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(回答先: 政府がばら撒いた金が本当に消えてしまう理由 _ 政府の赤字=国民の黒字 は間違い 投稿者 中川隆 日時 2021 年 11 月 30 日 02:31:51)
コロナ対策による金融緩和・財政出動でこれだけ貧富の差が拡大した
世界の上位10%が76%の富を所有
『21世紀の資本』の著者として知られるトマ・ピケティをはじめ欧米諸国の経済学者らで構成し、本部をパリに置く世界不平等研究所(World Inequality Lab)が7日、世界的な格差の実態を調査した「世界不平等レポート(WORLD INEQUALITY REPORT 2022)」を公表した。新型コロナウイルスの世界的まん延のなかで、ひと握りの超富裕層が爆発的に資産を増やした一方、深刻な飢餓に苦しむ人々をはじめ大多数の貧困化が進んだことを統計からあぶり出している。筆頭著者のルカ・シャンセル(仏経済学者)は「新型コロナウイルスの感染拡大は、非常に裕福な人々とそうでない人々との間の不平等を悪化させた。貧困拡大とのたたかいにおける社会的国家の重要性を示している」とのべ、不平等の是正には新自由主義的な政治制度の変革が必要であることを訴えている。
コロナ禍でさらに拡大した貧富の格差
この報告書は、同研究所が1995年から毎年発行しており、最新版はコロナ禍が世界を襲った2021年の実態を調査したものだ。研究所共同所長のルカ・シャンセル(パリ政治学院)、トマ・ピケティ(パリ経済学院)、富裕層の税逃れについての共著を執筆し、エリザベス・ウォーレンやバーニー・サンダースなど米上院議員が富裕税を提案するさいにも支援したカリフォルニア大学バークレー校のエマニュエル・サエズ、ガブリエル・ズックマンなどの経済学者たちがまとめた。
報告書の序章では、「この世界には豊富な情報が溢れているが、所得と富の不平等に関する基本的な情報が不足している。成長については各国が毎年公表するが、経済政策によって誰が利益を上げ、誰がそれを失うのか、成長が人口全体にどのように分配されているかについては知らされていない。所得と富の不平等に関する透明性の欠如は、今日のグローバル化した経済における平和的な民主的議論の可能性を深刻に損なう。そのような情報にアクセスすることは民主主義にとって重要だ」とのべ、この報告書は4年間かけて、世界の全大陸をまたぐ100人以上の研究者の研究にもとづき、税務当局、統計機関、大学、国際機関の協力のなかで、比較可能な国際的データを分析したものとしている。
とくに、予期せず到来した新型コロナ危機は、経済の大部分を閉ざし、多くの人々の生計を奪った。先進国では、政府によって所得補償システムが導入され、不平等の拡大による大惨事を一時的に回避したが、貧困国では十分におこなわれていないことを指摘。
「経済成長の果実は公平に分配されているのか?」「社会的なセーフティーネットは十分に行き渡っているか?」「低所得国はより豊かな国に追いついているのか?」「人種や性別の不平等は縮小しているのか?」を問い、この数十年来の現実は、規制緩和、公的インフラの民営化、政府債務の増加により、公的資産を犠牲にした私的資産の増大と一極集中が進み、ビリオネア(億万長者)階級では大幅な資産増加が発生したが、上から下へ富が流れる「トリクルダウン」は発生せず、世界の富が常に上に向かって流れ続けてきたことを強調している。
以下、報告書の概要と、そこから見える世界経済の特徴について紐解いてみたい。
超富裕層の資産 コロナ1年で410兆円増
世界の成人人口(51億人)を所得と富(資産)の分布で区別すると、成人人口の下位50%(最貧層)は25億人、中間40%(下位50%より多く上位10%より少ない収入を得ている人々)は20億人、上位10%は5億1700万人、最も裕福な上位1%は5100万人という人口構成となる【図@参照】。
