現在地 HOME > 掲示板 > 国家破産22 > 691.html ★阿修羅♪ |
|
「議会に対して、私は、血と労苦と涙と汗の他は何も提供するものを持たないと申したい」(ウィンストン・チャーチル 第二次大戦中の英国の首相 1874〜1965)
--------------------------------------------------------------------------------
「国会は、国権の最高機関であって、国の唯一の立法機関である」(憲法第41条)。現実はどうか。最高機関と呼ぶにふさわしい存在とは言えない。
真に立法機関としての役割も果たしていない。行政府が作った法案を採決するだけのマシーン化しているのが現状だ。国会は空洞化している。
小泉政治は行き詰まった。国会の復権なくして日本の政治の再生なしである。今の国会議員の中で最も冷静に、大所高所から日本政治を見、心配している渡部恒三衆議院副議長を訪ね、日本再生の道をきいた。
過った改革を反省せよ
―― 今の政治の状況をどう見ていますか。
渡部 残念なことだが、この十数年の間、わが国の政治は過った改革ばかりやってきた。改革は大切だが、日本は80年代後半以後過った改革を積み重ねてきた。この事実を認識し、反省して過ちを正さないと、日本は滅亡してしまう。
80年代末、伊東正義さん(元外相)や後藤田正晴さん(元官房長官)の時代に「政治改革」は天の声のようにもてはやされ、これを批判する者はあたかも謀反人のように扱われた。結果として政治改革は選挙制度改革になったが、大失敗に終わったと断ぜざるを得ない。
今の制度は小選挙区300、比例制180の定数だが、小選挙区落選者が比例区で復活当選するなどということでいいのか。供託金を没収されるほど少ない得票しかできない候補者が当選する――本当にこれでいいのか、と言いたい。
政治家の誇りは選挙に命をかけ、有権者の支持を得て当選するところから生まれるものだ。支持されなくても当選できるような過った制度のもとでは政治の権威は生まれない。
小選挙区制になって活発な政治論争が行われなくなり、無気力になった。選挙改革を根本から見直さなければならない。少なくとも比例制は廃止すべきだ。
行政改革も失敗した。はじめは役人の数を減らし、それによって国民の税金による行政経費を減らすのが目的だった。だが、結果は省庁再編のみ。役人の数は減らなかった。役人は責任感と誇りをなくした。行政改革の美名のもとで行われたのは改悪だった。この10年間、政界は「改革」だけを叫びつづけてきたが、結果は「改悪」ではなかったか。政治はこの事実を認識することから出発すべきだ。
―― いま取り組むべきは失敗に終わった90年代の改革の「逆改革」ですね。
渡部 そうです。90年代の過った改革を逆改革すべきだ。これは戦後58年全体についても言える。戦後、「日本のすべてが悪かった」との風潮が高まり、日本の優れた伝統――家族主義、義理人情などが否定されたが、これは過ちだった。いまヨーロッパやアメリカで家族主義など日本の古い伝統が再評価されるようになっている。長い歴史の中で育まれた思いやりと感謝の心――こういうものを日本人は取り戻さなければならない。
日本再生のために
―― 小泉首相は財政再建とブッシュ政権の言うがままの不良債権処理ばかりに固執してきましたが、その経済政策は明らかに行き詰まりました。一方、ブッシュ政権は不況対策として成長政策と福祉政策をとる方向を打ち出しています。小泉政権はブッシュ政権の言葉に従うのではなく、このような柔軟な政策運営を見習うべきだと思いますが、どう考えますか。
渡部 同感です。いま政府がなすべきことは安定成長と社会福祉のための政策です。政府は国民に「痛みに耐えよ」と説教する前に、デフレ経済下で苦境に立っている人々に温かい救済の手を差し伸べなければならない。
―― 国会に緊張感が欠けています。どうしますか。
渡部 日本は民主主義の国。国民を代表する国会が政治を代表する。そのためには国会は国民から信頼される権威ある存在でなければならない。ところが残念なことに、最近、国会議員自身がテレビなどで国会の権威を傷つけるような発言をしている。これはデモクラシーの否定だ。小泉君自身が国会の権威を下げるようなことをしてはいけない。
―― 日本は重大な時期を迎えていますが、今後の政治のあり方についてどう考えていますか。
渡部 長期的課題だが、21世紀憲法をつくるため、民主的な超党派連立体制を組む必要がある。21世紀憲法をつくる中で、戦後捨てた日本の大切なものを取り戻したい。90年代の過った改革の「逆改革」を実現したい。必要なら一時的に挙国一致政権を樹立することを検討すべきだ。このためには自民党と民主党の両党が同じ力を持つことが必要だ。
―― 21世紀の日本を切り開くためには老・壮・青3世代の協力が必要不可欠ですが、渡部さんはその中心に立つべき責任を負う政治家だと思います。
渡部 21世紀憲法をつくるには戦時・戦中・戦後の日本を生身で知る者が先導する必要がある。全力を尽くしたい。
【以上は『経済界』3月17日号に「森田実の永田町風速計」として掲載されたものです】