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小林・益川理論 50年(上)宇宙はなぜ存在するのか 6種類のクォークを予言(東京新聞)
2023年3月19日 07時56分
https://www.tokyo-np.co.jp/article/238927
現在の宇宙はなぜ存在するのか−。その謎を解く鍵を世界に示したのが2人の若い研究者、小林誠さんと益川敏英さんでした。ちょうど50年前のことです。2人が発表した「小林・益川理論」は物理学に大きな影響を与え、2008年にノーベル物理学賞を受けました。しかし発表当時、論文は見向きもされませんでした。理論の半世紀を上下2回の連載で振り返ります。 (永井理)
小林さんは七十八歳、高エネルギー加速器研究機構特別栄誉教授です。名古屋大素粒子宇宙起源研究所特別教授の益川さんは一昨年、八十一歳で亡くなりました。五年違いの二人は名古屋大の先輩と後輩でした。
◆衝撃
当時、物理学は衝撃的な事実に直面していました。物質と反物質の世界では物理法則が微妙に違うというのです。一九六四年に米国のクローニン博士とフィッチ博士が、K中間子という粒子の実験で発見しました。
この違いは「CP対称性の破れ」と呼ばれます。それまで物質と反物質は、鏡に映した像のように、見え方は違うが本質的には同じで、同じ法則に従うと考えられていたのです。
なぜ法則が違うのか? 物理学者は悩んでいました。益川さんも興味を持ったが「攻略する道具がそろわず、いったん棚上げにした」と語っています。その道具が七一年にそろいます。オランダのトホーフト博士らが「弱い相互作用のくり込み」という理論を発表したのです。
七二年には、益川さんが助手を務める京都大に、名大大学院を出た小林さんが助手として赴任してきました。二人はトホーフト博士らの理論を使い「CP対称性の破れ」を説明できないかと、共同研究を始めました。
「私は大学院を出たばかりで、とにかく目の前で起こっていることを吸収して、何か新しいことが言えないかと考えていた。共同研究は自然な流れだった」と小林さんは振り返ります。
ゴールデンウイーク明けから一カ月あまり集中的に議論を重ねて論文にまとめ、七三年二月に学術誌で発表しました。これが小林・益川理論です。
二人は論文中で、CP対称性の破れを説明する三つの可能性を示しました。その一つが「クォークが六種類あれば破れが説明できる」というものでした。
当時、クォークは三種類しか知られていませんでした。そこへ「六種類」はかなり大胆でした。論文は注目されず、他の論文に引用された回数は、発表後二年間でわずか二件でした。
◆風向き
しかし風向きが変わります。七四年に四種類目のクォークが見つかったのです。続いて七五年にはタウレプトンという電子の仲間が発見され、クォークが五種類以上あることが示唆されました。小林・益川理論に沿って物事が動き始めたのです。
七一年に道具がそろい、七四年には実験結果が出始めます。この間に理論を発表した二人は、とても鋭くタイミングを捉えていたといえるでしょう。
七六年には、米国で名の知られていた元高エネ研機構長の菅原寛孝さんらが、小林・益川理論を引用した論文を書いたことで注目度は上がり、引用も爆発的に増えました。菅原さんは「小林さんと益川さんの論文を読んで、すぐに重要だと感じた」と話します。米スタンフォード大のデータによると二人の論文が引用された回数は計一万一千回以上。二千〜三千回でノーベル賞級ともいわれ、極めて多い数です。素粒子物理学の論文ではトップクラスです。
後編は、小林・益川理論がどう宇宙の成り立ちに関連するのか、ノーベル賞を受けるまでに何があったのかをまとめます。
◆論文はわずか6ページ 「CP対称性の破れ」を説明
小林・益川理論の論文はわずか六ページでした。「簡潔な中に、あらゆる可能性が検討し尽くされている。緻密な議論の末に結論にたどりつく科学研究の醍醐味(だいごみ)がそこにある。お手本となる論文」と棚橋誠治・名古屋大教授は魅力を語ります。
論文は当時、発表間もなかった「弱い相互作用のくり込み理論」をさらに拡張する試みです。「この方向で議論を進めるのは、かなり勇気のいることだったろう」と棚橋さんはみます。
論文前半は、従来の考えではCP対称性の破れがどうしても説明できないことを証明しています。後半は、破れを説明するには何を加えればよいのか三つの候補を挙げています。その一つが新種のクォークでした。
まもなく四種類目のクォークやタウレプトンが次々に見つかります。世界は、それらがすでに日本の若者によって予言されていたと知り驚いたのです。「理論が実験に先行して大成功した例」と棚橋さんは話します。
小林・益川理論 50年(下) 次につなげた「最後のピース」 「CP対称性の破れ」実証(東京新聞)
2023年3月26日 07時46分
https://www.tokyo-np.co.jp/article/240252
