現在地 HOME > 掲示板 > 国家破産23 > 695.html ★阿修羅♪ |
|
★ 市場惑わす"安定化"策――日経金融スクランブル
17日の東京株式市場では日経平均株価が反落した。米英スペインの3カ国首脳会談を受けて対イラク攻撃開始が間近に迫ったとの見方が広まり、投資家が見送り姿勢を強めた。銀行株や証券株の下落が目立ち、日経平均は再びバブル後安値に接近した。
株価下落を受けて金融庁は13日に六項目の市場安定化策を打ち出したが、その評判は芳しくない。「策の中心にあるのは売りを規制しようという発想だが、売り手を抑え込んでも買い手が出てこない限り株価は上がらない」(HSBC証券のガリー・エバンス・チーフストラテジスト)との見方が大半を占めている。
実際、対策の内容はそのほとんどが規制の強化だ。証券会社の自己売買に対して限度枠設定などのリスク管理ルール導入を検討しているほか、機関投資家による貸株運用についても自主ルールの策定を要請する。 特に金融庁が「適正な価格形成確保の必要がある」と指摘したのが引値保証取引。機関投資家が証券会社との間で終値で売買することを契約し、取引時間の終了後に立会外で約定する仕組みだ。証券会社の自己売買部門があらかじめ売買をしておき、大引け後に機関投資家の注文を受ける。
問題は、証券会社が意図的に終値を操作して大きな利益を上げようとする可能性があることだ。実際の取引価格と終値との間に差があれば、その分が証券会社の利益になり得る。日興ソロモン・スミス・バーニー証券は株価指数連動型上場投資信託(ETF)の設定で不正取引をしたとされるが、その際に使われたのもこの取引だ。
金融庁は引値保証取引が「相場操縦的な行為につながりやすい」と指摘しており、日興ソロモンの不正取引が明らかになった段階から「不正取引になることを恐れて証券会社が引値保証取引を受けることを避けている」(新光証券の瀬川剛エクイティストラテジスト)。今回の規制に伴って、一段と取引を手控える動きが広がる可能性はある。
だが、六項目の対策の中には逆に大引け間際の取引規制を外す措置も含まれた。自社株買い規制の緩和がそれで、金融庁はこれまで取引終了時刻の直前30分以内に禁止していた買い付けについて、年度内にも制限を外す方針。規制は相場操縦を未然に防止するためだったが、今回は「国際情勢の緊迫化とそれに伴う市場の不安定化が進んでいるという臨時の状況を踏まえた対応」(市場課)という。
自社株買いの規制緩和は同時テロの時に米国も実施しており、今回の金融庁の対応はそれに準じた判断と言える。しかし、一方で規制を強めつつ他方で規制を外すことについては、市場関係者の間から「売り崩しはダメだが株価防衛的な自社株買いについては目をつぶるというサインではないか」との指摘も出ている。証券会社が自己売買で行う引値保証取引と、上場企業が自社株について行う買い付けを同列に論じられないとの意見もあるが、「規制のあり方が恣意(しい)的だと見られても仕方ない」(準大手証券)との批判は多い。
しかも、自社株買いの規制緩和は3カ月間の暫定措置。証券会社の現場では金融庁の対策について、売買の少ない銘柄は規制緩和でより買いやすくなると評価する向きもあるのだが、「3カ月しか続かないのではその効果も限定的」(メリルリンチ日本証券の菊地正俊シニアストラテジスト)。あくまで市場の不安定さが収まるまでの臨時の措置であり、規制緩和自体を目的とした対策ではないのだ。
「株価を上げるのなら景気回復を図るのが本筋」(東海東京調査センターの隅谷俊夫シニアストラテジスト)で、金融庁にできることは規制に手を加えるくらいしかないのは事実だろう。だが、無原則な規制の変更は投資家を惑わし、自己判断による投資行動を阻害する恐れがある。市場関係者からは「日本版ビッグバン(金融大改革)の高まいな理念はどこへ行ってしまったのか」(瀬川氏)との嘆きの声も聞こえてきた。(水口博毅)
