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ネオコン人脈 カネと覇権
米中枢に軍拡ネット
ブッシュ政権中枢を支配し、米国単独でのイラク攻撃も辞さないとする「新保守主義(ネオコンサーバティブ=ネオ
コン)」派。「力による平和」を唱える最強硬の思想集団だが、その横顔には同国の軍需産業との「血盟」が刻まれて
いた。“死の商人”のカネと米国による世界規模での覇権拡張という野望の結合に人脈から迫った。 (田原拓治)
■『軍需産業は政権そのもの』
三月十七日にも開戦という見方があった数日前、アラブ首長国連邦(UAE)の首都アブダビの知人は国際電話でこ
う語った。
「市民らはなるほど、とうなずいている。というのも、アブダビでは十六日から恒例の国際兵器見本市がある。アメ
リカの軍需産業は出展する最新兵器をイラクで実際使うことで性能を誇示すると考えたからだ」
悪い冗談に聞こえそうだが、あながち簡単に受け流し難い経緯もあった。というのも、一九九七年に結成された米共
和党内のネオコン集団の根城「アメリカ新世紀プロジェクト(PNAC)」が発足声明で「世界規模で米国の責務を遂
行しようとすれば、軍事支出を著しく増やす必要がある」と宣言していたからだ。
PNACの設立者の一人はネオコン総帥のアービング・クリストル氏の子息、ウイリアム氏。設立趣意書の賛同者に
は現在のチェイニー副大統領、ラムズフェルド国防長官というネオコンの後ろ盾が名を連ね、同団体からは政権中枢に
八、九人が参画している。
九一年の冷戦終結は、七〇年代から「現在の危機委員会」を組織してソ連の脅威をあおり、第二次戦略兵器制限交渉
(SALT2)を破たんさせ、さらに八〇年にレーガン大統領の選挙を準備したネオコンには大打撃だった。それは軍
縮の波にもまれる同国の軍需産業にとっても深刻だった。
■NPTも“軽視”「使える核」照準
その状況を覆そうというPNACの宣言通り、現ブッシュ政権は軍拡路線を歩む。二〇〇一年末には弾道弾迎撃ミサ
イル(ABM)制限条約を脱退した。核拡散防止条約(NPT)軽視の姿勢もうかがえる。
これらの表裏として、同政権は前者の関連では多層のミサイル防衛システム(MD)開発に乗り出し、後者では従来
の抑止力としての核から「使える核兵器」へ傾斜している。
この二つの軍拡の柱を準備したのもネオコンのシンクタンクだった。MD開発では安全保障政策センター(CS
P)、核兵器では国家公共政策研究所(NIPP)が主な役割を担った。
NIPPは八一年、現在は国防長官補佐官代理を務める核戦略研究者ケイス・ペイン氏が設立した。同団体は一昨年
一月「核戦力と軍備管理の論理と必要」と題した報告書を発表。これが同年暮れに国防総省が下院に提出した九四年以
来の米国の核戦略の見直しである「核体制見直し報告(NPR)」の土台になった。
NPRは「(核兵器の役割に)標的を危険段階で摘み取る選択肢を与える」と「使える核」を強調。NIPPの報告
書には、イラク戦での核兵器使用を想定した文脈も含まれている。
同団体からはペイン氏のほか、ロバート・ジョセフ氏が国家安全保障会議、ステファン・キャンボーン氏が国務長官
特別補佐官として政権に加わっている。
■ばく大な寄付受けるCSP
一方、七〇年代から政界でネオコンの代表格として活動し現在、国防政策諮問委員長を務めるリチャード・パール氏
の盟友フランク・ガフニー氏が八八年に設立したのがCSPだ。同団体は設立以来、ロッキードマーチン社やボーイン
グ社など主な米軍需産業から三百万ドル(約三億五千万円)以上の寄付を受けている。
その影響力について一昨年十一月、ラムズフェルド国防長官は同団体の夕食会でこうあいさつしている。
「(影響力は)今の政権にいるCSP関係者を数えれば分かる。私はいま(国防総省の)スタッフを招集しようとし
たが、(大半はこの会場にいるので)翌朝まで待つことにしよう」
同団体内の「国家安全諮問委員会」には包括的核実験禁止条約(CTBT)批准反対派の急先ぽう、ジョン・カイル
上院議員や下院軍事調達小委員会議長でMD開発を説くカート・ウェルダン議員がいる。NIPPのペイン氏など、両
団体の理事らには双方に籍を置く人物も少なくない。
■『石油』より多い軍需関係者32人
ブッシュ政権の軍拡路線をけん引するこうしたネオコン人脈は直接的にも軍需産業と絡んでいる。
最大手のロッキードマーチン社の場合、同社重役で宇宙戦略ミサイル計画担当のチャールズ・クッパーマン氏はNI
PP、CSP双方の理事会メンバーを務める。元国防総省職員からCSPを経て、PNACの設立人の一人になったブ
ルース・ジャクソン氏も国防計画分析担当として同社の重役におさまっている。
露骨な例は空軍のジェームズ・ロシェ長官だ。CSP国家安全諮問委員会のメンバーである彼はノースロップ・グラ
マン社の副社長を務めた経歴がある。
同社は競争各社に出遅れているとされ、新たな政策が頼みの綱でロビー活動に最も積極的といわれる。その成果か、
ロイター通信によると、同社のB2爆撃機は今回のイラク攻撃で初めて六機使われる見通しだ。
B2はレーダー探知されにくいステルス機能を持つが維持が難しく、これまで本土ミズーリ州の基地にしか常駐して
いなかった。しかし、B2爆撃機が十二日夜、同基地を飛び立ち、イラク周辺に向かったとの情報が入ってきている。
そのノースロップ・グラマン社の場合、ウルフォウィッツ国防副長官、国防総省のファイス政策次官が顧問、さらに
リービー副大統領補佐官は有給コンサルタントを務めていた。三人とも政権内ではネオコン派の代表格として知られ
る。
このほか、PNAC設立賛同人のチェイニー副大統領の妻、リーネ氏は昨年一月までロッキードマーチン社の役員を
務めた。国家安全保障問題担当次席補佐官のスティーブン・ハドレー氏も同社の関係者だ。
■イラク戦想定シナリオ作り
ブッシュ政権中枢とネオコン・シンクタンク、軍需産業を結ぶネットワークはこうして編みあげられている。その危
険は今回、間に合わなかったが、イラク攻撃を想定した前出のNIPP報告書が「低出力核兵器」の開発を促している
点でも明白だ。
そこには「地下の生物兵器工場のような堅固な標的に対し、低出力で精密誘導が可能なタイプの核兵器が必要とな
る」と記されている。CSPも新たなミサイル防衛計画のために核を搭載できる迎撃態勢を整えるべき、と主張してい
る。これらの開発が軍需産業にとって「カネのなる木」になることは言うまでもない。
軍事経済学の専門家で米国で世界政策研究所(WPI)を主宰するウイリアム・ハートゥング氏は昨年六月、米「ネ
ーション」誌に寄稿した論文で「軍需(核兵器)産業はブッシュ政権にロビー活動をする必要がない。なぜなら、かな
りの程度まで彼らは政権そのものだからだ」と看破した。
WPIの調査によると、元来、石油・エネルギー産業との癒着が指摘されたブッシュ政権だが、その政権内関係者二
十一人に対し、軍需産業との関係者は三十二人にも上るという。
http://www.tokyo-np.co.jp/00/tokuho/20030315/mng_____tokuho__000.shtml