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「校庭で街宣してやる。生徒に迷惑かけてもいいんか」
「お前が悪いことしとるのは知ってるぜ」
右翼団体幹部をかたる男が、全国の校長をターゲットに電話で金を要求した恐喝事件。単純な手口にもかかわらず、被害は約二百件、計八千万円にも膨らんだ。スキャンダルの有無にかかわらず、ポケットマネーで解決を図ろうとした校長たち。その背景に、教育現場の「事なかれ主義」はなかったのか。
◆1セット60万円
「うちの団体の別府支部が、あなたを中央本部に推薦しました」。大分県別府市の住宅街にある小学校校長室。事務員が取り次いだ電話で、男は静かに切り出した。校長(60)が、一セット六十万円前後の本の購入を断った瞬間、男の態度は急変した。「けんか売ってるんか」「酒を飲んで悪いことしてるのは知ってるんだ」。暴力団のような口調で迫った。「お断りします」。校長は慌てて電話を切った。
昨年八月以後、同市の小、中学校長に次々に同様の電話があり、校長会が大分県警に相談、捜査が始まった。ある中学校長は「いきなり『来週の予定はどうなってる』と聞かれ、何かを知っているのかと不安になった。手口を知らなかったら、すぐには電話を切れなかった」と打ち明ける。
◆電話一本で現金
男は恐喝容疑で同県警に逮捕された東京都板橋区向原、職業不詳田原顕彦容疑者(49)。調べでは、田原容疑者は、全国の学校を記載した名簿などで手当たり次第に電話。口座に金を振り込むまでしつこく電話をするなどし、百数十万円を出した校長もいる。一度払った校長に、共犯とみられる別の男が「金を出したな。おれにも払え」と電話し、二重取りもしたという。
田原容疑者は三年前にも、奈良県内の校長から現金を脅し取った恐喝容疑で逮捕されたが、猶予つき判決を受けた数カ月後に犯行を再開していた。「電話一本で現金が振り込まれたことが、助長した面も否めない」と県警幹部は言う。
◆圧力に判断ミス
身に覚えのない言いがかりに、なぜ校長らは毅然(きぜん)とした態度を取れなかったのか。
ある中学校長は「年配の校長が狙われやすかったようだ。無事に定年を、という気持ちにつけ込んだのでは」と退職前の校長の心理を分析。元校長は「校長は『聖人君子とみられている』という自意識があり、小さな傷も知られたくないと思いがち」と明かす。
福岡教育大の元兼正浩助教授(教育学)は「予算などで校長の裁量権が強化され、校長が外部と向き合う機会も増えた。しかし、教職経験しかない校長が、校外からの突然の圧力に判断を誤る事例も目立つ」と指摘する。
今回の事件は、一部の校長とはいえ「金で問題を解決する」という安易な姿勢が、新たな被害者を生む「負の連鎖」をつくり出したともいえる。地域と学校との連携が求められるなか、教育現場のトップに立つ校長の資質があらためて問われている。 (大分総局・浅川知子)(西日本新聞)