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　【フランクフルト２３日＝貞広貴志】ドイツ・シュレーダー政権が、９月に再選を果たして２期目に入るやいなや増税路線に転じ、その経済運営に批判が集中している。ドイツ経済が深刻な景気低迷でデフレの危機すら指摘される中、ひたすら財政赤字の縮小に走る手法が疑問視されているもので、「このままだと独経済は日本の二の舞い」との不安も浮上してきた。

　政府が２０日に閣議決定した「税制優遇措置・例外規定の撤廃法案」は、〈１〉有価証券や不動産譲渡益への一律１５％の新税導入〈２〉持ち家に対する課税強化〈３〉花やペットなど低税率が適用されていた商品の付加価値税を通常の１６％に引き上げ――など４１の措置を盛り込んだ。「税制の近代化、簡素化」（アイヘル財務相）という美名のもと、３６億ユーロ（約４３００億円）規模の増税になる。

　関心を呼んでいるのが、銀行に対し預金者の有価証券取引の詳細を税務当局に報告するよう義務付け、守秘原則を切り崩した点だ。課税漏れを防ぐのが狙いだが、周辺国のスイスやルクセンブルクが預金者の秘密を守っている現状では、「資本逃避に拍車をかけるだけ」（経済誌）とされる。また、株譲渡への課税は、国際的にも注目された「企業の保有株売却益への課税撤廃」という１期目シュレーダー政権の目玉施策を、今年の１年限りであっさり打ち切るもの。一連の措置は、目先の税収にとらわれるあまり、独市場の魅力をそぐ危険をはらんでいる。

　シュレーダー政権が方針転換を迫られた裏には、９月の総選挙が終盤まで劣勢だったため税収の大幅な落ち込みなど不都合な現象に目をつぶり、今になってそのツケが噴出した事情がある。「増税はしない」「財政赤字は（ユーロ導入国の基準である）国内総生産比３％以内に収まる」といった公約はことごとく破られ、野党キリスト教民主同盟（ＣＤＵ）が国会に「選挙詐欺調査委員会」設置を求める異例の展開となった。

　２２日にフランクフルトで開かれたシンポジウムで増税策への意見を聞かれたドイツ証券取引所のウェルナー・ザイフェルト会長は、「政府の仕事はすばやいねえ。（投資家などの）信認を瞬時に失わせるという意味においてだが」と強烈に皮肉った。

　目下のドイツ経済は、株価低落と企業倒産が続き、銀行の不良債権がふくらみ、低成長から抜け出せないという苦境にある。経営危機がささやかれるコメルツ銀行のクラウスペーター・ミュラー頭取は、「ドイツはデフレではなく、唯一の脅威は経済が弱まる中で増税しようという政策」「独経済を日本と比べるのはばかげている」と断じる。強い口調には逆に、政府の増税策が“日本化”を招くことへの危惧（きぐ）がうかがえた。

(11月24日00:04)

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