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【カラチ(パキスタン南部)春日孝之】アフガニスタンのタリバンを支持してきたパキスタンの高名なイスラム宗教指導者、ムフティ・シャムザイ師(56)がカラチで毎日新聞と会見した。同師は一昨年の米同時多発テロ直後、米国のアフガン攻撃回避を目指しパキスタン政府がアフガンに派遣した代表団の一員。タリバンに保護されていたウサマ・ビンラディン氏の身柄引き渡しをめぐり、最高指導者オマル師に試みた「最後の説得」の内実について初めて証言した。
代表団は、それまでパキスタンによるタリバン支援の「両輪」の役割を果たしてきたパキスタン軍情報機関(ISI)と、タリバンと同じディオバンディ派の宗教学者で編成、ISIのマフムード長官が率いた。
会談は同時多発テロ発生1週間後の9月18日、タリバンの本拠地カンダハルで行われたが、タリバンに最も影響力を行使できる一団の説得は不調に終わり、アフガン情勢は「米国の攻撃不可避」を印象付ける形となった。パキスタン政府はこの歴史的会談の内容を公表せず、何がどう話し合われたか不明だった。
パキスタン・ディオバンディ派の最高指導者シャムザイ師によると、会談は2回に分かれ、全体会談に続いてISIを除いた宗教者会談が開かれた。全体会談では、同時多発テロ後に米国支持を打ち出したパキスタン・ムシャラフ大統領の意向を受けたマフムードISI長官が「パキスタン政府は国益上、米国に協力せざるを得ない」と発言。「ビンラディン氏を米国に引き渡すことはパキスタン、タリバン双方の利益になる」と述べた。
これに対し、オマル師はパキスタンの立場に一定の理解を示しつつも「米国には決して攻撃基地を提供するな」とクギを刺したという。
さらに宗教者会談で、オマル師は「ビンラディン氏がテロに関与したという証拠を米国が提示しない以上、引き渡す道理はない」と従来の主張を繰り返した上で、同氏のテロ関与疑惑を追及するため、アフガン国内でイスラム法廷を開設し、国際監視団同席の下で審理をしたいとの譲歩案を米政府に伝えてほしいと求めたという。
この提案は後日、米政府に伝えられたとみられるが、米政府は身柄の即時・無条件引渡し要求を貫き、アフガン攻撃に踏み切った。シャムザイ師は会見で「米国も受け入れ可能な提案だと思ったが、米国には初めから『攻撃』という結論しかなかった。最近のイラク情勢でも米国の姿勢は同じだ」と非難した。
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ムフティ・シャムザイ師 パキスタン最大のマドラサ(イスラム宗教学校)をカラチを拠点に運営。生徒は1万人を超える。反米主義者だが政界とは一線を画し、メディアとの接触もまれで、パキスタンのジハーディ(聖戦に従う者)の精神的支柱になっている。
[毎日新聞2月3日] ( 2003-02-03-18:51 )