この4つの階層別に2021年の世界の「所得」分布を見ると、人口が最も多い下位50%の人々が手にする所得は全体のわずか8%【図A左側グラフ参照】。世界平均の5分の1弱であり、成人1人当り年額2800ユーロ(約36万円)にすぎない。
これに対して上位10%の人々の所得は、全体の52%(世界平均の5倍強)を占め、成人1人当り年額8万7200ユーロ(約1123万円)を手にしていることになる。さらに上位1%の超富裕層の所得は、世界の全所得の19%を占め、成人1人当り年額32万1600ユーロ(約4142万円)を受けとっている。
「資産(富)」の分布になると、その差はさらに顕著となる【図A右側グラフ参照】。下位50%が所有する資産は、世界の総純資産(すべての個人の資産合計)のわずか二%。平均して1人当り2900ユーロ(約37万円)の資産(通常は土地、住宅、預金、現金の形で)を所有している。そして、残りの上位50%だけで世界の総資産のほとんど(98%)を所有していることになる。
上位10%は総資産の76%を所有し、その平均額は成人1人当り55万900ユーロ(約7096万円)であり、これには株式や債券など金融資産を多く含んでいる。
購買力平価(ある国の通貨建て資金が持つ購買力を他国でも同水準と仮定した場合)ではなく、不規則に変動する市場の為替レートを使用して測定すると、その格差はさらに開き、下位50%の所有資産は世界の総資産の1%未満にまで縮み、上位10%の資産は82%にまで膨らむ。
さらに富裕層になればなるほど富の集中度が増していく。
保有資産順で上位0・01%の富裕層(約52万人)の世界総資産に占める割合は1995年には7%だったが、2021年に過去最高の11%に達した。個人資産が10億j(約110億円)以上の超富裕層(数千人)の資産の割合は、同じく1%から過去最高の3・5%へと飛躍的に増えている。とくにコロナ禍にあった昨年1年間だけで3・6兆j(約410兆円)も増やしている。
国・地域間も不平等 欧米に集中し途上国低く
「世界的な個人の所得と資産における不平等には、国や地域間の不平等と、国内の不平等の二つの要素がある」と報告書は指摘する。
地域別の平均所得を見ると、北米(米国とカナダ)は世界平均の3倍、ヨーロッパは2倍と欧米が圧倒的に高い水準にあり、東アジアや中東、ロシア・中央アジアが平均値に近く、逆にサハラ以南のアフリカや東南アジアの人々の所得は世界平均の50~30%台と低水準にある。アフリカや東南アジアの人々は、欧米よりも年間3割も労働時間が長いにもかかわらず、支払われる所得が極端に少ないためだ。
平均資産についても、米国は世界平均の3・9倍、ヨーロッパは2・3倍である一方、アフリカや南アジア、中南米の人々の資産は50~17%と低く、その格差は所得よりも大きい。
所得順位における上位10%と、中間40%、下位50%の所得格差が最も高い(下位50%の所得シェアがより低い)地域は、中南米、中東、北アフリカ、サハラ以南のアフリカ、南アジア、東南アジアであり、これらの地域では下位50%の人々の所得は全国民所得の9〜12%しかない。貧富の格差は世界的不平等と同じレベルであり、同じ地域に「働いても食べていけない極度の貧困状態にある人々」と、その隣で暮らす「高所得国の繁栄を享受する経済的および政治的エリート」という二つの社会が存在することを映し出している【地図B参照】。
東アジア、ロシア・中央アジアおよび北米では、上位10%の富裕層の収入が貧困層の16倍であり、アフリカや中南米、中東になると22〜32倍に広がる。報告書は「税や移転による再分配は、高所得地域(ヨーロッパ、北米)では非常に高いが、低所得地域(南アジア、東南アジア、サハラ以南のアフリカ)ではほとんど存在しない。貧しい国々は、その不平等を減らすための財政能力が奪われている」と指摘しており、これらの不平等を生み出す前の是正措置として、最低賃金引き上げ、無料でアクセスできる教育、家賃管理(家賃規制)、独占禁止法、さらに途上国を搾取する多国籍企業への課税を強めることを求めている。
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