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株式日記と経済展望:対イラク攻撃はアメリカの凋落の決定的な引き金になる 箭内昇
http://www.asyura.com/2003/hasan23/msg/119.html
投稿者 あっしら 日時 2003 年 3 月 04 日 19:23:08:


2003年3月4日 火曜日

トルコの協力も得られず手詰まりの米国のイラク攻撃

ベトナム戦争のさなかに青春時代を過ごし、ニューヨーク駐在時代に冷戦終結と湾岸戦争を見てきた筆者にとっては、このイラク戦争が90年代後半からはっきりしてきたアメリカ凋落の決定的な引き金になるように思えてならない。

アメリカは同時テロがダメ押しとなって排他的思想を一気に強めた。その結果サラダボウルは冷凍されてひとつの固まりになり、別の物体に変質したように思えてならない。サラダボウルの中のレタスやニンジンは、外見こそ異なるが味は同化したように感じるのだ。

しかし、冷凍サラダボウルから発信されるメッセージはもはやグローバル・スタンダードではなく、単なるエゴイズムである。こうした状況でアメリカがイラク戦争を強行すれば、多様な価値観を包含して新世界を築いてきた輝かしい歴史を自ら葬り去ることになるだろう。世界の尊敬を失った国が、軍事力だけを突出させれば自壊の道をたどることは多くの歴史が証明している。

ケネディを一躍英雄にした62年のキューバ危機事件も、実はアメリカにとって失うものが多かった。欧州諸国との同盟関係に大きなひびが入ったからだ。フランスのドゴール大統領は、キューバ危機をアメリカから単に「知らされた」だけだったことに対して大きな不満をもった。その後ケネディが、同盟国に対してアメリカの防衛コストの肩代わりを要請するにいたり、ドゴールはますます態度を硬化させ、独自の核兵器開発に踏み切り、ついにはNATOからの脱退を表明した。

ドゴールは、さらに63年にイギリスがECへの加盟を希望した際これを拒否した。イギリスはアメリカの「トロイの馬」であり、加盟を認めればECがアメリカに影響されると主張したのである。筆者は、国際世論を無視してイラク攻撃を強行しようとする今のアメリカの姿勢に、こうしたケネディ時代の独善的で好戦的な政策が二重写しに見えてならない。結局アメリカはベトナム戦争に敗れ、疲弊しきった財政と国内の混乱を経て、70年代以降ドル切り下げから三つ子の赤字へと長期凋落の道を歩み始めていった。

今回のイラク攻撃は、仮に軍事的に成功しても外交的にアメリカの力を低下させることは間違いない。筆者はニューヨーク時代に新聞で読んだイスラエル発砲事件を覚えている。湾岸危機のさなかの90年、イスラエル警察隊がパレスチナ22人を射殺した事件だ。国連安保理がイスラエルを非難し、調査団の派遣を決議した。このときイスラエルは調査団の受け入れを拒否したが、アメリカは沈黙した。イラクとイスラエルで国連安保理の決議を使い分ける強引な外交はいつか破綻するはずだ。

アメリカは、制圧後のイラクの支配にも失敗するだろう。民族意識が強烈である上、各国の利権が渦巻く複雑な世界だ。アメリカがイラク戦略に失敗して軍事力で支配できないものがあることを知ったとき、いよいよ金メッキが剥れ落ちて凋落の実態が露呈するだろう。
(ビジネストレンド 箭内昇)

日曜日夜のNHKスペシャルで「アメリカとイラク・蜜月と敵対の20年」を放送していた。アメリカ外交が如何に自分勝手であり、利用する時は利用し、必要が無くなれば簡単に捨て去る、信用ならない外交戦略をもった国であるかをあらわしている。しかしこれが外交のグローバルスタンダードであり、善悪とは無関係のことである。この常識にたてば非武装中立という日本の外交戦略がいかに危険な政策であるかがわかるはずだ。

この50年間、日本はアメリカと同盟関係にあるが、たまたまこの期間は利害関係が一致していただけだ。アメリカはその必要が無くなればドライに関係を断ち切り、敵対してくるだろう。経済関係だけに限れば1985年のプラザ合意で、日本経済に対する弱体化工作を仕掛けてきた。日本政府はつい最近までその事に気付こうとしなかった。私自身1997年のアジア金融危機までその事に気がつかなかった。

気がついたときはもう手遅れで、日本の金融機関や流通などの企業が、米系の資本によって買収された。「それのどこが悪いのか」とアメリカ・グローバリストの手先は言ってくるが、一度そのような企業で働いて見れば、その弊害はいやというほど思い知らされる。資本の論理を振りかざし、豊かな者はますます栄え、貧しきものは一生過重労働でこき使われる社会なのだ。

そのことにより日本の伝統文化はずたずたに破壊され、アメリカに搾取される体制にしようとしている。その利益にあづかる一部の人間のみが繁栄し、日本人の大部分はいくら働いても豊かになれない仕組みに気付こうとしないのは、学校教育などで洗脳されてしまっているからである。学者達はアングロサクソンと手を組んで繁栄したといっているが、たかがこの一世紀のことに過ぎない。

アメリカにしても何時中国と手を組んで日本を叩きに来るかわからない。表向きは握手をしていても、裏ではナイフを突きつけ合っているのが外交だ。ヨーロッパは外交の本場だから、どちらに転んでも良いように動き、時代の流れに敏感である。フランスやドイツやロシアがアメリカに反抗しているのも、アメリカ自身が落ち目に来ているのを、シラクやプーチンたちは見抜いている。私もアメリカがもはや落ち目に来ていると感じている。


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