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トルコ、米軍駐留案を否決(その1) 世論と国益、板挟み
対イラク攻撃に備え、米軍の国内駐留などを求めたトルコの政府提案が1日、同国国会で否決され、国内外で大きな波紋を広げている。国民の9割が攻撃に反対していることを反映したものだが、攻撃準備を進める米国がトルコに猛烈な圧力をかけるのは必至の情勢だ。経済低迷に悩むトルコにとって、米国の経済支援が不可欠であることに変わりはない。いずれ承認されるとの見方が強いが、トルコは「反戦世論」と「国家の実利」との間で揺れている。【アンカラで山科武司】
◇与党「状況見て修正案」−−国民は戦火の影響懸念
ギュル首相は3日、政府案の修正案を再提出するかどうかについて「状況を分析している。数日情勢をみたい」と語った。消息筋の間では、トルコは国連安保理に米英などが提案した対イラク武力行使容認決議案採択を米軍駐留の条件とするとの見方が強い。だが、同首相はドーハで4、5両日開催されるイスラム諸国会議機構(OIC)緊急首脳会議に出席するため、国会での再審議は6日以降になる可能性が高い。
だが、国民の大多数がイスラム教徒であるトルコ国民の中には、同じ宗教を信じるイラク国民が巻き添えになりかねない攻撃への懸念がある。また、湾岸戦争時、イラクから50万人ものクルド難民が流入、大混乱を経験しただけに、直接影響を被る南東部のクルド人たちの心配はなおさらだ。
国内主要都市では、連日のようにNGO(非政府組織)や市民団体、学生などがデモや集会で抗議している。国会で米軍受け入れが審議された1日には首都アンカラに全国から5万人が集まり、米兵駐留反対、反戦を訴えた。2月28日にはイスタンブールで、イスラム教徒3000人が星条旗を焼いて政府に抗議した。
トルコ憲法は、国外派兵は国際的に合法である場合に限っており、セゼル大統領らはこれを根拠に、国会承認には「国連の新決議が必要」と主張していた。国会の否決は、こうした動きを背景にイスラム諸国の中で突出することを避けた結果ともいえる。
一方で、トルコ国会は米軍駐留を前提とした国内の基地改修工事を承認しており、既に米軍の工兵3000人が飛行機格納庫の拡充などを進めている。2日には、北大西洋条約機構(NATO)協定に基づき、トルコ共同防衛のため、欧州から搬送されてきたパトリオットミサイルがイラクとの国境に配備された。
トルコにとって既に“外堀”は埋められており、将来的な米軍受け入れは不可避の情勢だ。再度の国会承認を強行すれば、国民の反発が一層強まる懸念もある。「我が国は危機的な時期に入った」(ギュル首相)との認識が強まっている。
◇市街戦、泥沼化の恐れ−−軍事ジャーナリスト・世良光弘さんの話
対イラク攻撃に際し、北方のトルコ側から大規模な兵力展開ができない場合、米軍が最も困るのは兵力展開のスピードが落ちることだ。開戦が4月以降にずれ込むなら、米軍は困難な状況に直面する。
米軍が早ければ数日でイラクの制空権を奪うのは確実だが、首都バグダッドの制圧には歩兵部隊の展開が不可欠で、最低15万人が必要だ。米軍への協力に対する国内の反発が強いサウジアラビア側からは展開できず、クウェートしか出撃拠点がないとすれば、イラク北部に輸送機で運んだ場合でも、短期間だと、せいぜい10万人を展開するのがやっとだ。
圧倒的な兵力で制圧しないと、市街戦が泥沼化し、米兵の死傷者が続出する恐れもある。93年、国連平和維持活動(PKO)に携わっていた多数の米兵が死傷したソマリアのような「悲劇」が繰り返されかねない。制圧が長期化すれば、現地は暑く、砂嵐も激しくなる一方、反戦機運が高まり一層条件は悪化する。米国に残された時間は非常に短い。米国からの躍起の説得を受け、結局はトルコも受け入れに転じるのではないか。【聞き手・斎藤義彦】
(2003年3月4日毎日新聞朝刊から)
http://www.mainichi.co.jp/news/article/200303/04m/103.html