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海外の有名文化人のご高説を拝聴することを“哲学”だと
錯覚している日本の“ワナビー”ハイカルチャー勢力
(といっても“勢い”はないけど…)によるメルマガが、
エマニュエル・ウォーラーステインの“第二次対イラク多国籍国家テロ”
についてのコメントを紹介している。
(でも『哲学クロニクル』は面白いメルマガだからオススメだよ。)
私もウォーラーステインの読み物は好きだが、アクチュアルな
データを見ないで非常に大雑把な評論をしているのが気になる。
今回のブッシュ政権の対イラク攻撃プランがどこから
いつ出てきたかをきっちり検証すれば、「一年ほど前から、
アメリカ合衆国はイラクと戦争を始めることを決めている」などという
阿呆な分析は出てこないはずなのだが……。
ウォーラーステインくん、もっと新聞よめよな!
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哲学クロニクル 第358号
(2003年3月17日)
一発勝負にでたブッシュ(1)
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いよいよアメリカはイラク攻撃の決意を固めたようですね。この賭けがどうでる
のか、ウォーラーステインの意見を聞いてみましょう。
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一発勝負にでたブッシュ(1)
(イマヌエル・ウォーラーステイン http://fbc.binghamton.edu/109en.htm)
アメリカ合衆国は、大きなトラブルに巻き込まれている。アメリカ合衆国大統領
は、巨大なギャンブルを始めた。しかも基本的に弱い立場で賭け始めたのである。
一年ほど前から、アメリカ合衆国はイラクと戦争を始めることを決めている。戦
争をするのは、アメリカの圧倒的な軍事的な優位を示し、次の二つの主要な目的
を実現するためだ。まず潜在的な確保有国をおびえさせて、核兵器プロジェクト
を放棄させること、そして第二に、世界システムで自立した政治的な役割を果た
すというヨーロッパのアイデアを押しつぶすことである。
これまでのところ、ブッシュはひどく失敗している。韓国とイランは(おそらく
まだ気付かれていない他の諸国も)核保有プロジェクトを実際に促進している。
フランスとドイツは、自立するとはどういうことかを示した。そしてアメリカ合
衆国は、安全保障理事会の第三世界の六か国に、イラク攻撃の二回目の決議に賛
成投票させることができないでいる。そこで恐いもの知らずのギャンブラーのよ
うに、ブッシュは一発勝負にでたのである。
ブッシュはごく近い時期に開戦するだろう。そして迅速で圧倒的な勝利で、イラ
クを片付けることができると賭けているのである。この賭けはごくシンプルなも
のだ。ブッシュは、アメリカがこの種の軍事的な成功を収めれば、核保有に進も
うとしている国も、ヨーロッパ諸国も後悔して、これからはアメリカの決定を受け
入れると信じているのである。
軍事的には二つの成り行きが考えられる。ブッシュが希望し、期待している成り
行きと、そうでない成り行きだ。ブッシュがイラクを短期間で制服できる可能性
はどのくらいあるのだろうか。国防総省では、アメリカ軍にはそのための兵器が
あり、短時間で実現できると主張する。しかしアメリカとイギリスの多数の退役
将軍たちは、懐疑的な姿勢を示している。わたしの想像では、迅速に完全な勝利
が得られる可能性はごく低い。
イラクの指導者は絶望的になって抵抗する決意を固めるだろうし、イラクではナ
ショナリズムが盛んになるだろう。それにクルド族はフセインと戦うつもりはな
いと発表している(フセインを憎んでいないからではなく、クルドについてのア
メリカの意図に、底しれない不信感を抱いているからだ)。だからアメリカが数
週間で終戦にこぎつけるのは極めて困難だろう。数ケ月はかかるだろうし、数ケ
月かかったなら、イギリスとアメリカの世論の風向きがどうなるか、だれにも予
測はつかない。
それでもはアメリカが短期間で勝利を収めたと想定してみよう。するとその時点
で、ブッシュは勝者でも、敗者でもない。たんにイーブンになっただけだ。とい
うのはなぜか。勝利というのは、地政学的な状況が現在よりも改善されことを意
味する。しかしまず、勝利の後でイラクに何が起きるかが問題なのだ。これにつ
いてはせいぜい、誰にもわからないというしかない。それにアメリカ自身が、そ
もそもどうしたいのか、明確なビジョンというものをもっていないのだ。われわ
れが知っているのは、複数で、多様で、まったく調整のとれていない関係者の利
害が交錯するということだけだ。このシナリオでは、無政府状態の混乱が発生す
ることになる。
アメリカ合衆国が戦後の決定において重要な役割を果たすためには、軍隊を長期
的に駐留させ、多額の資金(ほんとうに巨大な資金)を投じる必要がある。しか
し今のアメリカの経済状態と、内政状態を調べてみれば、ここに軍隊を長期間に
わたって駐留させるためには、ブッシュ大統領はひどく苦労すること、そして政
治的なゲームを演じるために必要な資金を獲得するには、さらに厳しい努力が必
要であることは、ごく自明なことである。
さらに、世界が直面している他のすべての問題は、未解決のままに放置される。
第一に、パレスティナ国家の創設に向けて、わずかでも進展がみられる可能性は
ごく低い。イスラエル政府はアメリカの勝利を、自国のタカ派の政策の正しさを
示すものとして利用するだろうし、さらにタカ派の傾向を強めるだろう。アラブ
政府はさらに怒りを強めるだろう(それが可能なことだとしてだが)。
反対にイランは、フセインがいなくなって、中東地域で有利な立場に立ったと感
じることだろう。北朝鮮はさらに挑発を強めるだろうし、韓国はアメリカと同盟
していることに、そしてアメリカが軍事行動を好む傾向があること、ますます不
愉快な気持ちになるだろう。フランスは長期的には、立場を固めるだろう。だか
らアメリカがイラクで軍事的な勝利を収めたとしても、地政学的には現状維持に
なるだけだ。アメリカのタカ派はそうなることを望んでいないだろうが。
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(c)中山 元
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