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日銀分裂危機、財務省“乗っ取り”画策
インフレ目標巡り総裁と副総裁が「一触即発」
念願の日銀新総裁となる福井俊彦氏(左)。だが、超大物の武藤敏郎・前財務事務次官(中)とインフレ目標論者の岩田一政・内閣府政策統括官を副総裁に抱え、日銀は一触即発の分裂危機に陥る?
「小泉色」がすっかり消え、大本命の元日銀副総裁、福井俊彦・富士通総研理事長(67)に落ち着いた日銀新総裁の無難な人事。「魔法の杖(つえ)ではない」とインフレ目標導入に消極的な「プリンス」への大政奉還で、日銀内部もひと安心のようだが、早くも波乱含みである。副総裁になる超大物の武藤敏郎・前財務事務次官(59)の存在で、「武闘派ならぬ武藤派が『政府との政策協調』名目で日銀を乗っ取るのでは」との観測が浮上する。もう1人の副総裁、岩田一政・内閣府政策統括官(56)はご存じインフレ目標論者。「福井日銀」は中立・独立性も含め、一触即発の分裂危機に陥る可能性もある。
東大法学部から日銀に入り、将来を約束されていた30年来の「日銀のプリンス」福井氏。
本来ならば、先代の松下康雄総裁の後の総裁就任が濃厚だったが、平成10年の接待汚職で詰め腹を切らされた。
辞任後も日銀に強い影響力を持ち続け、日銀が銀行保有株を買い取る奇策を打ち出した際にも「政界との調整役を果たしていたのが、福井氏だった」(日銀OB)と、政治力も持ち合わせる。
経済同友会の副代表幹事を務め、財界とのパイプも太い。福井氏の総裁内定に、奥田碩(ひろし)日本経団連会長は「物静かな人だが、決断力が非常にある」と評価する。
政財界のバックアップを受け、順風満帆のように見える福井氏だが、大きな爆弾を抱える。
それが新副総裁、とりわけ財務次官経験者の大物、武藤氏の存在だ。
次官在任当時、「小泉純一郎首相が話を聞く数少ない人物の1人」(永田町筋)といわれた。
財務省などの財政政策と並び、「経済政策の両輪」である日銀の金融政策を決めるのは、正副総裁計3人と審議委員6人の計9人である。
日銀OBでUBSウォーバーグ証券チーフエコノミストの白川浩道氏は、武藤氏が審議委員を抱き込み、多数派を形成すると予測する。
「9人のうち武藤派が5を占め、福井派が4と少数派になることも考えられる」というのだ。
そうなると、「通貨の番人」である金融政策はどう動くのか。
「財務省はインフレ目標の導入で金利が上昇することを嫌がり、日銀に淡々と国債買い増しをさせることになる。つまり従来と同じ路線で、小泉改革はまた後退することになる」(白川氏)
「日銀にとって、財務省は天敵中の天敵。日銀マンで財務次官とまともに口がきける人はいない」(財務省関係者)と揶揄(やゆ)される。
だから、武藤氏は財務省から日銀に送り込まれた刺客であり、“トロイの木馬”でもある。
「今回の人事で実体経済を知らない人ばかりなのは、バランスが取れていない」と語るのは、日銀OBの大塚耕平参院議員(民主党)である。
大塚議員も「武藤氏がキーパーソン。インフレ目標はやらないだろうが、日銀による国債買い入れ増額など、結果的に似たようなことをやるのでは」と指摘する。
財務省が武藤氏を押し込んだ背景には、インフレ目標策が自民党内の反対で尻すぼみになり、財政出動に流れが傾いていることへの強い警戒感がある。
福井新総裁で一体感の出た日銀が、国債購入をめぐり、財務省への攻勢に転じるのをけん制するというわけである。
もう1人の副総裁に内定した岩田氏は、旧経済企画庁から東大大学院教授を経て、内閣府政策統括官を兼務。平成13年の経済財政白書でaA物価目標の導入を提言するなどインフレ目標にも積極的で、日銀の方針とは食い違う。
「岩田氏も武藤派に入るのでは」(白川氏)
一見、日銀と財務省、内閣府のバランスを取ったかにみえる陣形だが、白川氏は「日銀は福井氏という『名』を取ったが、失った『実』は多いのでは」と分析する。
大阪府出身で、熱狂的なタイガースファンとしても知られる福井氏。お家騒動をまねられても困るのだが…。
福井総裁を得て日銀は悲願を達成したが、「日本再生」のカギを握るデフレ克服は、容易に達成されそうもない。
専修大の野口旭教授は「福井氏には、基本的には全く期待できない。どこがデフレ克服に積極的な人なのか。ヘタをすると、いま以上にデフレ容認に突き進む恐れもある」と憤りを隠さない。
12年8月にゼロ金利解除を強行するなど、日銀が不況を長引かせた元凶との見方も根強い。そして、その速水総裁の政策自体が「(日銀出身の元総裁の)三重野康氏−福井氏ラインの影響が大きい」ともいわれているのだ。
クレディスイスファーストボストン証券チーフエコノミストの岡田靖氏は、すったもんだ総裁人事をめぐる一連の騒動を「インフレ目標策が盛り上がった昨年末から現在まで、3月末の株価を意識した巨大なPKO(株価維持策)に過ぎない」と指摘する。
インフレ目標論者で総裁候補の1人と目されていた伊藤隆敏・東大教授は、「現状のままでは5年のうちに破綻(はたん)的な状況となる」と見解を表明するように、日本経済は危機的な事態に突入している。
福井氏の任期の5年間が日本経済の運命を分けることになりそうだ。
ZAKZAK 2003/02/25