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戦争長期化が招く最悪のシナリオ
原油急騰で世界に壊滅的危機?
シュテファン・タイル
バグダッドで市街戦が激化し、米英軍の死傷者が増えていく。CNNとアルジャジーラが伝えるのは、戦場の悲惨な映像ばかりだ。アラブ諸国は原油の減産に踏み切り、西側諸国による国内軍事基地の使用を制限する。
テルアビブが攻撃され、イスラエルも戦争に巻き込まれる。アルカイダは、ロンドンとロサンゼルスで爆弾テロを起こす。フセインは最終局面でイラク国内の油田を破壊し、隠しもっていた大量破壊兵器を使う――。
対イラク戦争は前回の湾岸戦争と同じように短期間で終結し、石油価格はすぐに下がると予想する企業は多い。だが、本当にそうだろうか。
冒頭に紹介した最悪のシナリオは、元米国務省関係者やエコノミストらの協力を得て、ワシントンの戦略国際問題研究所が作成した。このシナリオが現実化する可能性は5〜10%。これほどの規模ではないが、戦争が拡大する可能性も50%ある。
短期戦のシナリオの問題点は、現在の状況が湾岸戦争当時とは大きく異なっていることだ。イラクは本土防衛のため、前回よりも徹底的に戦うかもしれない。世界経済の状況も悪くなっており、戦争の打撃に耐えられるかどうかわからない。
戦争によってテロ攻撃が起こり、石油の供給が急減すれば、原油価格は1バレル=80ドルにまで高騰しかねないと、英国経営者協会(IoD:Institute of Directors)は指摘する。実質ベースで、第2次石油危機で原油価格が急騰した80年に匹敵する水準だ。
こうなると「月に逃げるしかない」ような事態が訪れるかもしれない。IoDの予測では、株価は3割下落し、住宅価格も暴落。アメリカのGNP(Gross National Product:国民総生産)は2%下がり、世界規模のデフレが起きるという。
「それでも私は楽観視している」と、IoDの主任エコノミスト、グレアム・リーチは言う。「だが、悪い予想が現実となる危険がこれほど高いのは、1930年代以来だ」
楽観論者でもこうなのだから、最悪の場合はどうなるのか。考えただけでも恐ろしい。
ニューズウィーク日本版
2003年2月26日号 P.42
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