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【景況判断】現状(3ヵ月前比):変わらず 先行き(3ヵ月後):やや悪い 長期:低下 10年物新発国債0.65% 【円 相 場】緩やかなドル安の進行112.5円/1ドル 長短金利、円相場、株価は3ヵ月後(03年6月末)の予測値 1.景気見通し:「1−3月の景気リバウンドは一時的」 景気減速に歯止めがかかったような指標が出ている。1月の鉱工業生産指数の前月比1. 2.金融環境:「日経平均株価は割安か」 日経平均株価が20年ぶりの安値を更新した。それでも日経平均株価の株価収益率(PER) は27倍であって、欧米の株価15、16倍、そして、香港とシンガポールの12倍、台湾の20 倍と比較して日本の株価は割高である。2003年度の最終利益見通し(3月8日の日経新聞社 見通し)が実現しても、PERは19倍に下がる程度である。株価は将来の利益を織込むから2 003年度業績が唯一株価の基準であるわけではないが、インデックスとしての業績見通し が長期にわたって増益を続けていくことは、マクロベースからは1で述べたように期待で きない。 3.注目点:「強まる米国のデフレ化」 米国の2月の雇用者が30万人と急減した。1、2月の平均値は6万人減である。実質成長 率に換算すると、0.5%のプラス成長に相当する(オークンの法則)。米連銀の2003年経済 見通しは3.25〜3.5%であるから、大きく下方にぶれている。1%以下の成長率だと翌年 の米消費者物価は1%ポイント強上昇率が鈍化する(修正フィリップス曲線)。 <水野和夫氏略歴>
三菱証券・チーフエコノミスト 水野和夫氏
GDP予測:02年度1.6%(1.1%) 03年度0.2%(0.1%)
【金 利】短期:横這い TIBOR3ヵ月 0.08%
【株 価】株安 日経平均7,500円
GDP予測値は実質GDP成長率、前年比%。カッコ内は直近10回分の平均値
5%増(市場予想1.0%増)や有効求人倍率0.6倍(市場予想0.58倍)に代表されるように、市 場予想を上回る良い数字が2月末から3月初めにかけて出始めた。また、1月の景気動向指 数が一致指数で88%と景気の分岐点50を3ヵ月ぶりに超えた。しかし、ヒストリカルDIは 未だ2002年8月が景気の山で、現在景気後退中であることを示唆している。以下に述べる ように、先行き輸出や個人消費支出も減速が予想されることから、景気後退が長期化す る可能性が高い。
2003年度の景気の鍵を握るのは相変わらず輸出であり、つぎは個人消費の行方である 。10−12月期の輸出がアジア向けと米国向けが好調で、再びプラスに転じたが、持続性 は疑わしい(米国経済については3の注目点参照)。韓国を中心にアジア経済は家計が借入 を急増させて景気回復を維持しているが、その韓国も昨年末から家計部門が将来につい て慎重な見通しをもつようになった。
個人消費に関しては、雇用者所得が2%前後で減少する中で、2002年度の名目個人消費 支出は概ね横ばいを維持してきた。個人貯蓄率が低下し、消費性向を3ポイントほど引き 上げた結果である。しかし、同時に各種アンケート調査で個人は将来について不安を高 めているから、2003年度も消費性向をさらに引き上げるのは困難であろう。労働分配率 は低下するであろうから、所得2%減で名目消費支出も2%減となり、実質消費支出は横 ばいか若干のマイナスとなる可能性が高い(2002年度の実質消費支出は1.6%増見込み)。
先進国の株価収益率の収斂はグローバル化の必然である。2000年以降OECDの景気先行 指標が日米欧間ですでに収斂しはじめていることから、景気循環がシンクロナイズし、 実質経済成長率も収斂しよう。物価はマネーサプライの伸び率如何にかかわらず現在2% に収斂し始めている。今後、米国のデフレ化(3の注目点参照)に伴って、先進国の物価は マイナスで収斂する可能性が高い。すでに実質長期金利は2000年になって、スイスを加 えたG7諸国の長期実質金利は戦後で最も収斂している。長期実質金利に加えて物価が収 斂すれば、概ね先進国の名目長期金利も収斂する。その場合、日本のデフレが世界デフ レの前兆であったように、日本の超低金利に先進国の長期金利が近づくことになろう。
もちろん、米国の10年国債利回りが1%割れになるというのではなく、米国も2%前後 まで低下し、来年には1941年の1.85%に接近することが予想されるということである。1 6世紀末の歴史的転換期にヨーロッパ全体の金利が歴史的超低水準を記録したことが21世 紀初頭に起きる可能性が高い。名目長期金利が収斂すれば、各国特有のリスクを別とし て各国の株式益利回り(PERの逆数)は収斂する。日本で配当利回りが長期金利を昨年9月 以来45年ぶりに逆転しているのは、世界経済のデフレ化で先進国の代表的企業の株式が 債券化しているからである。米国の1870年から1958年まで、やはり、配当利回りが米国 債利回りを5割上回っていた。現在の日本にあてはめれば、日本固有のリスクゼロでよう やく正当化される益利回りである。21世紀の大量生産システムに最も拘泥しているのが 日本であるから、リスクは他国や当時の米国に比べて高いはずである。やはり、日本の 株価は割高である。
2002年1.6
%の消費者物価上昇率は2003年に1.5%程度、来年にはゼロ〜0.5%程度に鈍化すること が予想されよう。事実上のデフレである。
米連銀は日本の90年代の教訓を日銀の金融緩和が遅れたことを指摘しているから(この 点について、著者はそうではないと考えている)、デフレ懸念が台頭する前に積極的に利 下げに踏み切ることが予想されよう。今年末にはFFレートが0.5%へと、事実上のゼロ金 利となって、長期国債の買い切りオペに踏み切っている可能性が高い。米国の長期金利 が大幅に低下することになろう。
おそらく、米国の長期金利が大きく低下する前に今以上にドル安が進行していること になろう。バスケット通貨で測ったドル実効レートは割高すぎるのであって、米株価が 上昇し続けているうちは巨額の米経常収支はファイナンスの面から何ら支障はなかった 。ところが、米国も分配率を企業に厚くし、所得が増えない中で過大な借金を抱えてい る家計は、消費を抑制することになろう。米国企業の業績も高い伸びが期待できない。 米国のバブル調整は株安とドル安を伴い、米経常収支赤字が縮小に向かう。リスクはイ ラク戦争で米政府が巨額の財政赤字がさらに拡大することである。
1953年生。77年早稲田大学政経学部卒、80年同大学院経済学研究科修士課程修了。八千 代証券(国際証券、現三菱証券)入社。マクロ経済の調査・分析を担当、98年金融市場調査 部長、2002年9月から現職。主な著書・論文「所得バブル崩壊」(ビジネス社、2002年4月)、 「100年デフレ」(日本経済新聞社、2003年3月)、日経ビジネス「景気読み筋」コラム担当。 エコノミストランキング11位(2002年3月25日付日経金融新聞)。日経公社債情報エコノミ スト部門6位。