現在地 HOME > 掲示板 ★阿修羅♪ |
|
【ニューヨーク上村幸治】イラクの大量破壊兵器をめぐる国連査察は27日でまる1カ月となる。査察団はこれまで約170カ所で査察を実施したが、大量破壊兵器開発の証拠発見には至っていない。兵器開発についての申告書記載が不十分として国連決議の「重大な違反」を指摘した米国の圧力を受け、査察体制が今後、強化されるのは必至の情勢だ。一方、米国が武力行使容認を求める新たな安保理決議を新年早々にも各国に打診するとの観測が浮上しており、査察団が査察報告書提出期限を前にした来月20日ごろ、最終判断をまとめる可能性が強まっている。
これまでの査察箇所の多くは98年までの旧査察体制下で査察済みの場所だ。査察団は「米英の情報機関が証拠を握っているなら、提供してほしい」と要請している。十分な情報提供を行わないまま、兵器開発に携わったイラク人科学者からの聴取にこだわる米国に対し国連内部では「本当は大した情報を持ち合わせていないのでは」との声さえ出始めている。
国連外交筋によると、米国はここにきて、他の安保理常任理事国との水面下での接触の頻度を高めているという。米国が「2月開戦」を意識し、国連査察団の報告書提出期限(1月27日)に合わせて、米国が対イラク武力行使決議案を提案しようと考えている場合、その数週間前には安保理各国に原案を提示し、文案などを練り上げる必要があるため、1月早々にも打診があるとの見方が強い。
焦点となっている兵器開発に携わった科学者の国外での聴取は、独裁体制下のイラクの現状を考えれば、事実上、亡命を助長することにつながる。このため、査察団幹部は「まだ解決すべき実務的問題が残る」と明言しており、聴取場所となる国との調整など、実施にはなお詰めの作業が不可欠という。
フランスやロシアは、このような現状でイラクを断罪する新たな安保理決議を話し合う必要があるのかどうか疑問視している。査察報告書提出より前に安保理の動きが本格化した場合、イラク断罪が既成事実化し、査察が儀式化してしまう懸念も出てくる。
このため国連内部では、来月20日過ぎの段階で国連査察団としての見解を内部でまとめた上で、安保理が先走り過ぎないようけん制すべきだという声がある。ブリクス国連監視検証査察委員会(UNMOVIC)委員長は、来月9日に申告書に対する中間報告を行ない、その後の状況を踏まえ、査察状況を評価する内部の検討会議を開く意向という。
[毎日新聞12月26日] ( 2002-12-26-22:04 )