現在地 HOME > 掲示板 > 国家破産22 > 596.html ★阿修羅♪ |
|
日銀出身総裁は売りか?――日経金融新聞スクランブル
「日経平均株価の8000円割れがいよいよ現実味を増してきた」。25日
の東京株式市場では緊迫感が一気に高まった。イラク攻撃や北朝鮮のミ
サイル発射といった地政学的リスクが急落の引き金を引いた。だが前日
決着した次期日銀総裁人事も相場に影を落としている。
「次は旧大蔵省出身の"株式相場にやさしい日銀総裁"になるぞ」。
予想に反して日銀出身の福井俊彦氏が次期総裁に決まる数日前、ある証
券系研究所の部長はこんな期待を口にしていた。
戦後、日銀総裁職は日銀と大蔵の出身者が交互に務める「たすき掛け
」が慣例となっていた。現職の速水優総裁が日銀出身なので、市場では
「次は大蔵出身者」とみる向きが少なくなかった。
日経平均の算出が始まった1949年以降に就任した歴代総裁について任
期中の騰落率を計算した。三菱銀行出身の宇佐美洵氏を除く9人のうち
日銀出身は5人、大蔵出身は4人。大蔵出身者は平均上昇率が102.2%と
大きい。任期中に株価が二倍になっている計算だ。
一方、日銀出身総裁の平均上昇率は22.2%に過ぎない。バブル崩壊後
、三重野康(49.9%下落)、速水優(2月25日終値で50.3%下落)の両
氏が総裁を務めた影響が大きい。それでも両氏の間に位置する大蔵出身
の松下康雄総裁の時代は12.2%の下落にとどまっている。過去の経緯を
みる限り、大蔵出身総裁への期待が強かったのもうなずける。
旧大蔵省が景気を重視するのに対し、日銀はインフレ抑制を優先する
とされてきた。その政策姿勢の違いが過去の株式相場にも反映したとの
見方が市場では一般的だ。もちろん大蔵出身の澄田智総裁による80年代
後半の超金融緩和がバブルを招いたことを考えれば、どちらが真の意味
で「株式相場にやさしい」か一概には言い切れない。
しかし現時点では、日銀が旧来のインフレ抑制型の発想に基づいた金
融政策に執着すれば、株式相場は深刻な打撃を被りかねない。戦後に例
をみないデフレが株価をむしばんでいるからだ。海外投資家の間では、
インフレ目標導入に積極的な中原伸之前日銀審議委員の就任を期待する
声が最後まで強かった。
小泉純一郎首相は次期日銀総裁について「デフレ退治に積極的な人」
と言い続けている。市場でも「福井氏は速水現総裁に比べれば柔軟。従
来にないデフレ克服策に踏み切る可能性もある」(メリルリンチ日本証
券の菊地正俊シニアストラテジスト)と期待する声は聞かれる。
問題はスピードだ。「仮に新総裁がインフレ目標に前向きになったと
しても、実際の導入には少なくとも半年程度はかかるだろう」とクレデ
ィ・スイス・ファースト・ボストン証券の安達誠司エコノミストは予測
する。
安達氏が参考にしているのは戦前の昭和恐慌当時の経緯だ。
1931年12月に犬養毅内閣が発足。金本位制から離脱したことで急激な
円安が進み、景気が一時的に回復した。その後、景気が再び悪化したこ
とで財政・金融政策を総動員する危機意識がようやく高まり、32年11月
に日銀による国債引き受けという異例の措置に踏み切った。
今回も日銀が過去に例のない政策に踏み切るには、審議委員や執行部
といった日銀内部のほか、政府や与野党の反対勢力などの説得にかなり
時間がかかりそう。安達氏は「完全失業率が6%超に上昇するなど戦前
と同じような社会不安が高まらない限り、政策転換は難しいかもしれな
い」とみる。
「日銀の意思決定が従来より機動的でなくなる」。日銀首脳人事につ
いてコメルツ証券の宮島秀直ストラテジストが欧米の機関投資家に意見
を聞いたところ、こんな回答が相次いだという。株価が危機水域に近付
きつつある現在、判断の遅れは致命傷につながりかねない。(木村貴)