現在地 HOME > 掲示板 > 戦争25 > 1258.html ★阿修羅♪ |
|
【ワシントン河野俊史】対イラク武力行使容認決議案をめぐる国連安保理協議の打ち切りを決めた16日の3カ国首脳会談で、昨年9月から半年に及んだ米政府の国連外交は事実上、終止符を打った。ブッシュ大統領は全会一致で可決された安保理決議1441(昨年11月8日採択)ですでに武力行使は了承されていると強弁しているが、現時点で軍事行動に移るという米政府の提案が最後まで国際社会の同意を得られなかったことは、実質的に「ブッシュ外交」の失敗を意味する。ユニラテラリズム(単独行動主義)の批判をかわすためにあえて選択した「国連ルート」だったが、結局、国連の枠組みを無視して一方的な武力行使を目指す形になり、皮肉にもユニラテラリズムの本質を浮き彫りにした。
17日をイラクの武装解除(大量破壊兵器廃棄)期限にして、その直後に攻撃を構える修正決議案に支持を表明したのは、提案国の米、英、スペイン以外にはブルガリアだけだった。反対を明確にしたフランスやロシアばかりか、中間派の6カ国も今回は米国に追随するのをためらった。最後は経済支援と引き換えに押し切れると読んだ米政府には誤算だった。
米政府が安保理メンバーを説得できなかった理由について、キッシンジャー元米国務長官は16日のCNNテレビの番組で「同時多発テロ(01年9月)を体験した米国と、そうでない国の危機感の違い」を挙げた。しかし、イラクを切迫した脅威と見ることには米国内ですら異論が多く、他国に戦争の正当化を求めるには説得力が弱かった。
それ以上に批判や反感を呼んだのは、国際社会に対する米政府のスタンスだった。ブッシュ政権は2年前の発足後、地球温暖化防止のための京都議定書や、国際刑事裁判所(ICC)設置をめぐって国際社会と対立し、「米国が他よりも優越した存在だと信じ、国際機関に懐疑的だ」(16日付ワシントン・ポスト紙)と指摘されてきた。多くの国には、それが不遜な態度と映り、反米主義の引き金になった。
それにもかかわらず、ブッシュ政権は国際関係を軽視し、他国に理解を求める努力を怠ってきたといわれる。「要求するばかりで、相違点の溝を埋めようとしない」(同)といい、例えば協力の有無が焦点になっているトルコの問題でも、12年前の湾岸戦争時に父親のブッシュ元大統領がトルコの首脳に55〜60回も電話をしたのに対し、今回は3回だけだと同紙は指摘している。
また、安保理が査察による解決を模索している段階からペルシャ湾岸地域に膨大な数の米兵を展開し、攻撃態勢を既成事実化してしまったことへの批判も国際社会にくすぶっている。
「初めに攻撃ありき」という強引な手法が安保理メンバーの間に疑念を呼び、米国を孤立させた側面は否定できない。安保理決議1441は成果として残ったものの、米国の対イラク軍事行動は国連の枠組みに頼らない半年前の姿に戻る結果になった。
[毎日新聞3月17日] ( 2003-03-17-19:34 )