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サードパーティー・ロジスティクス(3PL)サービスが好調のようですね。
鈴木 仕事は増えてきました。最近も、物流コンペで他社に勝ったのに、やる人がいないというケースがありました。優先的に人を回して、何とかカバーしましたが、難しいのは、従来の倉庫業の範ちゅうに入らない仕事が増えてきたこと。仕事のやり方だけでなく、事故の時の責任問題なども議論して取りかからないといけませんね。
3PLの仕事が増えてきた要因は何ですか。
鈴木 ひとつは顧客がサプライチェーン・マネジメント(SCM)指向から、全体の改革に乗り出したこと。その中でロジスティクス改革とその部分をアウトソーシングする傾向が続いていることです。マーケットが広がっていることは確かです。競合他社とのコンペでも以前に比べたら、けっこう勝てるようになりました。
勝てるようになったのは、提案内容が顧客から評価されているからですか。
鈴木 物流改革の提案営業はずいぶんと長くやっていますから、ようやく実績が出てきたという感じです。失敗の数も限りなくあって、その分、ノウハウも蓄積されています。自社で開発したシミュレーション・ソフトも完全ということはありませんが、かなりのレベルにあると思っています。
3PLサービスの強みは何ですか。
鈴木 IT(情報技術)が進歩してくれば、各社とも差別化が難しくなってきます。問題は現場のオペレーションです。いかにいいシステムを作っても、ここに現場という人が介在したときにどうなるかが問われるのです。もともとは倉庫会社ですから、現場作業の効率と品質には自信を持っています。3PLそのものはソフトベンダーやコンサルタントの方々でも提案はできます。しかし、提案通りに現場が動くかとなると、コンピューター通りにはいかないのが普通です。
提案は良いけど、採用してみると、その通りにいかないということを荷主から聞きます。
鈴木 そこが問題です。現場という極めて人間的なところまで考えてやらないと、うまくいくものではありません。顧客から見れば失敗は許されません。テストをしてから、悪い所を直していくようなやり方は、物流には通用しません。失敗はできないのです。物流企業の強みは現場を知っていることです。ここを生かしていくことしかないでしょう。
◆顧客のためにならないコンペは参加せず
現場を知っていること以外の強みは。
鈴木 顧客のためにならないことは提案しないということでしょうか。当たり前に聞こえますが、実際にためにならない提案があるのです。それは顧客の方で、ある程度条件を付けて、コンペをする場合に多く見られます。顧客が付けた条件がすでに本当の改革から外れているケースですね。
そういう場合はどうするのですか。
鈴木 コンペに参加しないか、顧客が了承すれば、条件を無視した独自提案を行います。これがなかなか難しい。先日も最終的には勝ちましたが、独自提案をさせてくれという段階でものすごくエネルギーを使いました。勝てたから良かったけど、不採用ならかなりのコストになっていたでしょう。ただ、当社の倉庫はいっさい使わない提案でしたので、利益にはあまりつながりませんでした。
提案内容はすべて自社で行うのですか。
鈴木 基本的にはそうです。物流企画部でやっていますが、人も育ってきました。女性も活躍しています。20年ほど前になるでしょうか、メーカーや商社の営業の人に来てもらいました。物流企画部は今は10人ぐらいの組織ですが、彼らが若い人を育てています。年に3回ぐらい全社から15人ぐらいを集めて、当社のコンペティブ・アドバンテージとは何かとか、提案営業のシミュレーションをしています。
20年前の人材が今生きているわけですか。
鈴木 提案営業というと格好はいいのですが、そんな簡単なものではありません。時間がかかります。20年前はわが社に営業マンはいませんでした。親会社が仕事を取ってくれていた。独立したときに、営業マンがいないことに驚きました。それで採用に踏み切ったわけです。
◆ABC管理の導入で他社と差別化
3PLは1件当たりの金額が大きく、売り上げは増えますが、利益がなかなか出ない傾向にあります。
鈴木 その通りです。大儲けすることは難しい(笑)。競合他社の値引き競争も熾烈です。しかし、顧客の本当の改革になり、顧客そのものの競争力が高まり、うちを評価してくれれば、やりがいのある仕事です。だいたい立ち上げ時は赤字です。その赤字が3カ月以内で止まれば成功です。
同業他社との値引き競争には、どのように対処しているのですか。
鈴木 あくまで提案内容で勝負したいところですが、相手がある限り、そう杓子定規にはいきません。ただ、やみくもな値引きはしません。数年前にABC(活動原価基準)管理を採用しました。すべてのコストを正確に把握しています。どこまでの値引きなら赤字にならないかは、営業の人間が分かっています。採算が取れないなら、すぐに撤退します。いろいろなコスト管理をしてきましたが、ABCは一番理にかなっている。採用する物流企業がまだ少ないのは残念ですね。
