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小沢一郎自由党党首が4年半ぶりに国会の代表質問に立った。小泉純一郎首相が掲げる改革は失速気味。これに対し、小沢党首は「改革の実現に政治生命をかける」と元祖・改革派を改めて誇示する。8月には、非自民の細川連立政権成立による55年体制崩壊から10年。当時も今も政界再編のキーパーソンである小沢党首は今の日本をどう見るのか。【松田喬和】
――代表質問の冒頭、「これほど論理的な議論の成り立たない総理はいなかった」と小泉首相を酷評しましたね。
小泉首相は感性とか情緒という範ちゅうですべての物事をとらえている。一市井の人ならいいが、トップリーダーがその次元で政治をとらえるのは非常に不適切だ。先天的に政治家としての適性に欠けているところがあるのではないか。
――「言語明瞭(めいりょう)、意味不明瞭」と言われたような政治家用語を変えた面もあったのでは?
それ以上に悪いね。旧来の自民党的首相は、自分の不明を恥じたり、うまくいかなかった場合にはわびるという、良心や誠意を多少なりとも持っていた。しかし、小泉首相は「何が悪いんだ」と開き直るだけだ。幼稚で単純、悪ガキの減らず口みたいなものだ。過去にも首相としての資質が議論された人物はいるが、彼は全く違うタイプだ。そんな自民党的でない人物をトップに据えざるを得ないほど、自民党政治は行き詰まっている。
――小泉首相は抵抗勢力との争いを疑似与野党関係としてプレーアップする手法で、野党の存在感を薄めてきました。しかし、改革のトーンダウンで最近はその手法が通用しなくなりました。国会でも与野党対立が鮮明になりつつあります。
状況が深刻化するに従って国民の見る目が、少しずつ変わってきたからではないか。男女のアツアツの状態を「あばたもえくぼ」と言うけれど、信頼関係が生まれないと恋愛は本物にならない。小泉首相と国民との間に信頼は生まれず、冷めてみれば「あばただった」ということだろう。そもそも小泉首相には基本的理念や哲学、それに基づく政策が全くない。特殊法人の独立行政法人化にしても、郵政事業の民営化にしても、化粧を変えるようなことをやっているだけで、中身は変えていない。しかも、化粧がはげて、地が見え始めている。
――だからこそ、代表質問で「日本一新9法」を明らかにしたのですね。
政治も経済もどん詰まりに来ている。国民も現実をシビアに見るようになってきているので、僕らの目指す新しい日本の具体像と自由党の政権構想を法案という形で、きちっとまとめて発表しておこうと考えた。
――「日本一新9法」は、10年前、小沢党首が自民党離党後に著した「日本改造計画」がベースです。やはり「失われた10年」だったからでしょうか。
「失われた10年」というと無駄だったというイメージがあるが、僕は無駄ではなかったと思う。僕の主張は革命的改革だから、一気には実現できない。時間もプロセスも必要だ。この10年間で、国民の意識は大きく変わり、日本はこのままではいけないと考えるに至るプロセスを歩んできたので、「無駄」でも「失われた」わけでもない。
明治維新も、黒船襲来以来15年かかった。ただ、僕が反省すべき点は、もっと前に「幕藩体制」、つまり自民党政治にとどめを刺せるチャンスがあったのに、それを逃してプロセスを長引かせたことだ。細川政権があと1、2年もっていれば、自民党政治に完全にとどめを刺せた。
――新進党もそのような船のひとつでした。
その意味ではそうだ。しかし、新進党には公明党という異質なものが含まれていた。さらに、今の民主党にも若干その傾向があるが、党内に不協和音があった。それは僕の不徳の致すところではあったが……。その結果、「船のどて腹に穴があきそうだ」という不安を国民に与えてしまった。今度は、沈まないと思ってもらえる船を早く造らなければならない。
船を造るためには、理念という高いレベルの問題もあるが、それ以前に政権を取る意欲を持たなければだめだ。僕は「大欲を持て」と言っている。いい船に乗って“宝島”に行けばいいのに、今はジャガイモ1個をみんなで分け合うようなことをしている。万年野党でいいなら政治家でいる必要はない。与党になって権力を国民から与えられてこそ、自分の政治的理念を実現できるのだ。
――ところで、イラク問題に日本はどのようにコミットすべきだと考えますか。
基本は、国連の決定や要請に従うことだ。僕の認識では、米国は最終的には攻撃するという決意に変わりはないが、国際世論を無視しては動けなくなっている。国連中心の僕らの主張に対し、日米関係は大丈夫かと反論する人もいるが、心配する必要はない。米国に対して「国際世論を味方にする努力をしなさい。我々も協力する」と言えばいい。ところが、今の日本にはその次がない。国連決議があるので一緒に戦おうとなった時、「憲法がありますから」と引っ込む国を相手にするわけがないではないか。「それなら黙っていろ」となるだけだ。
だから自由党は安全保障基本法で、国連の安保理や総会で決議が行われた時には、率先して活動に参加するために、自衛隊とは別組織の「国連平和協力隊」を新設することを提唱している。
――北朝鮮問題は?
