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「ここへ来て、金融庁に対する竹中平蔵経財・金融担当大臣の指導力は、ほとんどゼロ近くまで低下しているのが実情だ。高木祥吉長官以下金融庁事務方は、竹中大臣に対して事実上の“無視”を決め込んでいると言っていいだろう−−」
金融庁幹部がこう言ってみせる。そしてこう続ける。「はっきり言って金融庁事務方からは竹中大臣に対して正確な情報は上がっていない。もっと具体的に言うならば、金融庁にとって都合よく加工された、しかも国会答弁用の必要最小限の情報しか上げられていないのです」(前述の金融庁幹部)
この“竹中パッシング(竹中無視)”とでも言うべき状況は、高木長官以下、藤原隆総務企画局長、佐藤隆文検査局長、五味廣文監督局長ら金融庁首脳に共通したスタンスだ。
「彼らとしては『竹中大臣の任期は短ければ今年4月まで。長くても自民党総裁選のある今年9月まで』と読んでいるし、それが金融庁事務方の共通認識だ。そして竹中大臣の場合、いったん担当大臣を辞めてしまったなら、単なる私人になってしまう人だ。そんな竹中大臣とは心中できない、というのが彼らの本音なのだ」(金融庁幹部)
そしてさらに看過できないのは彼ら−−高木長官以下三局長−−が、単なる“竹中パッシング”にとどまらず、徹底したサボタージュ作戦に打って出ているという点だ。
昨年12月27日、金融庁は「金融再生プログラム」で示された検討課題について議論を進め、一定の指針を導き出すために、首相等の諮問機関である金融審議会の第二部会の下に4つのワーキンググループ(WG)を設置した。
「この4のWGでは、繰延税金資産の自己資本比率への算入上限、新しい公的資金制度、リレーションシップバンキング(地域銀行)のあり方などについて議論が進められています。この中で注目を集めつつある項目は、“新しい公的資金制度”についてなのです−−」(別の金融庁幹部)
現在、経営危機状態に陥った銀行に対する公的資金投入については、預金保険法102条に規定されている方法しかない。
この規定では、内閣総理大臣が金融危機対応会議を召集し、その決議を経て金融危機であることの“認定”を行うことと銀行サイドからの“申請”があることを公的資金投入を実施する上での要件として定められている。
「しかしこうした手続きを一つ一つ踏んでいたのでは、現実の金融危機に対応していくためには、あまりにも迅速性に欠くという指摘がかねてからあったのです。このため、従来の制度の欠陥を補うために新たな制度を創設する必要があるかどうかを、WGで議論しようということになったのです」(金融庁幹部)
金融庁サイドとしては当初、今年1月から議論をスタートさせ、6〜7月ぐらいを目途に一定の結論を出すというスケジュール観で臨んでいたという。
「ところが竹中大臣から、『今の危機的状況を考えたら、6月、7月では遅い。年度内−つまり3月末までに結論を出して欲しい』という指示が金融庁事務方にあったのです。しかし高木長官は、『それは無理です』と言って断ったというのです」(金融庁幹部)
竹中大臣の無為無策ぶりについては当コラムで何度も指摘してきたところだが、この金融庁のどうしようもなさは、まさに“亡国の徒”と呼ぶにふさわしいと指摘しておこう。
2003/3/13