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宮崎正弘の国際ニュース・早読み
平成15年(2003)2月21日(金曜日)
通巻504号
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シラクのフランス、「反米」の本気の度合いは?
アフリカの産油国を招待し、第二のサダムを発見する意図と平行し、開戦の暁には豹変して米国支援の軍事行動をとるだろう
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▲猜疑心の固まり、武器商人
シラク大統領は「日本贔屓」として知られ、仏像を前に45分も突っ立って奈良平安の仏教文化の蘊蓄を日本人を相手に披露するほど「教養深い」人である。
しかし、同時にシラクはヤヌスの首のように「もう一つの複雑で面妖な顔」を持つ。その実相は猜疑心の強い交渉人にして貪欲な武器商人であり、快僧・安国寺恵慧のようなしたたかな政治家であり、そのうえ独裁者サダム・フセインの「親しいお友達」でもある。
フランスはイラクに「石油鉱区」を多数有する。
いずれの鉱区もサダム政権の独裁のもとでの契約で開発中で、もしサダム政権がひっくり返ると既存の権益が完全に白紙に戻るばかりか米国、中国などに鳶にあぶらげとなって、もって行かれる懼れがある。
だからこそ、米国主導のサダム以後の米国寄り新体制の出現には、強く執拗に徹底的に反対しているのだ。
▲アフリカ諸国の産油国へ
一方でフランスは石油利権の多様化にも熱心である。
フランスは、アフリカ(とくに中央アフリカ)に旧植民地をごまんと抱えており、たとえば中央アフリカ地域を「フレンチ・スピーキング・アフリカ」と国際政治学で呼ぶことがあるくらい決定的な影響力を維持している。
2月21日からパリで開かれる「第二十二回フランス・アフリカ・サミット」にはジンバブエのムガベ、南アのムベキ大統領やモロッコ国王、それにムバラク(エジプト大統領)など45ヶ国から指導者が一同に集まる(欠席はコートジボアールのグバグンボ大統領のみ)。
これらアフリカ諸国に大きな外交的影響力を持つフランスは、ドイツの左翼政権と巧妙に巻き込んで、イラク攻撃に際しては米国に強く反対し外交的主導権を回復した、というジェスチャーを見せつける必要もある。
特に産油国カメルーン、ガボン、アルジェリアに対して。
▲イラク「オシラク原子炉」はフランス丸抱えだった
もう一つのフランスの反抗は「オシラク原子炉」破壊爆撃への恨み、その意趣返しの意味がある。
1975年、イラク副大統領がパリを訪問した。
当時のフランスの首相はシラクだった。イラクの重要人物は誰あろう、現大統領サダム・フセインである。
二人は個人的な友誼に結ばれ、前年にシラクがイラクを二回訪問、翌75年に答礼でパリにやってきたのが「殆ど外遊が確認されていない」サダムだったのだ。
ここで決まったのがフランスの原子炉(プルトニュームの原料を含め)建設プロジェクトだった。
このためにイラクから600人のエンジニアもパリに呼んで「研修」をさせた。
オシラク原子炉建設現場にはフランス人工事関係者が多数出入りした。
奇妙なことにフランス憲法は首相が外国との交渉をしても大統領が知らないことがあるーーーじっさいに当時のジスカールデスタン大統領はシラク首相にイラクとの交渉をまかせっきりだった。
このフランス・イラク交渉では同時に、フランスが総額15億ドルの武器売却に成功した。なかにはミラージェ戦闘機、地対空ミサイルが含まれる。見返りにフランスはイラク石油利権を得た。
当時、ベイルートでの噂では「77年のパリ市長選の軍資金もサダムが拠金した」という話で持ちきりだった。
81年、イスラエルを密かに飛び立った数機の戦闘機は、サウジ上空を「民間機」を装って通過し、イラク領空へ侵入。完成間近だった「オシラク原子炉」を攻撃、完膚無きまでに破壊した。イラクの核武装の野望は、ここで一度潰える。
すぐさまバグダッドへ飛んで、「再建話」を持ちかけたのはシラクだった、とされる。二人の関係は長い上に複雑で、米国諜報機関でも正確に掴んではいない。シラクは面妖な政治家だから。
しかも87年にシラクは大統領選挙出馬にあたって「オシラク原子炉について交渉したのはジスカール陣営であり、わたしはなにも知らないし、知る立場にはなかった」と平然とイスラエル新聞に答えた。
▲シュローダー独政権を巻き込むのはフランスの深謀遠慮
87年にシラクが首相に返り咲くと、NYタイムズは「二人(サダムとシラク)は実際にウマが合う(グッド・ケミストリィ)、特殊な友人」と書き立てた。
シラクは「実際にそうだ。74年以来サダムには個人的に惹かれている」と語っている(「週刊マンチェスター・ガーディアン、87年)。
さてかくも複雑で親密で秘密めいたフランスとイラクの関係は、悉くが石油利権と直結している。
トタルフィナエルフ(TotalfinaElf、世界第五位の石油メジャー。パリが本社。以下「エルフ社」と略す)はイラクで「マジヌン油田」(埋蔵200億バーレル)の開発権利をもつ。
またロシアのルーゥオイルと競合しながら同鉱区の南方に位置する「ナールウマル油田」(埋蔵150億バーレル)の開発もエルフ社は、サダムフセインと水面下で交渉してきた。
サダムが転覆となればフランスはこれら利権を失いかねない。そこでドイツを扇動して国連で米国の武力行使に反対しながらも他方でシラクはカタールへ戦闘部隊と戦艦をこれみよがしに派遣して待機させ、いざ開戦となれば「一番乗り」で米国へ味方する。
これほどの面妖な、複雑な芸当をやってのけるのがフランスの伝統であり、米国のフランス嫌悪感情など、外向的シロウトの発想である。
ドイツの教条的左翼政権と最後まで反米で「心中」する意思など毛頭あり得ないのである。
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