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<イラク問題>どうなる世界経済 ヤマニ氏とマイヤー氏に聞く
イラク攻撃の可能性が強まってきたことを受けて、原油価格が高騰し、世界の株価の下落基調が続いている。世界2位 の原油埋蔵量を持つイラクへの軍事攻撃が長期化したり、イラクによる油田破壊につながれば、世界経済が大打撃を受 けることが懸念されている。世界最大の産油国サウジアラビアで、62年から86年まで石油鉱物資源相を務めたヤマニ・ グローバル・エネルギー研究センター理事長とマイヤー元米連邦準備制度理事会(FRB)理事にイラク問題の影響を聴い た。
■ヤマニ元石油相 サウジアラビア
――イラク攻撃で原油はどうなるのでしょう。
◆いくつものシナリオが考えられる。戦争なしでフセイン政権が降伏し、米国が統治に成功すれば、油田の修復と開発が 進み、価格は年内にも大幅に下落する。次に、短期戦でも、新政権樹立などで再建に手間取れば、イラクの輸出は当面途 絶え、価格は高止まりする。第3はフセイン大統領が油田破壊に出るシナリオだ。キルクーク油田などで爆破準備をしてい るとの情報もある。原油は高騰し世界経済に大打撃となる。
もっとひどいシナリオは、生物・化学兵器が近隣諸国に対し使用された場合だ。原油価格は1バレル=100ドルに急騰 するかもしれない。そうなれば世界経済は恐慌に陥り、立ち直りには何十年もかかる。どのシナリオになるかわからない が、傲慢さからくる米国の自殺行為で世界が巻き添えになることを心配している。
――イラク攻撃の狙いが原油確保にあるとの説を米国政府は強く否定しています。
◆原油が最大の狙いだろう。米国は現在、必要量の4分の1をペルシャ湾岸に依存し、16.5%はサウジ原油だ。米政権はサウジや湾岸依存か らの脱却を目指している。イラクにはそれを満たすだけの原油がある。クリントン政権時代、有力政治家10人がイラク侵攻と油田支配を促す書簡を 大統領に送ったとの話がある。書いたのはチェイニー副大統領、ラムズフェルド国防長官らの今政権を動かしている人々だ。同時多発テロ以降、湾 岸・サウジ依存からの脱却志向が本格化した。
――米政府はテロとの戦いも強調しています。
◆イラク攻撃こそ新たなテロを生み出す。将来、ビンラディン氏が天使に思えるくらい、比較にならない凶悪なテロリストが何百人も生まれる恐れが ある。そうなれば米国の責任だ。
――親米に見えたロシアが、攻撃反対に回りました。姿勢転換は石油と関係がありますか。
◆ロシアは米国の経済技術支援のおかげで原油生産量を拡大してきた。米国はロシア原油を必要とした。もし、米国がイラク原油を手にしたら、ロ シア原油の戦略的価値はゼロになる。戦争終結後、イラクで生産が本格化すれば原油価格が急落する。外貨収入を原油、天然ガスに頼っているロ シアにとって、米国のイラク侵攻成功は経済的利益に反するのだ。ロシアは4カ月前の時点でそう認識していた。
――開戦で原油価格が急騰した場合、サウジの対応は?
◆日量1050万バレルもの原油を非常に高い値段で生産できることはサウジにとって幸運だ。(石油危機の起こった)70年代当時のもうけが期待 でき、巨額の負債の返済にあてることができる。しかし、最終的に価格高騰は米経済を直撃し、世界的な恐慌を招く可能性がある。原油需要の急 減、価格急落を引き起こし誰のためにもならない。
――戦後、親米政権が成立すれば、イラクはOPEC(石油輸出国機構)にとどまりますか。
◆利権は外資に開放され、石油会社は投資回収のため積極的に増産するのは確実だ。OPECの生産枠など守りたいはずがない。イラクがOPE Cにとどまる理由などない。そうなれば、原油が急落し、価格安定維持能力が失われ、OPECが崩壊する可能性が高い。
【聞き手・ロンドン福本容子】
■マイヤー元理事 米連邦準備制度理事会
――イラク攻撃の米経済への影響は?
◆私が所属する米戦略国際研究所(CSIS)の研究では、大量破壊兵器が使われず、米が早期に戦勝し、油田に被害がなく、戦後の湾岸地域情 勢も安定する楽観シナリオなら、企業や消費者心理が好転し、米国や世界の景気回復が加速する。株価も急反発しよう。
だが、イラクや周辺国の油田破壊の可能性は排除できず、警戒を怠ることはできない。油田破壊で原油価格が長期に高止れば、消費者や市場心 理への悪影響は想像以上に大きい。米失業率がはね上がり、来年にかけて景気が大きく下降する恐れがある。40―60%の確率で楽観シナリオが 実現すると見ているが、期待に反した時の市場などの動揺には警戒が必要だ。戦争が泥沼化し、原油が1バレル=80ドルを超え、世界同時不況に 突っ込む確率も10%程度ある。
――イラク問題が解決しても米景気低迷が続くとの見方もあります。
◆私は、今の景気低迷の最大の要因は、イラク情勢への不安によるものだと思う。だから、戦争であれ外交であれ、イラク問題が解決すれば、米 経済は年後半に回復基調に戻り、年3.5%程度の成長が可能と考える。
――米景気の死角は?
◆イラク問題以外では、企業のバランスシート調整問題があるが、これは今後6カ月程度で解消されるだろう。ただ、テロ再発の場合の影響は読み きれない。経済活動が萎縮せず、どこまで耐えられるか、最大のリスク要因だ。財政と経常収支の「双子の赤字」問題に対しては、中長期的な財政 規律維持が重要だ。
――イラク開戦に備えた日米欧の政策協調は?
◆各国が経済強化に務めることが大事だが、当面は、外国為替市場の短期的な急変動への対応が課題になる。イラク問題が長期化した場合に は、財政・金融政策の発動が必要になる。柔軟な対応ができる態勢は必要だ。
日本は日銀総裁交代を機に、政府・日銀が互いに負担を押し付け合うのを止め、一体で経済再生に取り組むべきだ。デフレ克服に金融緩和拡大 は必要だが、不良債権処理による銀行システム再建を同時に実施しないと経済成長の実は上がらない。
【聞き手・ワシントン竹川正記】(毎日新聞)
[3月16日1時10分更新]