パリ五輪組織委員長のトニー・エスタンゲ氏は、今年1月下旬の会見でそう 語った。 新型コロナが2024年より前に収束しないケースを検討しているか? との問いに答えたものだ。同じ会見でエスタンゲ氏はこうも断言している。 「パリ五輪は2024年に開催します。東京五輪がどうなっても」 なぜ東京五輪は「開催するしかない」のか? そんなフランスメディアの報道の中で目を引くのが、東京に特派員を持つ 大手全国紙各社の特集記事だ。日本社会をよく知り、かつ外国人として異なる 視点に立つ彼らのルポは、IOCや政府の公式見解からは伝わらない背景や世間の 声を立体的に編み込み、読み応えがある。 リベラシオン紙では昨年9月、カリン西村記者が、膨らむ東京五輪関連予算と、 五輪開催より自国の経済復興を案じる日本国民の心情をレポート。ル・モンド 紙のフィリップ・メスメール記者は昨年11月の記事で、著述家・本間龍氏の ツイートや日刊ゲンダイの記事を紹介しつつ、日本で高まる五輪開催反対派の声 を取り上げた。 そして先月末、英国の老舗日刊紙タイムズが東京五輪開催を危ぶむ報道をした 際には、 カルロス・ゴーン関連本でも知られる日本通レジス・アルノー記者が筆を執った。 日本の世論や五輪組織委員会のあり方を問いつつ開催可能性を分析する記事を、 ル・フィガロ紙にて配信している。 このアルノー氏の記事で興味深いのは、東京五輪は「開催する」に留まらず、 「開催するしかない」状況にあるとも読めるニュアンスだ。 日本の五輪関係者の「隠された、強い動機」とは? 「この段階で、(東京五輪の)延期や中止を正当化できるような客観的な理由 はない」 これは記事内で紹介された、東京在住のフランス人スポーツジャーナリスト、 フローラン・ダバディ氏の見解だ。続いて記事では、昨年の延期決定前に真っ先 に不参加を表明したカナダ五輪協会が今年は参加声明を出していること、日本で 昨年行われたスポーツイベントで感染クラスターが発生していないことなどを明示 している。 それでも東京五輪開催が日本国民の支持を集められない原因として、五輪組織 委員会の広報戦略の欠落を指摘した。ロンドン五輪やパリ五輪のように、五輪で 英雄的な成果を上げた元選手の「顔」 がいない東京五輪の組織委員会(※)。 代わりに記者会見で前面に出てきているのが、83歳の政治家と77歳の元官僚である ことも。 (※ロンドンはセバスチャン・コー〈元陸上中距離〉、パリはトニー・エスタンゲ 〈元カヌー・スラローム〉の名前を挙げている) 記事の末尾では、日本の五輪関係者の開催に向けた「隠された、強い動機」が 述べられている。 菅総理が「人類が新型コロナウイルスに打ち勝った証」と位置付けた五輪を、万が 一2021年に東京で実現できなかったら? 直後の2022年に冬季五輪が開催されるのは、新型コロナウイルスの発生国・中国 の北京なのだ。 それは日本の関係者にとって、それこそ「オリンピック級のbobard(でたらめ)」 であろう……と、アルノー氏は記事を結んでいる。 フランス国内で東京五輪の関連報道を見ていると、東京五輪は延長も中止もなく、 開催される見込みを感じる。 しかしこの感触の前提には、次の夏季五輪開催国・フランスという文脈があることは、 忘れずに留意したいところだ。先日の森委員長の性差別発言に関してもAFPが速報し ル・フィガロ紙などが報道したが、開催自体の是非には触れられなかった。 開催予定まであと半年、延期か、中止か、強行か。オリンピックに様々な利害関係 のある諸外国が、それぞれの思惑と関心で今、日本を見つめている。
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