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先日短期金利のマイナス取り引きが成立したことは、何度も投稿していますが。
今後マイナス金利が定着すると、銀行も融資先を必死に探すこととなる。
以下クイック
1月下旬のある日、欧州のある外銀、資金部デスクの電話が鳴った。電話の主はやはり欧州外銀の顔見知りの資金担当者からである。「お宅に金利を付けてお金を出したいがお使いになりますか」というのが電話主からの話の内容である。電話を受けた外銀は早速この申し出を快諾した。世界で初めてといわれるマイナス金利取引が成立した瞬間である。資金の出し手となった欧州外銀は、この他一行とも出合いが成立し、外銀2行に対して、合計150億円をマイナス0.01%の金利で貸し出す契約を結んだ。
戦後、日本の金融機関が短期の資金を融通し合うコール市場では資金の出し手が利息をもらうプラス金利の時代が長く続いて、これが定着していた。しかし、バブルが崩壊以降不良債権の処理が進まず、加えて中国経済の台頭で低価格の製品が流入して物価が下落を速めるなど構造的とも考えられるデフレが加速化しゼロ%金利時代は長期化しそうな状況となってきた。
最近、短期金融市場の中核であるコール市場では取引が極端に縮小し、一時期40兆円台あったコール残高は最近では14兆円から15兆円台に縮小した。市場の縮小は95年に始まった。日銀は95年に公定歩合を2度引き下げて年0.5%にした。そのことによって、市場関係者は低金利の長期化をはっきりと確認し、市場金利の動きも一段と小さくなった。
大幅な利下げにもかかわらず日本経済はさらにデフレ化への道を速めたため、日銀はゼロ%政策を採用した。通貨供給量拡大政策を強めたことでゼロ%金利は定着したものの、日銀から供給された行き場のない資金は金融機関に滞留し、金融機関は余資をただ単に日銀の当座預金口座に積み上げることを繰り返した。
これによって日銀当座預金口座がゴミ捨て場化の状態となった。それでも日銀は金融緩和の名のもとに通貨の供給量を拡大する政策をとり続けていった。日銀は量的緩和策とし、通貨の供給量を拡大して銀行に資金を潤沢に供給し、当座預金を積み上げることで実体経済(企業金融)に資金が流れることを期待した。しかし、実際には大手都銀などは1兆円以上の資金を金利ゼロの日銀当座預金にほとんど毎日、放置したままである。
本来企業活性化のための潤滑油となるべき資金は死に体となって、金融緩和策の役目も果たしていない状態である。緩和による余資の行き場となったのが質への逃避策という名のもとに国債への資金シフトである。
銀行はまず初めに短期の国債を買い、この金利がゼロ%近くまで下がると次には中長期債買いに走り、10年物国債利回りは遂に1%を割り、限りなくゼロ%に近づいた。最近は国債バブルがいわれ、これ以上、日銀が国債買い切りを増やしていくと国債バブルを助長させて将来は新たな不良債権を発生させかねないという懸念が日銀に生まれてきた。こうした懸念が日銀のインフレ目標導入反対論争の大きな原因にもなっているといわれている。
現状の短期金融市場は取引が縮小し、銀行同士の資金繰りを調整する機能を失って、コール市場は死に体となっている。私は常々金利の存在しない金融市場なんて資本主義の経済ではないと申し上げている。短期金融市場は単に資金不足の銀行が余剰の銀行から資金を調達するだけの場ではない。銀行はそれぞれの金利予測に基づいて資金を運用したり調達していた。予測が当たれば利益が出て、外れれば損をするという一種の投機の場である。
これこそ本当の資本主義の経済である。ある外銀の資金関係者が投機のない市場はいつかなくなるといっていたが、現状コール市場は金利が動かず、投機的動きはなくなっている。
日銀がゼロ%金利政策を続けている結果、現状市場参加者の間では金利がないことが当たり前というアラブ的な考えになっている。しかし最近は資本主義経済の中ではそれぞれが独自の金利観を持つことが健全であるという識者が多くなってきた。
このところ市場ではとにかく金利が動く市場を作ろうではないかという取り組みが強まっている。1月24日に利息をもらうのでなく、利息を払ってお金を貸す「マイナス金利」の取引が成立した。これもそうした市場の流れを表わしているものである。このマイナス金利は世界で初めての取引で、金融市場にとって画期的な出来事であるといえよう。
東京短資の柳田紘一社長は「日本のコール市場は遂にアラブを超えた」と興奮気味に語っておられたがまさしく世界初めての出来事であるだけに画期的であるといえよう。「アラブを超えた」とはどういうことかというと、イスラム世界では金利を付けてはいけない、という教えがあるので、マイナス金利の取引が発生した日本は、その観点からアラブを超えたといえるのではないかということのようである。
昨年後半、金融関係者のある会合で現状のコール市場は死に体でとても先行きに希望がもてないという話が出た時にある大手金融機関の方が「押してだめなら引いてみなという言葉があるようにコール市場だって、プラスがだめならマイナスがあるさという前向きな発想で短資会社も日銀も意識を転換すべきではないか」と述べ、さらに「こうした発想の転換は空洞化が進む企業にとっても同じことがいえる」ともいっておられたことが深い印象として残った。マイナス金利のコール取引は外銀同士の取引だけではなく邦銀2行が取り手として加わり、特に大手の都銀も参入した点で意義は大きい。
マイナス金利取引コールの残高は2月中旬頃1兆円近くに達した。欧州系外銀の一資金担当者の発想で世界で今までに例を見ないマイナス金利取引が成立した。この外銀の資金担当者の勇気ある決断に元市場関係者の一人として私は最高の賛辞を贈ると同時に、国内関係者の間から異論が飛び出している中でマイナス金利取引に参入した都銀大手の資金関係者にお礼を申し上げたい。正しくプラスがだめならマイナスがあるじゃないかの世界を築かれた人達である。
昨年12月30日東京三菱銀行資金証券部は「マイナス金利に関する思考実験」というレポートを発表した。マイナス金利は、仮性と真性マイナス金利に区別される。同レポートは日銀当座預金へのマイナス金利の導入は、市場機能の回復に効果を発揮する可能性があり、またゼロ金利に滞留する資金をマイナス金利によって解凍したらどうかという問題提起をしている。当座預金がマイナス金利になれば、余資をゴミ捨て場にすることができず銀行は懸命に資金運用先を探すので市場や企業に資金が流れ出していくので金融緩和の効果が急速に高まるというものである。同レポートによれば、このマイナス金利政策は真性マイナス金利政策のうちの限定的マイナス金利政策であるという。現在、日銀は量的緩和政策を拡大しているものの、効果はいま一つである。これは通貨供給量を拡大してもその資金が企業などに回らず当座預金とか国債に滞留してしまっているからである。政府はインフレ目標導入を日銀に迫るなどデフレは深刻である。その国の経済状態を示す鏡の一つといわれる短期金融市場の金利ゼロの壁を取り払うことも金融緩和策の大きな選択肢になるのではなかろうか、現状マイナス金利取引は期末要因で縮小しているがデフレスパイラル化の日本経済では将来取引は常習化しよう。