ABCに関しては、採用の時に社内の猛反対にあったと聞いています。
鈴木 お金がかかり、売り上げ増にもつながらないと社内のほとんど全員が反対でした。一番高いコンサル会社にしたのも猛反対の理由で、また社長の道楽が始まったと言われました。しかし、自分のところの正しいコストも分からないのでは、戦いはできません。どんぶり勘定の多い物流の世界で、これだと思いましたね。いまでは全員がABCのすばらしさを理解したと思っています。
◆SCMは“もどき”でかまわない
今後も日本では、SCMがさらに進んでいくのでしょうか。
鈴木 進むでしょうが、SCMは複雑でもっとどろどろとしたものです。SCM先進国の米国ですら失敗と成功は半々と言われています。日本なら成功は10分の1でしょう。しかも限られたほんの一握りの超大手企業でしか成功しないと思います。ほんとのSCMは難しいと思います。SCM志向は続くでしょうが、SCMもどきでいいと思っています。
―簡単には進まないと。
鈴木 本を読んだり、外国のソフトベンダーの話を聞くと実に簡単に見えますが、やるには企業のすみずみまで見せてしまうような大きな覚悟が必要です。ソフトを導入すればできるというものではありません。セオリーや考え方はいいのですが、完全に実行することは難しい。だから“もどき”でいいと思います。SCMを完全に動かすコストと手間を考えると、どこかで適正在庫を持ったりした方が、はるかに現実的なことが多くあります。ここが物流企業の出番です。米国でいいからといってそのまま真似して、成功するとは限りません。
米国の合理主義を標榜していますが。
鈴木 私は米国の教育も受け、米国の考え方大好きなのですが、同じことを日本でやれば必ず失敗しますし、やる必要もありません。米国は多民族・多文化の国です。だから合理主義でいくしかありません。それに対して、日本は嫌いなところもありますが、江戸時代からの共同社会です。グローバルにビジネスをやろうと思えば、日本のやり方では無理です。外国の物まねは、ある意味では仕方がないことですが、米国と同じようにやるからすべて失敗するのです。米国から学ぶことは重要ですが、日本でのやり方をもっと深く研究してから実行するべきです。
◆“丸投げ”前の改善提案を重視
日本のSCMや3PLに不足しているものは。
鈴木 まず企業が情報をすべて開示していません。都合のいいところだけを開示して、物流改革をしろと言われても、うまくいくわけはありません。それと日本の荷主企業の多くが、まだ、自分で汗をかいていません。自分でできないものをすべて物流企業に丸投げしても、何も始まりません。残念ながら、こういうケースがまだあります。
丸投げされれば物流企業は儲かります。
鈴木 その通りですが、その会社は逆に物流企業から逃げられなくなります。いつも下から怒られるのですが、そういうやり方はわたしは好きではありません。物流改革提案の真髄は、丸投げされる前の提案にあると考えます。少し前の話ですが、顧客で、倉庫に25億円の在庫を眠らせている会社がありました。それで「やり方がおかしい」とアドバイスしたことがありました。その会社は本気で改革に取り組まれて、在庫の大幅圧縮に成功しました。うちの保管料収入は大幅減になってしまいましたが、すごく喜ばれた。顧客が元気なことが一番ですし、これが信頼関係だと思います。
最近の荷主の価値観は信頼関係よりもコスト最優先主義の傾向が強いですね。
鈴木 コストは大切なことです。日本でも最近、契約至上主義や利益最優先の傾向が強くなってきました。ただ、あの米国ですら、マネジャー同士がお互いの企業カルチャーを話し合い理解を深めるようなケースがあるのです。信頼関係もなく、自己主張のぶつかりあいだけでは、とても不幸なことです。企業文化を理解し合い、合わせられなければ、本当にいいシステムは生まれません。
富士ロジテックの将来像をどのようにお考えですか。
鈴木 過去を振り返ると、当社はドメスティックな倉庫でした。流通加工や在庫管理システム、3PLなど品ぞろえを増やして、ここまで来たわけです。大手の倉庫企業と同じようなことをしている。セールスポイントは柔軟性ということになりますが、このやり方だとどうしても収益性が下がります。私はこれでいいと思っていますが、選択と集中の時代ですので、ひとつの決断の時期かもしれません。
大きな決断になりますね。
鈴木 うちのような小さな企業が単独で生き残っていくのは本当に難しいことです。方法はいろいろあると思います。株の公開とか合従連衡(アライアンス)かもしれない、グループ化かもしれない。組む相手は外資かもしれないし、同業者かもしれない。あくまで単独にこだわる気持ちはありません。
具体的に進んでいるのですか。
鈴木 それは全くありません。ただ、どんなことにも対応できるようにしておく必要があります。その検討の時期に来ているということです。最終決断は次の社長の仕事でしょう。
ありがとうございました。 (本誌編集部)