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【バグダッド小倉孝保】戦争の危機が迫るイラクで子供たちが、がんや白血病と闘っている。こうした病気の急増の背景として、湾岸戦争(91年)で米軍がイラク軍に対して使用した劣化ウラン弾の影響が疑われている。バグダッドのマンスール子供教育病院で21日、病院側と患者家族らの了解を得て、乳幼児のがん手術に立ち会った。
90年以来続く国連の制裁でイラク国内の薬品不足は慢性化している。医師たちは「薬さえあれば助かったのに」との思いを何度となく経験してきた。今も厳しい状況が続く中、比較的設備や医薬品の整った施設で手術を受けることができた子供たちは、幸運だという。
手術室に入ると、0〜4歳の子供4人が手術台で眠っていた。それぞれの手術台に医師、看護師ら3、4人ずつのスタッフがついて無言で仕事をこなしている。
食料品会社に勤めるガリブさん(45)の三男、ハッサンちゃんは先月末、生まれた。大腸の異常がわかり、調べたところ小さながんが見つかった。全身麻酔で眠っているハッサンちゃんの手や胸に、心臓の状態を知るための機械のコードが取り付けられ、酸素注入のチューブが口に通される。顔は白いテープでぐるぐる巻きだ。ハッサンちゃんは、顔をしかめながら大きな呼吸をした。
主治医のアブドラ・アラウィ医師が助手たちに指示を出しながら、腹部を開く。「ここだな。切り取るぞ」。がんの場所を示しながら、アラウィ医師は周りのスタッフに説明する。アラウィ医師は心臓の動きを表す機械のモニターを見ながら、「うん、大丈夫だ。小さいけど、頑張っているな」と語りかけた。
約2時間半でハッサンちゃんの手術が終わった。しばらくすると、ハッサンちゃんは泣き声を上げた。
手術室の前では、父ガリブさんが心配そうに長いすに座っていた。手術が無事終了したことを看護師に告げられ、「神様のおかげだ」と満面の笑みを浮かべた。
隣の手術台では、アブドルアリ君(4)の手術が進んでいた。アブドルアリ君も大腸がんだ。アブドルアリ君の手術は終了したが、病院側は「回復するかどうかは今後の経過をみるしかない」と説明する。父アリさん(32)は「私にできることは祈ることしかない。何としても生かしてやりたい」と語った。
病院側の説明では、週に10〜20人の子供の手術が、この病院で行われる。97年ごろから、小児がんの手術が以前に比べ3、4倍に増えたという。
こうしたがんの急増に関して、イラク保健省や世界保健機関(WHO)は劣化ウラン弾の影響を調査しているが「患者への対応で精いっぱい」(保健省)の状態だという。イラク南部バスラの医師の調査では、バスラでのがんの発生率は湾岸戦争前の10倍、がんによる死者数は17倍になったとのデータもある。
[毎日新聞1月22日] ( 2003-01-22-13:57 )