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　株価がバブル崩壊後の最安値水準で推移している。イラク情勢の緊迫化に加え、大手銀の財務体質への不安が、投資家心理を冷え込ませているのだ。加えて、日銀新総裁に内定した福井俊彦氏（富士通総研理事長）が、「デフレ克服に消極的」（市場関係者）とみられていることも拍車をかける。市場では、政府、日銀による株価対策の手詰まり感から、米のイラク攻撃を引き金に一気に８０００円を割り込み、３月危機に突入する懸念が広がっている。

　決算期ごとに襲う“危機”懸念。「現状でも十分危機的状況」（準大手証券）だが、さらなる危機が目前だ。

　下落要因の１つが、イラクや北朝鮮情勢の緊迫化という「地政学的リスク」だ。原油価格急伸を背景に米国景気の先行きも懸念され、「米英がイラク攻撃に踏み切れば確実に８０００円割れする」（大手証券）。

　加えて、大手銀行株の下落が市場ムードを冷え込ませる。年明け以降相次ぎ増資を発表したが、その中心は優先株発行による調達で、「高い配当負担はリスク」（金融アナリスト）。既存株主への負担が後手に回ることなども嫌気され、売りにつながっている。

　また、金融庁は２６日、大手銀の平成１４年９月末の自己資本比率が、「税効果資本を除くと５．５％に留まる」との試算を示した。海外に営業拠点を持つ健全行の基準「８％」を下回る「想像以上の財務内容の悪さ」（前出の金融アナリスト）。２６日には、みずほが一時１０万円を割り込んだほか、三井住友、三菱東京とも上場来安値を更新した。

　株式市場は３月期末決算に向けた株価対策を期待するが、今回は「期待薄」。１年前は、２月２７日に政府が総合デフレ対策を、日銀が金融緩和策を発表、株価上昇を誘った。

　市場では、日銀による大手銀の保有株の直接買い上げ枠２兆円の拡大や、株価指数連動型上場投資信託（ＥＴＦ）の購入など、「直接的な下支え効果に加え、株価下落の根本要因であるデフレの克服にもつながる」（外資系証券）対策を求めているが、期待に冷や水を浴びせたのが、福井日銀新総裁の内定だ。速水優現総裁と同様デフレ対策に消極的とされ、「金融政策の大転換は遠のいた」（同）と失望感が広がっている。

　「買い材料が全くない」（中堅証券）なか、銀行株に引きずられる形で下落を続ける株価。含み損は当然、企業業績にも打撃を与える。

　自民党金融調査会作業部会は２６日、デフレ克服のため「インフレ目標の導入」など、金融政策の転換を求める要望書を小泉純一郎首相に提出することを決めたが、「何もないよりはいいが、口だけの首相には期待できない」（前出の金融アナリスト）。

　イラク攻撃とともに、３月危機へのカウントダウンが始まっている。

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