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景気を語るこの指標
100円玉が示唆する景気の後退(上野泰也)
上野泰也・みずほ証券投資戦略部チーフマーケットエコノミスト
分かれる消費動向の判断
個人消費の短期的な動きをどうとらえるか。エコノミストが常に悩まされるテーマである。需要側の統計である家計調査と、供給側の統計である商業販売統計や各種業界統計。それぞれが示す方向感は、往々にして異なる。1月の日銀金融経済月報では、個人消費は「弱めの動きを続けている」としている。一方、政府の月例経済報告では、「需要側の動向をみると、引き続き底堅さがみられる」とする一方、「販売側の動向をみると、全体的に弱い動きとなっている」ことから、「需要側と販売側の動向を総合してみると、横ばいで推移している」と結論づけており、消費のベクトルは判断が分かれている。
別の角度から、消費ひいては景気の動向をとらえられないか。筆者は、支払手段の統計に着目している。支払手段には現金、クレジットカードやデビットカード、商品券や図書券などの金券があるが、モノを買う時は、現金で支払うケースが大半であろう。このうち、景気のインジケーターとして最も使いやすく、シグナルがはっきりしているのが、コインの市中流通残高(日銀から外に出ている金額)である。
100円玉がインジケーターに最適
一般に、経済活動が活発になれば、世の中に出回っている現金流通残高は伸び率を高める。しかし、現在の日本の経済金融情勢はいささか特殊であり、日銀券残高を含む現金の総量や、日銀券残高では、景気のアップダウンを示すシグナルがとらえにくくなっている。
日銀券(紙幣)は、(1)97─98年に高まった金融システム不安に伴う「タンス預金」の増加(2)「コンピューター2000年問題」直前の99年12月に手元に置くお金を多めにする人の急増(3)2002年4月からの定期性預金に関するペイオフ解禁を前にした「タンス預金」の増加(4)定額郵貯の満期到来集中など、さまざまな特殊要因によって景気の動向とは無関係に、前年同月比の伸び率が振れる。
そこで、硬貨(コイン)に目を向けるわけだが、これにも問題がある。コイン全体の流通残高は、昭和天皇在位60周年記念10万円金貨などの発行で、86─87年に伸びが異常に高まるなど、数字は大きくゆがんでいる。このため、分析には不向きである。
したがって、コインの種類別に検討を加え、景気のインジケーターに最も適したものを選び出す作業が必要になる。結論を先に言うと、個人の購買行動に際して使用頻度が高く、退蔵の問題が生じにくく、動きにメリハリのある100円玉が最適。次いで10円玉が良い。100円玉流通残高の前年伸び率は、昨年2月にピークをつけ、年末にかけて急速に鈍化している。これは、景気後退局面が近いことを示すサインである。100円玉流通残高(前年同月比)の上下動(ピーク・ボトムをつけた時期)をみると、90年代には景気の「谷」に対しては遅行していた。しかし、景気の「山」に対する先行性は、ヒストリカルに見て、非常にシャープである(図表1参照)。
昨年中に景気拡張は終了
過去6回の景気の「山」に対する平均先行ラグは約11カ月であり、これを02年2月の直近ピークに加えると、今年1月頃に、景気は「山」をつけた計算になる(図表2参照)。これは、昨年夏から秋に景気拡張局面が短命のうちに終了したとする、筆者を含む民間エコノミストの景気認識と、おおむね合致している。
このほかのコインはどうか。500円玉は、旧硬貨時代の偽造頻発とその後の新硬貨発行で数字がゆがんでおり、使いにくい。また、50円玉と5円玉は使用頻度が低く、伸び率の動きにメリハリが乏しい。
1円玉は、10年ほど前に景気のインジケーターに使っていたことがあるのだが、その後、郵便局などでの退蔵問題がクローズアップされたことや、動きのメリハリが100円玉や10円玉よりも劣ることから、主役の座を降りてもらった。ただ、景気後退のシグナルは、ここでもきちんと発信されている。1円玉流通残高の伸び率は、このところゼロパーセントに張り付いており、これは過去最低の水準である。
[2月27日]
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上野泰也(うえの・やすなり)
金融市場の的確な分析・予測で多くの投資家から支持を受けている。「日経公社債情報」のエコノミスト人気調査1位、テレビ東京の「WEEKENDサテライト」ではコメンテーターを担当。1963年生まれ、東京都出身。会計検査院、為替ディーラーなどを経て、2000年10月みずほ証券設立に伴い現職。
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