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イラクに対する査察継続を求める意見が国連安保理の大勢を占め、反戦デモが世界中に拡大した。対イラク軍事行動を想定するブッシュ米政権は、この週末、国際社会の潮流から「孤立」してしまったように見える。「政府高官にとって最もひどい悪夢」(ワシントン・ポスト紙)といわれる劣勢を巻き返すため、政権幹部は「大統領の日」の祝日(17日)を含む3連休返上で戦略の練り直しに必死だ。ブッシュ政権のユニラテラリズム(単独決定主義)と、国連中心の多国間外交がせめぎ合う中、イラク問題は今月末にかけ極めて重要な局面を迎える。
「フセイン(イラク大統領)が査察に協力していると信じる人はほとんどいないし、大部分の人は生物・化学兵器を隠していると思っている」。ワシントンのシンクタンク専門家たちは口を揃える。安保理メンバーの認識も同じだろう。問題は、さらなる「証拠」の有無ではなく、解決のために軍事行動による政権転覆まで容認するかどうかという「理念」の次元に事実上、移っている。それだけに、軍事行動にブレーキをかけた14日の安保理協議は、国際社会の意思の反映として重い意味を持つ。60カ国で1000万人以上が参加したとされる15日の反戦デモは、それを後押しする結果となった。
だが、現時点でブッシュ政権が規定路線を変える可能性は薄い。むしろ、武力行使を容認する新たな安保理決議なしに、英国など協力国を率いて独自のイラク攻撃に踏み切る公算が強まったとの見方もできる。15万人以上の米兵が湾岸地域で臨戦態勢にある軍事面の現実を踏まえれば、「フセインを排除せずに兵を引くことはもはやできない」(ケイトー研究所のプレブル外交政策研究部長)とみるのが一般的だ。
当面、ブッシュ政権は英国とともに武力行使容認の表現を弱めた新たな決議案の採択を目指す見通しだ。しかし、いくら表現がソフトでも、結果的にイラク攻撃に「お墨付き」を与える以上、武力行使に懐疑的な国々は同調しにくい。拒否権が使われたり、賛成が規定の9カ国に達しないことが確実な場合は決議案自体を取り下げるだろう。そうなれば、決議なしの攻撃しかなくなる。
とはいえ、外交の世界には「理念」だけでは動かない現実もある。ブッシュ政権は大統領自らが安保理構成国の首脳に説得工作を始めている。「理念」が優先する多国間(マルチ)の外交と違って、二国間(バイ)の外交はしばしば具体的な利害を伴う。旗幟を鮮明にしていない国の中に、米国の示す条件次第で態度を変えるところがあっても不思議ではない。
96年の国連事務総長選を国連本部で取材したことがある。安保理15カ国中14カ国が賛成していたガリ事務総長(当時)の再選を、米国は1カ月足らずのうちに力尽くで覆し、現在のアナン事務総長を誕生させた。「強いものには巻かれろ」の心理は外交にも働く。「理念」を欠いた玉虫色の新決議が、武力行使の根拠にされる可能性はなお残っている。【北米総局長・河野俊史】
[毎日新聞2月16日] ( 2003-02-16-23:25 )