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イラク情勢が緊迫化し、世界経済への影響が懸念されている。イラクとの戦闘が長期化すれば、原油価格が高騰し、景気の腰折れ懸念が現実化しかねない。株価は大幅下落、為替はドル安・円高に傾いて日本経済を直撃する可能性もある。91年の湾岸戦争を参考に、影響を探った。
◇株価 04年度まで日本 マイナス成長も
湾岸戦争の時は、90年8月2日のイラク軍のクウェート侵攻後、ニューヨーク株式市場のダウ工業株30種平均株価は急落。日経平均株価も3万円台から2カ月で約1万円下落して10月1日には2万221円の安値をつけた。しかし、多国籍軍のイラク攻撃が近づくと上昇に転じ、開戦当日の91年1月17日、多国籍軍が軍事力の差を見せつけると、日経平均は1004円高と急騰。その後も停戦までほぼ一貫して値を上げ、2万7000円台まで回復した。
日興コーディアル証券エクイティマーケティング部の西広市部長は「重要なのは市場の霧が晴れるかどうかだ。不安定要素が取り除かれれば株価は上がる」と語り、短期終結の見通しが立つかどうかが株価上昇の条件という。
一方、湾岸戦争当時とは異なる事情もある。米国ではテロへの懸念があり、日本では北朝鮮問題がある。景気も、日米欧ともに失速気味だ。みずほ証券の上野泰也チーフマーケットエコノミストは「一時的な株価上昇なら、景気回復の決め手にはならない。特に米国経済に対する悲観論が根強い」と指摘する。
最も深刻なのは、戦闘の長期化。消費も冷え込み、世界中で景気が悪化することが考えられ、株価下落は避けられない。大和総研の試算では、攻撃が2カ月程度の中規模戦になれば、日本の03年度の実質GDP(国内総生産)はマイナス0.6%に落ち込み、3カ月以上の長期戦だと04年度までマイナス成長が続く。さらに戦費負担の問題も浮上する。湾岸戦争では総額610億ドルのうち100億ドルを日本が負担した。大和総研の取越達哉シニアエコノミストは「負担戦費を臨時の増税で調達することになると、経済への影響は計り知れない」という。 【斉藤信宏】
◇為替 有事のドル売り テロ以後は定石
対ドル円相場はイラク開戦で円高になるとの見方が大勢だ。東京市場の円相場は昨年12月に1ドル=125円台を付けた後、上昇を続け、2月27日には一時、約6カ月半ぶりに116円台に突入。円高・ドル安の背景として、最近の市場関係者がよく指摘するのが「地政学的リスク」という言葉だ。
この言葉は、イラクなどをめぐる国際情勢の悪化が世界経済を不安定にする恐れを意味する。2月の7カ国財務相・中央銀行総裁会議(G7)でも「地政学的な不確実性が高まっている」と警告。為替市場への影響は、湾岸危機時とは逆にドル安として表れている。
湾岸危機の際、90年11月30日の東京市場は、国連安保理が対イラク武力行使容認決議を採択したことから「有事のドル買い」になり、一時、前日より3円55銭も円安・ドル高の1ドル=133円70銭を付けた。しかし、01年9月の米同時多発テロ以降は、有事が「米国本土攻撃」を意識させ、「有事のドル売り」が定石になった。米国の経常・財政赤字(双子の赤字)が拡大し、円の価値がデフレの影響で高まっていることも、ドル安・円高要因だ。
今回は「戦争が長期化すれば、110円割れも視野に入る」(外資系証券)との見方まである。短期決着ならドル買いとみられるが、米国の双子の赤字など、ドル安要因が付きまとう。円高は輸入物価下落でデフレを悪化させるため、政府・日銀は1〜2月、約1.2兆円の円売り介入を行い、円高阻止に躍起だ。 【吉原宏樹】
◇原油 一気に下降せず 神経質な動きか
原油価格はイラク情勢が一段と緊迫化したことから先週、米先物市場で一時1バレル=40ドル目前まで高騰した。01年1月開戦の湾岸戦争では、戦争前の10月に最高値を付け、戦争突入後は下落したが、今回は「当時のような動きにはならない」との見方も出ている。
90年7月当時、1バレル=20ドル近辺で推移していた原油はイラクのクウェート侵攻で急上昇。10月には米国の指標価格が1バレル=41ドル超の史上最高値を付けた。その後いったん下落し、開戦で再び一時32ドルまで高騰したが、イラクに対する圧倒的打撃から短期決戦の見通しが高まり一挙に約10ドルも下がった。
今回、米軍などが攻撃を開始した場合、英民間エネルギー研究機関CGESのレオ・ドロラス氏は「当日2ドルほど跳ね上がる可能性があるが、不測の展開にならない限り、43ドルを超えて上昇が続く事態にはならないだろう」とみる。
ただ、クウェートからのイラク軍撤退が目的だった湾岸戦争に比べ、今回米政府はフセイン体制の排除を視野に入れていることから、不透明な要素が多い。さらに、12月以降のベネズエラでのゼネストや厳冬の影響で在庫水準もすでに極めて低い。このためドロラス氏も「湾岸戦争より先が読みにくく、開戦で原油価格が一直線で下降するとは考えづらい」と話す。
OPEC(石油輸出国機構)は11日の総会で、軍事攻撃があった場合、生産枠を一時的に撤廃する緊急措置で合意する見通しだが、生産余力は乏しく、市場は神経質な動きになりそうだ。 【ロンドン福本容子】
[毎日新聞3月1日] ( 2003-03-01-23:40 )