現在地 HOME > 掲示板 > 戦争21 > 297.html ★阿修羅♪ |
|
【ニューデリー=佐藤浅伸】南アジアで核兵器を持って対峙(たいじ)するインド、パキスタン両国政府が、それぞれの国軍内に核戦力を統括する「核司令部」を設けて核兵器使用の態勢を整え、印パ対立は危険な新段階に突入した。
世界の関心がイラクや北朝鮮に向く中で、両国政府は今年に入ってミサイル実験も積み重ねており、核拡散防止条約(NPT)を基軸とした国際的な核管理システムの枠外で、両国は着々と核戦闘能力を増強している。
インド安全保障閣僚委員会の発表によると、年初に新設された「核司令本部」は、バジパイ首相が議長を務める政治会議と、ミシュラ国家安全保障顧問(首相首席補佐官)が議長の執行会議からなる。また、国軍内に、核兵器の管理、使用権限を持つ戦略軍司令部が新設され、今月10日、アスタナ空軍中将が最高司令官に任命された。政治会議が「核兵器使用決定の唯一の機関」と定められた点で、核兵器のボタンはバジパイ首相の手ににぎられているが、インドの核兵器が実験段階から、国軍内に司令部が設置される段階に発展したことの意義は大きく、インドは完全に「核兵器保有国」の態勢を整えた。
一方のパキスタンはインドに先駆けて2000年2月に、核攻撃を検討する「国家司令本部」の設置を発表しており、現在は核戦力司令部の態勢づくりを急いでいる。パキスタンの場合、陸軍参謀長を兼ねるムシャラフ大統領が本部長を務めるほか、海軍、空軍の長が参加した点で、軍部主導の性格が鮮明だ。
インドの動きで注目されるのは、核兵器使用に関して「生物・化学兵器を使った攻撃に対する核による報復も選択肢」と位置付けたこと。インドは核実験翌年の1999年8月に発表した「核ドクトリン」の中で「核攻撃を先に始めることはない」と明記しており、今回の方針は核使用の敷居を下げたことになる。
両国のミサイル開発も、危険な動きが続く。インドは核弾頭搭載可能な中短射程の2種類のミサイル、アグニ2(射程約2500キロ)とプリトビ(同150―250キロ)を既に配備。今月9日には、アグニ1改良型ミサイル(同600―800キロ)の2回目の発射実験を行った。同ミサイルは、射程能力から見てパキスタン攻撃能力強化の狙いがあるのは明確だ。
パキスタンも負けていない。インドの実験と同じ日に、核弾頭搭載可能な弾道ミサイルとしては初めてガウリ(同1500キロ)を軍に配備、インドのほぼ全域を射程に入れた。
核兵器・ミサイル攻撃の態勢を着々と整える一方で、偶発的使用を防ぐ「安全装置」は、依然両国とも未発達、という観測が強い。米露両国は、偶発的使用を防ぐため何重もの暗号システムを確立しているが、パキスタンの「安全装置」はあってもごく原始的なものとの見方が有力で、インドでも「報復だけに核を使うのなら、安全装置の必要性は大してない」(ナンビアル元印陸軍副参謀長)との指摘がある。
(1月12日23:23)