小林誠・高エネルギー加速器研究機構特別栄誉教授と一昨年亡くなった益川敏英・名古屋大素粒子宇宙起源研究所特別教授が発表した小林・益川理論は、物質をつくる究極の素粒子「クォーク」が6種類あることを言い当て、世界を驚かせました。しかし本当のすごさは「現在の宇宙がなぜ存在するのか」という疑問に深くかかわっているところにあるといいます。 (永井理)
前回を少し振り返ります。
一九六四年、物質と反物質の間に物理法則の微妙な違いがあることが明らかになり大騒ぎになりました。この違いは「CP対称性の破れ」と呼ばれます。二人は、破れの理由を説明する小林・益川理論を七三年に発表。クォークが六種類あればCP対称性が破れることを示しました。
◆次々
当時クォークは三種類しか知られていませんでした。若い研究者が「六種類」と言っても相手にされません。「あちこち論文を送ったが反応はなかった」と益川さんは語っています。
ところが七四年、米国で四種類目が見つかります。衝撃は大きく、発見者のティン博士とリヒター博士はわずか二年でノーベル賞を受けました。世界が小林・益川理論に沿って動き出しました。七七年に五つ目が発見されると、もう六種類を疑う人はいなくなりました。
ただ、最後は難関でした。世界で発見競争が繰り広げられましたが見つかりません。日本も八〇〜九〇年代、大型加速器トリスタンを建設して挑みましたがだめでした。そして九四〜九五年、ようやく米国の加速器テバトロンで確認されたのです。六種類がそろい、小林さんと益川さんはノーベル賞候補としてがぜん注目されるようになりました。
◆本題
六つのクォークはそろいましたが、本題の「CP対称性の破れ」が理論どおり起こるのか確かめる必要があります。「六という数字を偶然当てただけと言われたら嫌だから」と益川さんは説明していました。日米で実験が始まりました。
日本では高エネ研にKEKB加速器とベル測定器がつくられました。加速器でB中間子という粒子と、その反粒子の反B中間子をつくり、双方が壊れる様子を測定器で比べた結果、壊れる確率やタイミングがわずかに違っていました。
二〇〇一年には小林・益川理論が正しいことが示され、米国でも同様の結果が出ました。それが〇八年の両氏のノーベル賞受賞に結び付いたのです。
「小林・益川理論は素粒子物理学を動かしてきた」。ベル測定器の実験に参加してCP対称性の破れの確認に大きく貢献した名古屋大の飯嶋徹教授は話します。「ヒッグス粒子(一三年ノーベル物理学賞)とともに、素粒子の標準理論を完成させる最後のピースだった」といいます。
◆宇宙
ビッグバンで宇宙が誕生したとき、粒子と反粒子が対になって同じだけ生まれたと考えられています。飛び散った粒子と反粒子は、やがて出合って対消滅します。数が同じなら粒子も反粒子もすべて消えるはずです。しかし、宇宙には物質が残り星や私たちを形づくりました。物質と反物質のバランスが崩れたのです。つまりCP対称性の破れがあったということです。
ただ、小林・益川理論の示す破れだけでは物質が残ったことを説明しきれないことも分かってきました。高エネ研の山内正則機構長は「まだどこかに私たちがきちんと理解していないCP対称性の破れがあるということ」と強調します。最後のピースを埋めたとたん、次のステージへのヒントが現れたのです。それが小林・益川理論です。
■ノーベル賞 静かな知らせ 「候補」から受賞まで十数年
小林・益川理論がノーベル賞の期待を集めてから、2008年に受賞するまで十数年かかりました。発表日には記者らが高エネ研の小林さんの部屋に詰めかけるのが恒例となっていました。
受賞者はインターネットでも発表されます。「先生、パソコンをクリックしてください」と無遠慮な注文が飛びます。小林さんは嫌な顔もせずカチカチとノーベル財団のページを更新します。でも出るのはいつも他人の名前でした。02年には小柴昌俊さんが物理学賞を受けました。それを知ると記者らは風のように去っていきました。
正直、やりにくかったのではと思い、受賞後に「今だから聞きますが、毎年どんな気持ちでしたか?」と尋ねてみました。
答えは予想外でした「申し訳ないと思っていました」。集まった人を“手ぶら”で帰すのを申し訳なく思ったそうです。せめてもと、庭でチョウのサナギを見つけ、羽化の様子を動画に撮って報道陣に見せたこともあったそうです。
08年、既に高エネ研を退職した小林さんは日本学術振興会の理事に就いていました。理事室にいると携帯電話が鳴りました。ノーベル財団からでした。6種類目のクォーク発見から13年、静かに受賞の知らせを聞きました。
<反粒子と反物質> 物質はクォークなどの素粒子と呼ばれる粒子からできている。その素粒子には対になる「反粒子」がある。反粒子でつくられるのが反物質だ。素粒子(物質)とその反粒子(反物質)は衝突するとプラスとマイナスが打ち消し合うように「対消滅」する。
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