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政府は20日、米国がイラク攻撃に踏み切った場合、その戦闘終了後、イラクが保有しているとされる化学兵器など大量破壊兵器廃棄のため、陸上自衛隊をイラクに派遣する方向で検討を始めた。
イラク復興支援を目的として検討している新法に、輸送や医療支援と並ぶ派遣自衛隊の任務の柱として「大量破壊兵器の廃棄支援」を明記する方針だ。
廃棄支援を行う兵器は、サリンなど化学兵器を中心とし、その種類に応じ、焼却、中和、爆破、さらには原材料の製造工場解体を行う予定。生物兵器については今後、支援が可能かどうか検討を進める。核兵器については、対応できないとしている。
派遣する自衛隊の規模はイラク情勢の推移を見て、判断する。自衛隊員が個人として参加する場合は、現行の国際機関等派遣防衛庁職員処遇法の規定に基づいた派遣が可能だ。しかし、今回は「多数の自衛隊員の派遣が必要となる見通し」(政府関係者)で、初の部隊派遣が検討されており、そのための新法が必要と判断した。小人数での派遣となった場合でも、派遣の位置づけを明確にするため、新法に明記する方針だ。
政府は、陸上自衛隊の派遣に加え、最終処理技術を持つ日本企業からの民間技術者の派遣や資金供与も検討している。イラクに大量の生物・化学兵器が残っている場合、現地で最終処理を行う施設を建設する必要があるという。
イラクは過去に国連大量破壊兵器廃棄特別委員会(UNSCOM)によって大量の化学兵器保有を発見された。現在も保有の疑いが濃いと見られている。イラクへの武力行使を念頭に置く米国は、すでに日本政府に対してイラクが大量の化学兵器や化学剤を保有している可能性を伝え、廃棄処理についても非公式に支援を打診してきている。
◆イラク復興支援「国際貢献」アピール◆
政府が、化学兵器廃棄のための陸上自衛隊派遣を検討し始めたのは、自衛隊の国際貢献の活動範囲を拡大し、大量破壊兵器拡散防止に取り組む日本の姿勢を国際社会にアピールする狙いがある。
かつて、湾岸戦争終了後も、イラクの大量破壊兵器廃棄作業を監督する国連の査察活動(91―98年)に、日本から8年間で、陸上自衛隊員8人と防衛庁職員1人の計9人が派遣された。が、これは個人の資格として少人数の参加にとどまった。
今回も実際の廃棄作業をイラク政府が行い、国際機関がそれを監督する方式をとることになれば、自衛隊員の派遣は前回同様、査察活動に少人数参加となる可能性もある。
しかし、戦闘後のイラクの新政権の誕生までに時間がかかることも予想される。テロリストへの拡散を防止するため、米英軍などが直接廃棄に乗り出す可能性も高い。政府が自衛隊部隊の派遣を検討するのは、「米国から『大量の化学兵器が残る武器製造工場を丸ごと日本が担当してくれ』との要請も想定される。その場合は、陸自の化学兵器の専門家のほか、医療班などの要員を加えた大規模な派遣とならざるをえない」(政府関係者)との判断があるからだ。
化学兵器の廃棄作業では、砲弾の暴発の恐れがあるほか、毒性物質が漏れた場合、作業員に被害を及ぼしかねない。また、周辺地域の環境が汚染されたり、危険が及んだりしないような配慮も必要となる。
最近、日本はこうした分野で官民協同での技術研究の実績を積んだ。自衛隊は、96年に北海道の屈斜路湖で発見された旧日本軍の毒ガス弾26発の回収作業に当たり、2000年に民間企業の手で中和処理を終えた。政府はまた、中国大陸に旧日本軍が遺棄した70万発の化学兵器についても、2007年までの処理を目指して技術検討を進めている。
陸自は、日本国内で化学兵器などが使用された場合に偵察、除染などの活動を行う化学防護隊を全国に15隊配備しており、対応能力があるとされる。
ただ、新法に大量破壊兵器廃棄のための自衛隊海外派遣が盛り込まれれば、治安が不安定な場所への自衛隊の派遣の是非、廃棄作業に当たる自衛隊員が任務遂行のために武器を使用できるかどうか、など国会で論議を呼ぶことは確実だ。
(12月21日03:01)