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ヤクザ業界に与えたインパクトという点ではここ数年では最大級だろう。群馬県前橋市で発生した元組長への発砲事件である。狙われたのは稲川会系大前田一家の幹部だった後議邦雄元組長(55)。死亡したのは一般人3人、元ヤクザ組員l人の計4人である。
「大前田一家は、01年8月に東京・葛飾の斎場で住吉会長最高幹部を射殺した実行犯と関係があるとされる組織である。今回の事件もその延長と見るのが、自然な見方だろう。
いわゆる報復劇ではあるが、過去の事件とは大きな違いがいくつかある。第一に、複数の一般人が巻き 添えで死んでいることだ。97年の宅見若頭射殺事件などでも犠牲者は出ているが、いずれもー人。複数人が一度に巻き込まれたのは前代未聞だ。
なぜか。俺の推測はこうだ。事件は深夜、スナック店内と駐車場で起きた。つまり犯人は暗いところから明るい場所に短時間で移動したことになる。明るさの変化に目が慣れる前で、元組長だけを狙う、つま り"点〃で撃つことができず、無差別的に〃面"で乱射してしまった、という見方である。 後藤元組長は昨年10月にもゴルフ場で4人組の襲撃を受けているのだが、このときも膚に重傷を受けたが一命は取り留めた。今回の狙撃では、駐車場での発砲音を聞いて、店内で伏せていたという情報もある。再襲撃の危慎は常に持っていたに違いない。
一方、襲う側としても、2度の失敗は許されないターゲットだったはず。10発以上乱射したことには、そうした意識も影響していただろう。
しかし、結果は今回も未遂。これまた前代未聞である。ヤクザ関係者に与えた最大の衝撃は、実はこの点なのだ。 以前、この連載で中野会の弘田憲二副会長が沖網で射殺された事件を取り上げたが、あの実行犯は単独でバイクに乗ったまま、しかもー発でしとめている。しかも、弘田副会長の横には女性が同乗していたのだが、彼女は傷一つ負わなかったという。
これがそれまでのヤクザが考えていた抗争パターンである。それと比較して今回のケースは、従来の形式を大きく逸脱しており、抗争そのものの変質を意味する。衝撃はこの部分にあったと言えよう。
さて問題はこのあとだが、大きく2つの見方ができる。後藤元組長が所属していた大前田一家は斎場での発砲事件からもわかるように、稲川会でも屈指の武闘派である。その責任を取る形で稲川会から絶縁処分を受けたのだが、元組長が2度の襲撃を受け、そのボディガード役が殺された以上、だまっていられない者も当然いるはずである。しかも、絶縁が斎場事件の「手打ち」とすれば、後藤元組長を狙った一連の襲撃はいわゆる「手打ち破り」と取られる可能性もある。斎場の件に関しては、ピットマンを始末することなく警察に突き出したのだが、この処理の方法に不満を持つ者がいたのだろう。襲撃には報復でこたえる。そのバランスシートが恐らくここで崩れてしまったのだ。
そもそも斎場事件の元をたどれば国粋会内部の問題に行き着く。住吉会と稲川会の対立というよりも国粋会の代理戦争と見ていい。それぞれの組の思惑が複雑に絡んだ事件が背景にあるだけに、泥沼化は避けられないだろう。 以上が順当な見方だが、逆に、何も起こらないのでは、という意見もないではない。実は俺自身も、こちらの可能性が高いと読んでいる。 すでに実行犯を名乗るヤクザが自首しており、男が所属する組織の事務所周辺には警察が張り付いている ようだが、恐らくムダ骨に終わるだろう。仮に全面戦争突入があるなら、後藤元組長がゴルフ場で狙撃された時点で即、報復に出ていたはずだが、動きは見られなかった。
しかもその男は供述の中で「殺される」とおびえていたという。これは稲川会からの報復を恐れてというよりも、2度の失敗に対する内部からの責任追及を恐れてのことではないか、というその筋からの情報もある。
仮に、抗争の可能性があるなら、警察は早急にガサ入れをすべきである。抗争直前となれば、組事務所から拳銃が見つかるのは明らか。一気に組を壊滅させることも不可能ではないからだ。だが警察は、抗争の確信を得たときには絶対にそれをしない。まったく動かないだろう。ガサ入れの際に自分が撃たれるのが怖いのだ。これはいわば警察の鉄則。警察は国民に被害が出ることよりも、自分たちの命を優先する。 実に人権感覚の行き届いた組織だ(笑)。逆にいえば、事務所に張り付いたりしているということは、抗争の連鎖はないと見ている証拠でもある。
まあ、警察など、しょせんその程度だが、今回の件でヤクザが何より恐れているのは暴対法の強化・改正である。抗争が起きた場合、その組織の長の身柄拘束まで可能になるのではないかということだ。ヤクザの原理から考えて、抗争事件は組長の命令によるものだ。だから現場にいなくても、明らかな指示の有無を別にして組長も逮捕できる、いわば共謀罪の強化である。
すでに民事裁判においては、組長の使用者責任として被害者に対する賠償命令が出ているケースが増えている。これが刑事上でも適用される可能性は非常に高い。3人も一般人の巻き添えが出た以上、暴対法強化に反対の世論は出ないだろう。
確かに現在のヤクザは、かつてのように素人には迷惑をかけない、冠婚葬祭の場で血を流さない、などの不文律が崩れ、何でもありの状況である。要はマフィア化だが、この原因は警察と暴対法にあるのだ。 ヤクザは水商売からのミカジメ料やパチンコの景品交換、競馬・競輪のノミ屋などをシノギとしていた。 それを暴対法はすべて奪った。しかも、そうした行為をなくしたわけではない。警察の天下り組織がヤクザに取って代わっただけではないか。
ヤクザとしても生きていかなければならない。警察の網から逃れるためには地下に潜らざるをえなくな った。これが実態なのだ。今回の事件にしても、マフィア化の結果、組員を完全に管理できなくなった弊害の1つなのだろう。先日、ヤクザの構成員と準構成員数が7年連続で増えたとの警察発表があった。これも取締り強化の援護射撃だと俺は見ている。 結局、得するのは警察だけだ。ヤクザはもちろんのこと、一般国民にとってもいいことは何もない。
元組長襲撃で4人死亡 1月25目深夜、群馬県前橋市のスナックで2人組が銃を乱射。一般 人3人と元ヤクザ組員1人が死亡。 28日、実行犯を名乗る男が出頭。狙われた稲川会系元組長はO1年の住吉会最高幹部射殺に絡んでいたとされ、報復との見方も。