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【ワシントン河野俊史】対イラク攻撃の延長線上に「アラブ世界全体の民主化」を掲げた26日のブッシュ米大統領の講演は、政権が描く「フセイン後」の中東戦略の青写真を鮮明に浮き上がらせた。武力行使の目的がフセイン政権の転覆と大量破壊兵器の廃棄にとどまらず、中東地域への民主主義の拡大にあるという論理は、政権に強い影響力を及ぼすネオ・コンサーバティブ(ネオコン=新保守主義)人脈の主張と基本的に同じだ。しかし、米国流の「自由と民主主義」を普遍的な価値として位置付ける発想は、国際社会の新たな反発を招く火種をはらんでいる。
ブッシュ大統領が「フセイン後」の全体像を語るのは初めてで、保守系シンクタンク「アメリカン・エンタープライズ研究所」(AEI)の招待者約1400人は拍手をしながら聞き入った。
30分弱の講演で、大統領は「民主的な価値観」の拡大が世界共通の利益であることを強調し、「イラクでの成功」(フセイン政権転覆と大量破壊兵器廃棄)がアラブ世界全体の安定、とりわけパレスチナ問題の進展にどれだけ重要かを力説。「米国はあらゆる機会をとらえて平和を追求する。イラクの現体制(フセイン政権)の終えんが、そのような機会を生み出す」と述べた。
中東への「民主主義の拡大」はネオコン人脈の間でしばしば語られてきた。その中心人物でAEIの研究員でもあるリチャード・パール米国防政策委員会委員長は「中東で民主主義があるのはイスラエルだけだ」と言ってはばからず、各国の政治改革の必要性を強調している。この日の大統領講演の内容は、それと軌を一にしている。
しかし、その論理は米政府にとって最も厄介な地域に親米政権を樹立することで政治・経済の主導権を握ろうという発想に極めて近い。ブッシュ政権はアラブ諸国にアンチ・アメリカニズム(反米主義)が根強いことを懸念して、すでに教育や労働運動まで、民主化や政治改革を促す事業計画を立てている。しかし、それがイラク攻撃と結び付くと、大量破壊兵器の廃棄という「大義」がかすみ、米国の都合が色濃くにじみ出る。
また、米国の価値観をそのまま適用すれば「押し付け」や「独善」との反発が強まることも予想される。
ブッシュ政権が最終ゴールに「中東全体の民主化」を掲げたことで、イラク攻撃の真意をめぐって国際社会に新たな疑念が膨らむ事態も予想される。
[毎日新聞2月27日] ( 2003-02-27-19:28 )