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不審船というお芝居第三幕・不審船・引き上げの茶番(2)引上船は沈没船と違う
船にも、顔がある。
引き上げられた不審船は、その顔が切り取られていた。
真相を知られないために、犯行者がよく使う手口でもある。
だが完全犯罪は、容易くは無い。
顔を切り取られた不審船には、証拠が残されていた。
引き上げられた船は、沈没したとされる船と、個体が違うのである。
船には、救命筏が備えつけられている。
色々な型式があって、筏を収納したコンテナを装置する架台も種類があ
る。
航行している長漁3705(以下、航行沈没船をA船とする)操舵室上の筏
架台装置は、角度が8度くらいで投下用引手棒をひけば、ピンが外れて立
ち上がり船外に落下する方式なの対し、引き上げられた船(以下、B船と
する)の架台角度は、50度も傾いたもので、投下用引手棒をひけば急傾
斜のために、転がり落ちる旧形式のものである。
厨房室の屋根に、後部マストが立っている。
マストを支える∧型に開いた支柱に、梯子の足掛けのような横棒が渡っ
ているが、A船は3本なのに対し、B船は4本なのである。
操舵室の屋根には、前後左右に手すりが付いていて、左右の手すりは、
それぞれ縦棒8本横棒2本で構成されている。
縦棒の前から3本目と5本目の間(操舵室の出入り口の真上にあたる)
の下方は、登録板などを取り付けられるように、A船は凹に窪んでいるの
だが、B船の屋根の手すりは、一直線で凹は無い。
不審船の巾は5メートルという。
引き上げられた時の真上写真で計測すると、操舵室など部屋の巾は、3
メートルなのだが、海保の発表では、引き上げられた屋根は、船橋のもの
が、約4メートル×約3メートル、後部甲板室の屋根が、約6メートル×
約4メートル、と、A船のでもB船のものでもない、別船の“小道具”な
のである。
上記の違いは、破損に依る変形ではなく、構造的な相違であるから、決
定的なものである。
沈没したA船と引き上げられたB船が違うということで、注目されるこ
とは、B船には、航行痕が無いことである。
通常の船なら、水の摩擦痕や海草、貝類が付着するものであり、とくに
喫水線境は、何らかの痕跡が早々に出来るものだが、B船は進水したばか
りの様相を示している。
菓子袋が見つかっても、15人ともいう乗組員の生活の痕跡、居住の部
屋も無く、鍋釜類の食器など全く見つかっていないという、このB幽霊船
は自走していたのでなく、運ばれてきた可能性を秘めている。
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余談だが、
政府が引き揚げ作業を始めることを正式決定し、引き揚げ費用約59億
円を予備費から支出することを閣議決定したのは、6月21日だった。
引き揚げ作業を委託されたサルベージ会社の新洋丸や新辰丸が、出港し
たのは、6月24日である。
作業手順も6月21日には決まっていて、その中に、
【クレーンでつり上げて台船船尾に設置した★プールに収容する。】
というのがある。
引き上げは、多くの関連作業との連携で行なわれるが、不思議なことに
主役の台船が「第60吉田号」であることを発表したのが、8月2日にな
ってからである。
訳のわからぬ理由をつけたが、極めて不自然なことである。
それと、引き上げ地点からドックへ移送する間のために、上部が切断さ
れた船のサイズに合うプールを作ったことである。
有るかも知れないという爆発物のために、水に浸けるのは必須なのか。
【腐食を防ぐため】【船体が乾燥しないように】【空気に触れて酸化する
のを避けるため】に、海水で浸すという発想は、正気の沙汰ではない。
プール上部にシートを掛ければ、収容しているものが、何であるかは判
らない容器を作ったこと。
そして、その容器を積んだ台船名が発表されたのが、引き上げ間近にな
ってからであるのは、奇妙なことである。