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米国、対イラク戦に備えてさらに強力な劣化ウラン弾を準備?(下)
Elliot Borin
2003年3月10日 2:00am PT (3/12から続く)
タングステンにはもう1つ、高価だという欠点がある。それにひきかえ、劣化ウランは非常に安い。米国内各地に設置された政府の貯蔵庫には、最新の調査によれば20万トン以上の劣化ウランが蓄えられているという。
この増えすぎた核廃棄物を減らそうと、米国防省は、世界最大の劣化ウラン弾メーカーである米アライアント・テクシステムズ社(ATK)などの軍需メーカーに劣化ウランを無償で提供し、完成した武器を買い戻している。
劣化ウランにもいくつか欠点がある。劣化ウランの放射能は純粋ウランの40%、半減期は45億年だ。さらに、非常に焼夷性が高く、衝撃を受けると原子炉さながらに燃え上がり、打ち込まれた弾頭の大部分は微細な放射性酸化物に変化する。この放射性酸化物が風に運ばれ、戦場から何キロも離れたところにいる一般市民が吸い込むことも考えられる。
にもかかかわらず、国防総省と米復員軍人援護局の上層部は、劣化ウランは戦闘員にとっても非戦闘員にとっても100%無害であり、「湾岸戦争症候群」と呼ばれるいかなる症状にも関係ないと主張して譲らない。
劣化ウランの無害性を主張するつもりで一番とんでもない発言をした政府関係者は、おそらくウィリアム・コーエン元国防長官だろう。コーエン氏はあるとき、劣化ウランは「有鉛塗料」に負けず劣らず安全だと発言したのだ。有鉛塗料は極端に毒性が高いため、1978年以降、連邦法により住宅への使用が禁じられている。
だが、軍関係者の誰もがみな、劣化ウランの安全性を確信しているわけではない。
1991年の初めに陸軍は、湾岸戦争中に使用された推定300トンの劣化ウラン弾が戦後に及ぼす影響を調べるため、物理学者のダグ・ロッケ氏を含めた調査チームをイラクに派遣した。1990年代半ばに、ロッケ氏は現役軍務に戻され、劣化ウラン汚染に対処するための訓練および管理方法を策定するプロジェクトの最高責任者に任命された。
ロッケ氏は、「イラクやサウジアラビア、クウェートで戦闘中に劣化ウランを浴びた兵士」および、イラク、そして劣化ウラン兵器の実験や訓練が行なわれている米国内外の軍事施設で「劣化ウランを浴びた民間人全員について、健康調査を実施している」と話している。
またロッケ氏によると、国防総省は湾岸戦争に先立って「かなりの危険性」を認識していたという。イラクがクウェートに侵攻する直前に、米陸軍の武器・弾薬・化学コマンドが出した報告書に、劣化ウランは「体内被曝によるガンと関係づけられる」という記述があったため、議論が起きた。
ロッケ氏によれば、イラク入りした現地調査員が劣化ウランを使ったバンカーバスター爆弾の残骸を調べたところ、質量の40%が微細な放射性酸化物に変わり、残りの60%は被弾地域周辺に固形のまま残っていることがわかった。
「装備の汚染物質を調べてみると、ウラン酸化物やその他の危険物質、燃えずに残った爆薬の不安定な粒子、爆発で生じた副産物などが含まれていた。体内に吸い込んだり、経口摂取したり、傷口を通して入ったりする恐れのある、ウラン以外の放射性物質も検出された」とロッケ氏。
「重さ180グラムから4.5キログラムまで、劣化ウランで作られた貫通体の大小さまざまな破片が自分の家の裏庭に散らばっていたらどうだろう。どんな形であれ、自分の庭がウランに汚染されたままにしておきたい人がいるだろうか?」
[日本語版:矢倉美登里/鎌田真由子]
http://www.hotwired.co.jp/news/news/culture/story/20030313208.html