★市場再生へ「王道策」を――日経金融スクランブル
13日の東京株式市場では日経平均株価が反落し、バブル後安値(7862円)に再接近した。朝方の8000円台回復を演出した前日の米国株高を好感した買いは長続きせず、終わってみれば安値引け。事前に伝えられた金融庁の市場対策への失望に加え、イラク情勢などに対する根強い警戒が相場の足を引っ張った。
20年ぶりという歴史的安値圏に沈む日本株。1989年末(3万8915円)からおよそ5分の1である8000円割れの水準では値ごろ感からの買いが入ってよさそうなものだが、そんな気配はうかがえない。機関投資家が押し目買いに動かないのは地政学リスクを恐れてのことだけではないらしい。
株式の配当利回りが長期金利を上回る「逆利回り革命」が常態化。東京証券取引所第一部上場銘柄の予想配当利回りは加重平均ベースで1.2%台と、10年物国債の利回り(0.7%台)を大きく上回っている。利回り重視の観点からは株式投資の魅力が増しているようにもみえるが、大和住銀投信投資顧問の窪田真之ファンド・マネージャーは「決して魅力的とはいえない」と言い切る。
窪田氏がそう主張するのは株式を「償還期限がない利回り商品」と考えているため。超長期国債と比較すれば、株式の利回りは必ずしも高くないという。例えば、20年物国債の利回りは1.1%台と株式とそん色ないし、30年物国債の利回りは1.3%台とわずかながら株式を上回る。利回りの優位性に加え、「日本経済の長期的な低迷を見越す」(みずほ証券の上野泰也チーフマーケットエコノミスト)形で、機関投資家は株式を敬遠し、投資資金を超長期債に振り向けている。
それは小泉純一郎政権下でのデフレ脱却や経済成長への期待のなさの裏返しでもある。小泉政権の経済無策への風当たりは強まるばかりで、兜町あたりでは退陣論すら出ている。小泉首相自身は「王道で行く」と発言しているが、金融庁が13日に正式発表した市場対策は貸株をしている機関投資家へのけん制など、需給対策の域を出ない内容。市場の評価は芳しくない。
市場が求めているのは期末ごとに株安と金融危機の不安が繰り返される負の連鎖を断つ方策だ。需給対策に過ぎない規制強化や金融システム不安を遠ざけるための問題先送り策ではない。期末の株安によって金融システムが不安定となり、金融当局があわてて空売りの規制強化に乗り出す光景にはもううんざりだ。
株安による金融危機を未然に防ぐ緊急避難措置はやむを得ないが、それはそれ。株価が歴史的な安値を付けた今を、基本に立ち戻って資本市場の本格的な再生に動くチャンスととらえるべきだろう。
例えば金融行政のあり方だ。自民党の財務金融部会長を務める塩崎恭久代議士は「株安の背景には金融当局への信頼の欠如がある」と指摘する。減損会計の導入延期などは、日本企業の国際的な信認低下につながりかねず、市場の失望を招いた。
塩崎氏は金融庁が抱える構造問題として金融行政と資本市場との利益相反を問題視する。「資本市場規制の究極の目的である投資家保護と、預金者や保険契約者の保護とは目的が異なる」からだ。
金融行政上は預金者の動揺を考慮して減損会計導入には慎重になるが、投資家のためには財務の情報開示が重要になる。塩崎氏は金融庁から証券取引等監視委員会を独立させ、企画、立案、処分など一元的な市場監督権限を持たせる米証券取引委員会(SEC)並みの「日本版SEC」の創設を提唱しているが、市場の不信を払しょくするためにも「いまこそ実現すべきだ」と強調する。
市場では期末の恒例行事である金融システム不安のせいで、「本来的な市場活性化策が脇に追いやられてしまう」(野村総研の大崎貞和資本市場研究室長)との不満が強い。小泉首相が「王道」にこだわるというなら、本格的な市場再生策が出てくるのを期待せずにはいられない。(佐藤一之)