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ニューカナーン(米コネティカット州)2月12日(ブルームバーグ):イラクは実に奇妙な方法で「ありがとう」を言う。そのことは、この国に平和的な提案を行い、門前払いを食らったドイツとフランスが十分に感じていることだろう。
ドイツとフランスは、戦争回避に向け、国連査察団の増員と査察期間の延長を提案し、イラクに武装解除を迫った。これに対しイラクのサブリ外相は、アラブ圏紙アル・ハヤトとのインタビューで、両国の提案を受け入れる「イラク人はだれもいない」と反発した。
これこそが、イラクを壊滅的な戦争から救おうとしたドイツとフランスに向けられたイラクの「ありがとう」だった。
イラクはドイツとフランスの提案をにべもなく拒否することにより、両国を愚か者に仕立て上げた。これでは表現が厳し過ぎるかもしれないので、言い方を変えよう。イラクはドイツとフランスをチェンバレン元英首相のような世間知らずに仕立て上げたのだ(チェンバレン元首相は、ナチス・ドイツとの和平を外交で勝ち取ることができると考えていた人物)。
それだけではない。イラクは11日、ドイツに対し侮辱的な提案をした。ドイツの善意を買う目的で、年内に合計20億ユーロ(約2600億円)相当のモノやサービスをドイツから購入する方針を示したのだ。
イラクは誇らしげにこう発表した。米国との紛争でドイツが「公平な立場」を取っていることの報酬として、ドイツ企業に「最高の優先順位」を与えるのだ、と。
モノを買い、代金を支払ってやる――これが、イラクがアピールしたドイツとの関係だ。もしシュレーダー独首相に少しでも自尊心があるなら、フセイン大統領にその20億ユーロを持ってとっとと消えろと言ったであろう。
根の深い問題
イラクから受けた侮辱は、首相の新たな挫折になった。シュレーダー首相は昨年10月の総選挙前、ドイツはイラクへのいかなる武力行使にも参加しないとの強い決意を表明した。しかし総選挙の結果は、首相率いる社会民主党(SPD)の辛勝で、その後は首相の支持率が急低下している。
それでもシュレーダー首相は、その決意の固さゆえに、不幸にもブッシュ米大統領をさまざまな言葉で侮辱。また、フランスの同調を取り付けることにも成功した。
しかし、欧州諸国の大半の考えは違うようだ。先週、欧州8カ国はイラクに対する米国の方針を支持すると宣言した。この宣言が出たことにより、武力行使に反対しているのは「古い欧州」だけで「欧州(そのもの)」は攻撃を支持していると指摘したラムズフェルド米国防長官もお墨付きを得ることとなった。
もちろん、ドイツとフランスはラムズフェルド発言にかみついた。フィッシャー独外相はラムズフェルド長官が今週ドイツを訪問した際、「わたしは納得できない」と表明。公の場で長官を批判した。
シュレーダー首相の敵
シュレーダー首相の人気は音を立てて崩れている。期待外れな景気動向、誤解される首相の外交政策、不人気な増税――もちろんこのチャンスを、野党のキリスト教民主同盟(CDU)は見逃していない。
先週のニーダーザクセン州とヘッセン州の議会選は、SPDにとって悲惨な結果に終わったが、その一方で一躍脚光を浴びたのは、CDUのメルケル党首だった。
メルケル党首は、経済問題でも外交問題でもシュレーダー首相を激しく攻撃。イラクに対する米国の方針を支持した欧州8カ国についてどう考えるかとの質問に対しては、CDUが政権を取れば、ドイツは9番目の国になると答えた。シュレーダー首相はこの意味をよく考えてみる必要がありそうだ。
(デローザ氏は、デローザ・リサーチ・アンド・トレーディングの社長。このコラムの内容は同氏自身の見解です)
ニューヨーク David DeRosa 東京 柴田 広基 Hiroki Shibata
★ フランスやドイツは、当然のように、書かれているようなイラクの反応は予測しており、独仏提案が安保理で採択されることもないとわかっている。
しかし、サブリ外相の反応は、国連軍派遣という独仏当初案に対するものであり、独仏は、イラクの受け入れ余地を広げるため国連軍派遣をはずした。
それでも、提案が葬り去られることはわかっている。
独仏は、端的に言えば、米国ブッシュ政権が独仏案を蹴飛ばしてでもイラク攻撃を行うことでブッシュ政権に道義がないことを浮かび上がらせる戦術を採ったのである。
(世論や諸外国の動きを誘発することで、万に一つの戦争回避を期待していることは否定しないが)
デローザ氏の気持ちはわかるが、シュレーダー氏のSPDが昨年9月にかろうじて勝利したのは「イラク攻撃反対」を反対したからであり、その意思表示をしていなければ、経済に対する不満からCDUが勝利していたであろう。