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西田昌司さんは日本の歴史について何も知らないんだよ。 そもそも戦前は夜這い制度が一般的で、上流階級以外では父親が誰かすらわからない社会だったんだ:
「夜這い」
近所の農家の中学生の娘が妊娠したことがあったが、その相手は祖父だったという。しかし、当時の徳山では、この程度は全然珍しいものでなく、ありふれていると言ったことの方を凄く感じた。
夜になると近所の若者が飲みにくるが、必ず店仕舞のときまでいて「やらせろ!」としつこく強要し、うっとおしくてかなわないという話や、この村では後家女性がいれば、婿入り前の若者たちの性教育係を務めるのが村の伝統的義務とされているというような話も驚かされた。
参考までに、昔の性事情を知らない若者たちに言っておくが、戦前の日本では、とりわけ西日本における古代弥生人の末裔たちの里にあっては、国家によって定められた一夫一婦制結婚形態というのはタテマエに過ぎず、それが厳格に守られた事実は存在しない。つまり適当なものであった、というより、民衆レベルでは自由な乱交が当たりまえであって、生まれた子供が自分の子供である必要はなかった。
というと、ほとんどの若者たちが「ウソー!」と驚くに違いないが、これが真実なのだ。例えば一番典型的だった中国山陽地方の集落では、一つの集落で、結婚まで処女を保つ娘は皆無だった。初潮が始まると、親が赤飯を炊いて近所の若者宅に配る。それが「おいで」の合図となる。その日から娘は離れの座敷に寝泊まりするのである。
これは、山陽地方(西日本の古い農家といってもいい)の古い農家の作りを見れば分かる。必ず夜這いのための娘の泊まり部屋が設けられていたはずだ。古い民俗家屋展示を見るときは、昔のこうした光景を見るのだ。すべての構造に歴史の深い意味が隠されていると知ってほしい。
父親を特定することが意味を持つのは、子供たちに受け継がせるべき財産・権力のある有力者に限られていて、持たざる民衆にあっては、受け継がせるべきものもなく、名もない我が子種を残す必要もなく、したがって、女房が誰の子を産もうと、どうでもよいことなのである。
生まれた子供は「みんなの子供」であった。集落全体が一つの大家族だったのだ。みんなで助け合って暮らし、みんなで子供を育てたのであって、小さな男女の家族単位など、権力が押しつけたタテマエ形式にすぎなかった。
タテマエとしての結婚家族制度は、明治国家成立以降、政権が租税・徴兵目的の戸籍制度整備のために、それを強要したのである。
それは権力・財産を作った男性の子供を特定するための制度であった。それは名主・武家・商家・有力者などの権力・財産を「自分の子供に受け継がせたい」インテリ上流階級にのみ意味のあることであり、このために女性を婚姻制度、貞操に束縛したのである。
農民をはじめ一般大衆にとっては、束縛の多い不自由な一夫一婦制など何の意味もなく、たとえ配偶者がいても、誰とでも寝るのが当然であり、生まれた子供は「みんなの子供」であって、集落全体(大家族)で慈しんで育てたのである。
このようにして、かつての日本では夜這いに見られるような自由な性風俗に満ちていた。「集落全体が大家族」という考え方で助け合い社会が成立していて、夫を失った後家は、若者たちの性教育係になり、冒頭の飲食店のオバサンも、徳山の若者たちから、そのように見られていたわけで、決して徳山の若衆が性的変態だったわけではない。
そうした自由な性風俗は1960年あたりを境にして、急速に失われていった。その後、読者が知っているように、女性に貞操観念が求められるようになった理由は、世の中全体が豊かになり、個人が財産を蓄積する時代がやってきたことによるのである。
豊かになれば財産を「自分の子供」に相続させたくなる利己主義が芽生えるのである。「自分子供」を特定するために、誰の子かはっきりさせる必要があり、女性の自由な性を抑圧し、貞操観念に閉じこめる必要があった。
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