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第3部欧米にも火種(上)UAL破たん欧州に飛び火(脱資産デフレ)
大西洋超えリスク連鎖
デリバティブで保険危機?
情報技術(IT)バブル崩壊に端を発した世界的な景気悪化と株安が、欧米金融を揺さぶり始めた。しかもデリバティブを通じ、米主要企業倒産がたちまち欧州金融に波及するといった「瞬間的連鎖経済」が生まれている。海外の変調は脱・資産デフレに取り組む日本経済にも対岸の火事とはいえない不気味さをはらんできた。(「資産デフレ」取材班)
「UAL倒産が欧州保険会社に連鎖するのでは」――ユナイテッド航空の持ち株会社UAL倒産を受け、欧州では保険会社の経営不安が再び取りざたされ始めた。今年半ばの保険株急落の再来懸念だ。
巨額損失観測
米銀が持つ米企業向け債務をクレジット(信用)デリバティブを通じて欧州の保険会社が肩代わり――。こんな観測から、米企業の破たんが欧州市場を直撃する場面が増えている。
実際、ハイテク金融商品を装いながら実質は債務保証といえる信用デリバティブへの保険会社の関与は濃厚だ。英銀行協会(BBA)によれば、保険会社は同取引市場の「保証提供」で三三%を占め、そこから「保証受取」を差し引いたベースで最大シェア。金額で五千三百億ドル(六十六兆円)分もの信用リスクを負う。
すでに、保険会社が企業デフォルトの「掃きだめ」になっているのではないかと思える「事実」が表面化し始めた。
▼仏再保険大手スコールは信用デリバティブの履行に備えた引当金を積み、今年一―九月期の最終赤字が約四億ユーロと前年比倍増した。
▼米保険大手チャブは信用デリバティブの評価損が今年七―九月期の一株利益を〇・一五ドル減少させる要因になった。
▼米金融保険大手フィナンシャル・セキュリティー・アシュアランス(FSA)の今年七―九月期は、信用デリバティブの損益が前年同期の百万ドルの黒字から三千七百万ドルの赤字に。
高まる不安のなか、焦点企業のひとつ、独ミュンヘン再保険が今月初め反論に打って出た。ロンドンで開かれた保険セミナーで同保険のクレメント・ブース取締役は「銀行の抱える信用リスクを大量に肩代わりしているなんて考えられない」と強い調子で訴えた。
不信募らす当局
しかし、当局の不信感は止まらない。各国保険監督当局の連合体、保険監督者国際機構(IAIS)は静観できず、信用デリバティブのリスクが集中しているとされる再保険会社に取引状況を開示させる国際基準作りを開始した。
米国当局は取引仲介を担う米投資銀行への聴き取り検査をひそかに開始。経済協力開発機構(OECD)では今秋、同取引による巨額損失がでているとささやかれる再保険会社に関し、各国間での情報交換を決めた。
IAISの河合美宏次期事務局長は「世界的な取引の全体像をきちんと把握しないと」と開示効果の狙いを語る。
洋上の火薬庫
だが、リスクの火種は保険にとどまりそうにない。一部の銀行アナリストは「英領バミューダが火薬庫かもしれない」と指摘し始めた。銀行がバミューダの保険子会社を国際決済銀行(BIS)の自己資本比率規制の尻抜けに利用している可能性があるという。
からくりはこうだ。(1)銀行が会社設立の容易なバミューダに保険子会社を設置(2)銀行は信用デリバティブで自行の信用リスクを保険子会社に転嫁(3)銀行のリスク資産が圧縮される計算になりBIS基準は改善(4)保険支払い余力は信用デリバティブと無関係なので、保険子会社の信用力も高いまま――。
BIS基準が銀行・保険にまたがって十分に網をかけていない点を突いた裏技だ。平時なら単なる自己資本稼ぎ。それがいまは「バミューダにデリバティブを使って焦げ付きリスクを飛ばしているのでは」という不信感を生んでいる。
現実にバミューダに保険会社を持つ銀行は少なくない。例えば、独ドレスナー銀行。昨年十二月にバミューダに設立したブリッジ再保険を通じ、信用デリバティブを売買している。ドレスナー銀の担当者アラリク・ヴァンドーン氏は「ブリッジ再保険は信用リスクの仲介に徹しており、銀行の連結対象にも加えている」と取引の公正さを強調するが、実態が見えにくいだけに市場は疑心暗鬼になり、ドイツ株全体の株価急落につながった。
米ニューヨーク市。米大手銀JPモルガン・チェースが入るビルの九階。証券子会社の信用デリバティブの仲介取引は膨らみ、トレーディングルームは熱気に包まれている。信用デリバティブの市場規模は取引の不透明さをはらみながらも、いまや約二兆ドルと五年間で十倍強に膨れ上がった。
米ウォール・ストリート・ジャーナル(WSJ)紙は「地球最後の日と再保険」と題した社説で、再保険業界とともに欧州で地球最後の日(信用システム危機)シナリオが取りざたされていると指摘した。
米国で企業の信用力が雪崩をうって低下、それが欧州の再保険会社を揺さぶっている。デリバティブが絡むと、リスクが世界のどこに飛び火するかわからない。不気味なグローバリズムが拡散し始めている。