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米国による対イラク攻撃の可能性が高まる中、イラクの隣国ヨルダンが苦悩している。アラブ最親米国の一つだが、政治的、経済的にイラクと深いつながりがあるため、難しい外交を迫られているからだ。(ヨルダン東部カラマで 相原 清)
カラマの対イラク国境。通関手続きを終えた20トン級のタンクローリーが次々とごう音を響かせ、荒涼とした大地に敷かれたアスファルト道路をアンマン方面へと疾走していく。積み荷はイラク産原油だ。
非産油国のヨルダンは、石油供給を全面的にイラクに依存している。約半分(約3億ドル分)は、友好関係への見返りとしてイラクから受けている無償供与で、残りも優遇価格で買っている。1991年の湾岸戦争以降続いている措置だが、ヨルダンにとっては、国民生活の「命綱」だ。
さらに薬品、日用雑貨などヨルダンの製造業の32%はイラク向けだ。アンマン市内にはイラク資本の高級ホテルも少なくない。国境近くで自動車部品販売店を経営するシャヘール・カライラさん(32)は「イラク経済と我々の暮らしは同体だ。戦争になるかどうかは、神のみぞ知るが、そうなればすべて失うことになってしまう」と不安な表情で語る。
一方、米国はヨルダンをイラク経済圏のくびきから解き放とうと躍起だ。2001年12月には自由貿易協定(FTA)を発効させ、対ヨルダン経済援助は2003年度は2・5億ドルへと6割増額する方針だ。軍事支援も2億ドルに倍増する。ヨルダンは西をイスラエルと接しており、この点からもヨルダンの安定は米国にとって重要だ。
ヨルダン政府は、米国による対イラク攻撃について、「地域に重大な結末をもたらす」(アブドラ国王)と、表向き反対の姿勢を示している。だが、湾岸戦争時、イラク寄りの立場を取り、米国や湾岸産油国から経済協力を締め上げられた「同じ轍(てつ)」は避けたいのが本音だ。
国王が最近展開している「ヨルダン・ファースト(ヨルダン第一主義)」キャンペーンでは、国民の連帯と国益の追求をうたい、街角にはヨルダン国旗をあしらった色鮮やかな大看板が目立つが、ある西側外交官は、「必要以上にイラクに肩入れしないとのメッセージがこめられている」と解釈する。
とはいえ、ヨルダンは国内にパレスチナ人を7割近く抱え、彼らの多くは、湾岸戦争時にイスラエルにスカッドミサイルを撃ち込んだフセイン・イラク大統領を「英雄」とみなす。ヨルダン政府が「フセイン政権打倒支持」を鮮明にすれば、国内の反発は他のアラブ諸国以上に大きい。「打倒」が失敗に終われば、国王体制そのものが危機にさらされる危険すらある。
米軍の軍事行動とフセイン政権の帰趨(きすう)をじっと見極めながら、ぎりぎりまで態度を保留し、最後は「勝ち馬に乗る戦略」(外交筋)をヨルダンは描いているようだ。
(12月27日22:15)