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日銀総裁の5年の任期が3月19日に切れる。国会の任命承認期間が1ヶ月であることを考えれば、小泉首相は2月20日までに新総裁と副総裁2人を任命するとみられる。もし首相が本気でデフレを終わらせるつもりなら、デフレ・ファイターを任命すべきである。
小泉首相は日本をデフレのわなから脱却させるために、直ちに3つの事をしなくてはいけない。
第一に、金利引下げというオーソドックスな金融政策が限界にあるのだから、非伝統的金融政策の価値を日銀に対して納得させなくてはならない。デフレは金融緩和によってのみ治癒できる。同時に首相はインフレ・ターゲット政策の採用を日銀に説得しなくてはいけない。
第二に、財政赤字の拡大を要求する動きに首相は抵抗しなくてはいけない。公的債務残高のGDP比率はすでに140%である。財政赤字をこれ以上拡大せずに総需要を刺激するために歳出の内訳、各種の税のウェイトを改革しなくてはいけない。
第三に、不良債権問題は一度できっぱりと解決されなければならない。事実上、経営破綻しているゾンビ企業は整理するべきだし、弱い銀行は不良資産を処分するために、自己資本増強のための公的資金を注入する前に国有化すべきである。
大切なのはこれらのデフレ政策を組み合わせて、実行することだ。マイルドなインフレを取り戻して潜在成長力を回復するために、日本は3つのデフレ政策を総合的に実施する必要がある。仮に構造改革が緩和的な金融政策なしに実行されたら、デフレは一段と深刻化するだろう。総合的なデフレ政策を実行していくには、日銀、財務省、金融庁三者間の協調がぜひとも必要だ。小泉氏のみがそのような三者間協調を保証しうるのである。
今、欠けているのは金融政策の変更である。現在の速水優総裁下で、日銀はデフレ対策としての金融政策の有効性に懐疑的であったし、インフレ・ターゲティングの導入に反対してきた。
日銀のエコノミストはかつて、デフレは安価な輸入と技術革新を反映したもので、デフレは良いことだとさえ断言した。最近では日銀の政策策定者は、デフレは構造的な問題であるから、日銀が政府国債の買い増しや上場株式投信の購入を行っても何ら効果がないと論じている。速水総裁も、世界中の主要な経済学者の意見と矛盾することに、インフレ・ターゲティングを通じた金融緩和政策を“無謀なギャンブル”と表現した。
金融政策を変更するためには、デフレとの闘いを言明する中央銀行家が日銀の3つの最高ポストに指名されねばならない。日銀金融政策委員会は9名の理事から成り、総裁1人と副総裁2人が交替しても、政策変更に必要な多数を確保するにはあと2人以上の理事の賛成が必要である。したがって、小泉首相は、過去の日銀の政策の誤りを認め、デフレを終息させる強いシグナルを送る人物を任命しなければならない。
首相は金融政策の有益なフレームワークとして、インフレ・ターゲティングを志向すべきである。2年以内に1〜3%の消費者物価上昇率といったような合理的な目標を設定するために新生日銀と協力すべきである。
日銀内部では急激な金融政策変更への抵抗は根強い。速水氏と日銀スタッフの積極的なロビー活動のおかげで、政治家は名目金利がゼロまで下がれば通常の金融政策は機能しない、そして非伝統的な金融政策の下でのインフレ・ターゲティングはハイパーインフレへの切符である、と信じている。
皮肉なことにはこうした政治家は速水氏の論理をデフレ脱却の方策としての公共事業を促進するために利用している。巨額の公的債務残高もGDP比7%の財政赤字も彼らにとっては関心事ではない。いまや日銀におけるインフレ・ファイター、いやデフレ推進派と議会の財政拡大派の非神聖同盟が出現しつつある。
小泉氏はこの非神聖同盟と対決しなくてはいけない。1つの妥協策は次期日銀総裁の任期を分割することだろう。最初の2年半は、大胆なデフレ・ファイターを任命する。その時点で、仮にインフレがコントロール不能となる脅威にさらされれば、保守的な反インフレのタカ派を任命すればよい。
今回は、今後5年の間に、小泉首相が金融政策に影響力を行使しうる最後のチャンスであり、彼は影響力を行使しなければならない。デフレと赤字ファイナンスがあと5年続けば、公的債務残高は日本をデフォルトの淵に追い込むGDPの200%に達するだろう。
(英フィナンシャル・タイムズ2月9日、伊藤隆敏東大教授・前財務省副財務官投稿)