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日米安保協議委:北朝鮮、イラク問題 日本の協力姿勢、鮮明に [毎日新聞]
投稿者 あっしら 日時 2002 年 12 月 17 日 23:34:25:


 ワシントンで16日(日本時間17日)、約2年ぶりに開かれた外交・防衛担当閣僚による日米安全保障協議委員会(2プラス2)は、朝鮮民主主義人民共和国(北朝鮮)とイラクという二つの波乱要因を抱えた米国に対し、日本が一層の協力をアピールする場となった。北朝鮮向けにはミサイル防衛(MD)構想への積極関与、イラク向けには戦後復興への協力だ。そこには小泉政権のもとで、日米間の安全保障上のハードルを少しずつ下げさせようとする米国の思惑がのぞいた。 【ワシントン佐藤千矢子、鬼木文浩】

 ■    

 「大量破壊兵器の使用があれば、最も重大な結果を招くであろう」

 2プラス2の共同声明は、極めて強い表現で、北朝鮮が攻撃を仕掛けた場合の軍事報復を示唆した。声明は北朝鮮の弾道ミサイル開発についても「輸出を含むすべての活動の停止」を求めた。

 パウエル米国務長官は会議後の共同記者会見で「北朝鮮の脅しや合意違反を受けて、対話に入ったり、取り引きしたりしない。北朝鮮は、まず濃縮ウランや原子炉の再稼動を止めなければならない」と警告を発した。米国から有利な条件を引き出すため瀬戸際外交に出てきた北朝鮮に、明確なノーを突き付けた形だ。

 ただし、米国は、北朝鮮に対して、イラクと同様の武力攻撃は想定していない。パウエル長官は、共同会見で繰り返し「北朝鮮を攻撃する意図はない」と強調した。

 この時期に、北朝鮮を加えた「二正面作戦」は回避したいのが米国の本音だ。それを補強したのが、石破茂防衛庁長官によるミサイル防衛構想に関する「開発、配備を視野」発言だ。

 2プラス2の会議後、石破長官は米国防総省のミサイル防衛庁を1時間半にわたって視察。ケイディシュ長官らから、北朝鮮によるミサイル本体や技術の拡散の脅威について説明を受けた。

 「2015年には米国は大陸間弾道ミサイル(ICBM)の脅威に直面する可能性が高い」

 「北朝鮮はミサイルの完成品と部品の両方を売ることに熱心で、これによって北朝鮮はミサイル技術を取得したいと思っている国々に開発の基盤を与えている」

 ブッシュ政権内には、もともとMD構想に関する日本の消極姿勢に不満があった。東アジアでMD網を完成させるには、日本の協力が不可欠であり、日本自身の安全保障に寄与すると考えているためだ。特に今月10日にはイエメン沖でスカッド・ミサイル15基を積んだ北朝鮮の貨物船が臨検を受けたばかり。ケイディシュ長官らは「長期的には同盟国がミサイル防衛に参加することは非常に重要だ」と日本がMDのの開発、配備に参画する必要性を説いた。

 日本としても、日朝関係の改善について米側の理解を得るためには、MD構想についてこの段階で踏み込む必要があるとの判断があった。共同宣言に盛られた「(日本が)この課題に主体的に取り組んでいく」との表明は、事前にすり合わされたものだった。

 日本政府の従来の立場から一歩前に踏み出した政治的発言だったが、今後、国内で反発が出ることも予想される。

 ■    

 日米の2プラス2が直面していたもう一つの課題は、イラクだ。風邪を理由に会議を欠席したラムズフェルド国防長官に代わって主役になったパウエル国務長官は共同会見で、イラクが国連に提出した大量破壊兵器に関する申告書について「(米国が抱いている)懐疑には十分な根拠がある。申告書には問題がある」と指摘し、今週末に米政府としての評価を公表するとの見通しを示した。

 イラクの「重大な違反」が確認されれば、米国は多国籍軍を率いてイラク攻撃に踏み切る可能性が強い。現在、イラク周辺に展開する米軍は約6万人。開戦時には約20万〜25万人が必要とみられている。

 会議では「イラクに関する軍事の詳細も話し合われたが、公表は差し控える」(日本側同行筋)とその内容は報道陣には明かされなかった。

 しかし、川口順子外相は「武力行使が不可避の事態になれば、日本として主体的に考えて役割を果たしたい。難民支援、周辺国支援、復興支援など、あらゆる選択肢を検討している」と積極的な協力姿勢を見せた。イラク問題への対応で与党議員の質問にも「仮定の話には答えられない」と答弁して反発を買った時とは大きな変化だった。

 イラク攻撃が現実のものとなり、戦後のイラク復興が国連平和維持活動(PKO)の枠組みで行われる場合は、自衛隊がPKOに参加することも可能だ。しかし、政府内には、戦争終結後のイラクで、PKOが組織される可能性は低いとの見方が支配的だ。政府は、その場合に備えて、自衛隊を派遣するために新法制定も検討している。川口外相としてはギリギリの表現だった。

 【ことば】ミサイル防衛 敵のミサイルをレーダーなどで探知し、その「上昇段階」「中間飛行段階」「突入段階」の3段階で重層的に迎撃する計画。このうち上昇段階は、ミサイルの目標が日本か米本土かはっきりしないため、日本が参加して迎撃すれば、政府が憲法解釈で禁じている集団的自衛権の行使に当たる可能性が生じる。このため日米は、中間飛行段階に入って目標が明確になる敵のミサイルを、海上のイージス艦から発射したミサイルで迎撃するシステムを共同で技術開発している。

[毎日新聞12月17日] ( 2002-12-17-23:17 )

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