イラクどころではない。一番大きな影響を受けるのは日本だし、核兵器やミサイルよりも怖いのはテロだ。つまり、北朝鮮が韓国を奇襲したら、在韓米軍では防ぎきれない。米国本土から直接、何十万もの兵は送れない。となると、日本を基地として出撃する以外にない。すなわち、北朝鮮にとっては、日本を戦線から離脱させることが勝利の最大の要諦(ようてい)になる。仮に僕が金正日(キムジョンイル)総書記だったらそう考える。日本の原発や新幹線は無防備だ。そこにテロを仕掛ければ日本はすぐ降参するだろう。すでに公安調査庁は数百人の北朝鮮工作員の入国を確認している。
――どうしたらいいですか。
日本人が、平和を乱すことは許さない、そのような独裁者は許さない、という心構えを持つことだ。有事や非常事態への対処から目をそらしてはならないし、国際協力にも積極的に参加すべきだ。さまざまな面で自立した社会を作り上げるしかない。
――「日本一新9法」によってどのような社会を実現するのでしょうか。
日本社会は基本的には、ものすごく内向きで閉鎖的だ。個人が集団に埋没する代償として生活と安全を保障されるコンセンサス社会だ。それは歴史の中で作り上げられた日本的民主主義だと思う。
明治時代に一時期、オープンで外向き、合理性が尊ばれる社会に変わったが、大正の半ば以降、軍部の台頭と相まって内向きの閉鎖社会に戻ってしまった。その傾向は戦後も冷戦構造の中で温存された。
しかし、今や日本的民主主義では国際社会の変化に対応できない。グローバリゼーションはアングロサクソン・ルールの世界化だと言う人がいるが、その要素は多分にある。でも、むしろ、グローバリゼーションを奇貨として、オープンで外向き、自己責任の自覚を持つ自立した個人による社会を確立すべきだ。そのような社会を作る基盤となるのが9つの基本法だ。
――そのような社会を作りあげる方法論ですが、自民党政権を打ち破る政権交代の展望を聞かせてほしい。菅直人代表になって民主党との協力が難しくなっているのではないですか。
僕はそうは思わない。理念的には、コンセンサス社会と自立社会との対立がある。だから、野党が戦後の自民党政治を否定して政権を取るには、自民党の理念と対立する自立社会の理念を掲げる以外にはない。
僕の理想は、この対立する2つの理念を持った2大政党が交互に政権の座につくことだ。コンセンサス社会を頭から否定しているわけではない。小泉首相も自民党も実態に合わせて「少しずつ変えていくのが日本的なんだ。改革を急ぐ必要はない」と言えばいいのに、「構造改革をやる」と心にもないことを言うから国民は混乱してしまう。
野党は理念を掲げると同時に、国民に「自民党はドロ船だ。間もなく沈む。早くこっちにいらっしゃい」と言えるような新しい船を造ってみせなければならない。代わりの船がなければ、安心して移って来られない。
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◇日本一新9法
市場経済▽特殊法人等整理▽国民生活▽税制改革▽地方自主財源交付▽国民主導政治▽安全保障▽非常事態対処▽人づくり――に関する基本法。地球環境保全と自然産業(農林漁業)維持の法案を加え、最終的には11基本法となる。