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世界経済はデフレの波にさらされており、特に日本と中国の物価の低下が顕著である。しかし、日本の景気低迷が長引いているのとは対照的に、中国は比較的高成長が続いている。日本のように、デフレ状況では景気も落ち込むことが一般的だが、中国はなぜ例外なのであろうか。
中国におけるデフレの原因を巡って色々な仮説が提示されているが、代表的なものとしては次の六つが挙げられる。
(1)生活不安説。計画経済時代、労働者は終身雇用や医療、住宅、年金などの面において保障されていた。しかし、市場経済に移行してから、人々は常に失業のリスクにさらされるようになり、老後の不安も加わり、それに備えるためには消費を抑え、貯蓄に励まなければならない。
(2)所得分配不平等説。近年の経済成長の果実が必ずしも均等に配分されていない。特に、沿海地域と内陸部、都市部と農村部の間の格差が広がっており、資産階級と無産階級への二極分化も進んでいる。これを反映して、消費が盛り上がりに欠けているのである。
(3)貸し渋り説。中国経済の担い手は従来の国有企業から民営企業にシフトしているにもかかわらず、銀行部門では依然として四大国有銀行による支配が変わっていない。その融資先は依然として国有企業が中心となっており、民間企業が資金難に直面している結果、潜在的な投資機会が実現されていない。当局は民間企業への融資を増やすように指導しているが、銀行が多くの不良債権を抱えていることもあって、貸し渋りの状態が解消されていない。
(4)競争激化説。計画経済では物不足が恒常化し、店に行列がよくできるという現象に象徴されるように売り手市場であった。しかし、市場経済が浸透するにつれて、企業が消費者のニーズに敏感に反応するようになり、物があふれる買い手市場が誕生したのである。
(5)生産性上昇説。中国は改革開放を梃子に工業化が急ピッチで進んでいる。特に、直接投資や委託加工などを通じて、中国は海外の生産・経営の技術を習得している。そして、中でも労働集約型製品において、中国は強い価格競争力を持つに至っている。
(6)労働力過剰説。農村部に多くの余剰労働力を抱えているため、工業部門において生産性が上昇しても賃金上昇にはつながらない。その上、国有企業改革の一環として多くの余剰労働者が解雇され、都市部においても失業率が高まっている。
これらの仮説は、中国のデフレの原因を循環的要因よりも構造的要因に求めるという点において共通している。物価が需給のバランスによって決められる以上、これらの構造要因をさらに需要側と供給側の要因に分けて考えることは有益であろう。図では、前者は需要曲線の左へのシフト、後者は供給曲線の右へのシフトに対応するものである。中国の例に関して言えば、生活不安説、所得分配不平等説、そして貸し渋り説は需要側の要因に当たり、競争激化説、生産性上昇説、そして労働力過剰説は供給側の要因と見なすことができる。
現実には、需要側と供給側双方の要因が同時に進行していることが考えられるが、どちらが大きいかによって景気のパターンが違ってくる。具体的には、前者の影響が大きい場合、生産が物価とともに低下する「悪いデフレ」となり、逆に後者の影響が大きい場合、物価が下がっても生産が増える「良いデフレ」になる。現在の物価と生産の動きから判断して、日本は需要の低迷による「悪いデフレ」の状況にあり、逆に中国は供給能力の拡大による「良いデフレ」の状況にあると考えられる。このように、中国におけるデフレの原因を、需要側ではなく供給側に求めれば、デフレと高成長の同時進行という謎が解けるのである。
図 良いデフレ・悪いデフレ
図:http://www.rieti.go.jp/users/china-tr/jp/ssqs/030221ssqs.htm
2003年2月21日掲載