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イラク攻撃(下)民主化とは相反する
ブッシュ米政権のイラク攻撃論に国際社会から疑義、異論が噴出しているのは、その目的がはっきりしないためだ。
イラクの大量破壊兵器の廃棄というのが当初の公式見解だったが、折に触れて、別の理由を並べるようになった。
その一つが「テロとの戦い」だが、9・11テロとイラクとの明白な関連は何も立証されていない。
イラクは無法者国家、だから大量破壊兵器をテロ組織に渡しかねない、米国が先制攻撃することは許される―との三段論法に至っては、国際法を逸脱している。
テロと同根
さらにブッシュ大統領は、フセイン政権打倒後は民主政権を樹立し、中東地域の手本とする長期戦略を明らかにした。
軍国主義、ファシズムから日本、ドイツを解放した第二次大戦を想定しているが、自国が「善」と信じる目的のためなら、他国への武力行使が許されるというのは、それ自体がファシズムの思想と大差ない。
こうした独善がまかり通れば、紛争地域を中心に国際社会の混乱は収拾がつかなくなってしまう。
こうしたブッシュ政権の方針は、近代国家システムの原理を否定するものだが、当のアラブ世界の受け止め方も留意する必要がある。
湾岸戦争時、米軍はサウジアラビアに展開し、戦後も駐留を継続している。イスラム教の聖地のあるサウジアラビアへの米軍駐留は、イスラム教徒の反発を招き、この中には9・11テロの首謀者とされるビンラディン氏もいた。
9・11テロの犯人の大半は、サウジアラビアの出身者だった。その理由には未解明の部分もあるが、米軍駐留、親米政権のイスラエルによるパレスチナ住民への弾圧が、底流にあるといわれる。
ハイテク兵器を使ったイラク攻撃で、住民に多くの犠牲者が出れば、反米感情が中東、世界のイスラム教徒の間で一段と高まる恐れがある。
そんな状況で米国の言う民主化が説得力を持つだろうか。それはあり得ない。力による問題解決は、実はビンラディン氏と同じ思想に立っているからだ。
日本の役割
ブッシュ大統領の民主化戦略のもう一つの弱点は、過去の米国の中東政策にある。
中東を原油戦略の重要地域と位置付ける米国は、「親米」であれば非民主国家でも支持してきた。多くの国家は今も王政で、民主主義の浸透は遅れている。
そして反米政権と対峙(たいじ)する国家にも武器、資金の提供を惜しまなかった。その典型がイラクのフセイン政権で、今問題になっている大量破壊兵器は、米国との関係抜きでは語れない。
その米国が、まるで過去を忘れたかのように、民主国家樹立を力説している。真意をいぶかる声が出ても不思議ではない。本当の狙いは、推定埋蔵量世界2位の原油利権にあるのではないか、と。
イラク早期攻撃を唱える米英、査察継続を譲らない仏は、現在の立場こそ異なるものの、中東地域では統治者、あるいは特定国の後ろ盾などとしてマイナスの顔も持っている。
その点、日本は原油購入や経済協力を通じた前向きの関係を維持している。
イラク問題の平和的解決では、平和国家としての役割を果たすことが可能なのに、小泉内閣は対米追従に終始している。
先の安保理公開討論で、日本の大使は査察活動の有効性への疑問を強く示し、武力行使の米英支持に大きく踏み込んだ。米英の新決議案の採択に向け、安保理の非常任理事国への働き掛けを強めている。
それならそれで、こうした政策を選択した理由を国民に説明すべきなのに、国会答弁では武力行使に賛成か反対か明言していない。
国連中心主義と対米重視は、戦後の日本外交の基軸だったが、現実は対米偏重に陥っている。平和解決を中心に据えた国連憲章の方に軸足を移動させることが大切だ。