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安全な「食」へ放射線利用
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町 末男 日本原子力産業会議常務理事
元日本原子力研究所高崎研究所長
2000年6月まで国際原子力機関事務次長 69歳
2001年9月11日のテロの後、一種の生物兵器である炭疽菌が郵便物に入れられて送られ騒ぎとなった。アメリカでは、対策として危険のある郵便物を電子線で照射し、炭疽菌を殺す方法を採った。見事に成功し、その後事故は起きていない。このように放射線は容易に有害細菌をなくすことが出来る。医療用具、例えば注射筒、注射針、カテーテル、輸液セットなどは多くの国で半数が放射線で滅菌、衛生化されている。
驚く数字だが、アメリカでは、年間5000人が食中毒で死亡し、その何倍もの数の人が治療を受ける。主な原因は生肉を汚染している病原性大腸菌 O-157、サルモネラ、リステリア、カンピロバクターなどの細菌である。これらの菌は放射線に弱く、３キロ・グレイ以下の照射で検出できない程度に減らすことが出来る。エチレンオキサイドなどのガスによる殺菌は発ガン性物質の生成やガスの残留の問題があり、許可されていない。照射食品の安産性については、各国の膨大な研究を基に、WHO(世界保健機構)、IAEA(国際原子力機関)およびFAO(食糧農業機関)が専門家による十分な検討・審議の結果、1980年に１メガ・ラド(10キロ・グレイ)以下の放射線を照射した食品について安全であるとの共同報告書を提出した。これはコーデックス(国際食品規格)に採用されている。このようなことから、アメリカのFDA(食品医薬品局)は食中毒を防ぐために肉の照射を許可し、二年前程から電子線で殺菌した食中毒の危険性がないハンバーガー用の挽肉が売られている。
世界を見ると、三十以上の国で照射食品が生産され、五十二カ国で利用が許可されている。欧州連合(EU)では、照射した香辛料、香草、ハーブ、乾燥野菜の利用が許可され流通している。フランス、ベルギー、オランダなどは国ごとに鶏肉、冷凍エビ、冷凍のフロッグレッグ(カエルの足)などを照射殺菌し、より安全な食品として販売している。とくにフランスは十三年あまり前から世界に先駆けて鶏肉を照射し、サルモネラ菌を除去してソーセージ用に利用している。アメリカでは、地中海ミバエの卵を除去するために、オレンジ、パパイヤ、マンゴーなどを照射し害虫の本土への進入を防いでいる。さらに医療では、オランダ、イギリス、アメリカ等で病気のために免疫力の低下している患者の感染症を防ぐために、照射で無菌化した病院食を用いて、患者を保護している。また、アメリカでは宇宙飛行士がシャトルの中で利用する食事も放射線で無菌化されている。
香辛料は多くの場合、細菌で汚染されているために、殺菌処理が必要である。日本では水蒸気による高温殺菌を行っているが、香辛料の命ともいえる香りの成分がとんでしまう。ガスによる殺菌は残留の問題があり、許可されていない。欧米をはじめ多くの国では、照射で無菌化した香辛料が広く使用されており、年間の世界の生産量は七万トンに達している。主要国で照射香辛料の使用が許可されていないのは日本だけである。
日本ではジャガイモの照射による「芽止め」を世界で最初に商業化したが、食品照射に対する理解が進まないなどの理由で、その後三十年近く、新しい利用がない。照射による「芽止め」はニンニク、タマネギ、コンニャクなどにも応用でき、ニンニクの芽止めはいくつかの国で保存期間を延ばし価格を安定させるために薬剤に代わって利用されている。
このように、照射食品の安産性は国際的に確認され、グローバルスタンダードになっている。我が国もより安全で楽しい食生活、損失の少ない流通、効果的な殺菌・殺虫法に役立つ照射法を正しく理解し、適切に利用していくべきである。
・・・絶句！
題名には必ず「阿修羅さんへ」と記述してください。