現在地 HOME > 掲示板 > 戦争24 > 914.html ★阿修羅♪ |
|
米英両国は24日、スペインと共同で国連安全保障理事会に提出した新決議案で、イラクに対し武力行使をちらつかせる姿勢を示した。一方、フランス、ドイツ、ロシアはイラク査察を最低でも4カ月延長するように求めた「覚書」を提示して、鋭く対立した。新決議案が採択されなくとも早期の武力行使を目指す米英。これに「平和解決」を目指す仏独露がブレーキをかけることができるのだろうか――。ぎりぎりの攻防が始まった。
◇決議なし攻撃視野 米「説得に全力」
「この決議案を理解してもらうため、外交努力に全力を挙げる」
24日、記者会見したライス米大統領補佐官は今後2週間、査察継続を主張している安保理メンバーの説得工作に努める決意を明らかにした。
「新決議は法的に必要ない」としてきた米政府があえてリスクの伴う新決議採択を目指す背景には、「武力行使のためには新決議が必要」と国民に公約した英国のブレア首相をはじめとする同盟国の国内事情への配慮がある。また単独でイラクを攻撃した場合、国際社会にイラク復興費用の分担を求めづらいなど現実的な利害が挙げられる。だが、新決議採択の見通しは不透明で、米英両国は決議なしの攻撃も視野に入れた両面作戦を展開するとみられる。
ペルシャ湾岸には20万人近い米英軍が展開し、ラムズフェルド国防長官も「準備は整った」と宣言。軍事作戦のスケジュールから逆算すると、3月7日に予定される国連監視検証査察委員会のブリクス委員長の安保理報告の前後が最終判断の現実的なリミット。新決議案が安保理で採択されるためには、理事国15カ国のうち9カ国の票を固め、常任理事国が拒否権を行使しないことが必要だ。このため米政府は先週末、ブッシュ大統領自身が非常任理事国であるメキシコやチリの大統領を電話で説得する一方、国務省高官がアンゴラ、ギニア、カメルーンを回って外交圧力を強めている。ライス補佐官も「安保理決議1441が全会一致で採択(昨年11月)された論理から言えば、それを明確に支持する新決議(の文言)には反対しにくいはず」と語る。
ブッシュ大統領は24日、「新決議案の取り扱い次第で、安保理が21世紀の脅威に対処し得る存在かどうかが決まる」と圧力をかけた。米政府とすれば、イラクだけでなく、北朝鮮の核問題などで今後とも安保理の機能を有効に利用したい思惑もある。新決議の見通しは米政府も現時点で読み切れていないといわれるが、「(新決議は)望ましいが、武力行使の条件ではない」(フライシャー報道官)という基本スタンスは変わっていない。 【ワシントン河野俊史】
◇仏拒否権 厳しい選択
「新たな国連決議は有益でも必要でもない」。フランスのシラク大統領は24日夕、ドイツのシュレーダー首相との会談の後、強い口調でこう語った。米英が主張する武力行使に反対し、国連決議1441の枠内で査察の継続と強化を目指す立場を鮮明にしたものだ。
仏が独、露とともに共同提案した査察強化案は、米英の新決議案提出に対抗して出したものであることは明白だ。「覚書」という形式を取ったのは、これがあくまで先の国連決議1441の範囲内の提案であることを強調するためだ。現在の査察の有効性を指摘し、今後の具体的な査察スケジュールを提示することで、開戦の口実となる「新決議」の無効性を訴える狙いがある。
だが国連査察チームに作業計画の策定を求め、なお最終判断まで4カ月の猶予を与える提案は、とうてい米英に受け入れられるものではない。仏は20日、パリで開いた仏・アフリカ首脳会議で「(イラクに対する)武力行使は最後の手段」とする共同声明を採択するなど、新決議の採択をめぐり、すでに激しい綱引きを演じている。
一方で仏は、米英案に拒否権を使うのか、棄権するのか、今後2週間内にも厳しい選択を迫られる。仏政界では「ここで選択を誤れば、米仏関係は一気に悪化する」と拒否権行使に反対する空気も強い。仏国際関係研究所のジャック・ベルトラン研究員は「拒否権を行使しても結局、戦争が防げなければ、国際政治での国連の尊厳は地に落ちる」として、棄権を選ぶべきだとの立場だ。
最終的には米英に歩み寄るとの見方もある中、「イラクに明確な違反がない限り、武力行使に賛成することはあり得ない」(ベルトラン研究員)というように、ラムズフェルド米国防長官に「古臭い欧州」と呼ばれた仏独連合が、最後まで意地を通す展開も予想される。 【パリ大木俊治】
◇「イラクへ特使」検討 日本政府
政府は25日、米英などが新決議案を国連安保理に提出したことを受け、イラクとフランスに対し、外交工作に着手する方針を固めた。新決議案への支持表明に伴う対応で、イラクについては政府特使派遣の検討を始めた。フランスとは首脳レベルでの電話協議を検討している。日本としてもイラク攻撃をめぐって「カギ」を握る両国に対し、武力行使回避に向けた最後の説得を行う一方、決議案採択に向けた働き掛けを強める必要があると判断した。
イラクへの特使派遣案は、川口順子外相が25日、「外交的な圧力をかけるという観点で決議案を支持する」と表明したことを踏まえて浮上した。イラクへの特使派遣は先月にも検討されたが、国際情勢を見極めるとして見送られた。しかし、米英などが新決議案を提出したことで「最後の外交努力が必要」(外務省幹部)との意見が強まった。 【白戸圭一】
[毎日新聞2月26日] ( 2003-02-26-03:01 )