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[T] 米国の住宅バブルが崩壊しつつある
アメリカ経済は、今年、相当深刻な不況に突入するだろう。ITバブルの崩壊後、連銀が金融を緩和し過ぎたために住宅を中心に消費バブルが起きたが、この第2次バブルがこれから崩壊する。設備投資と消費という二大需要は同時に下降局面に入るだろう。
他方で、ITバブル、住宅バブルの過程で、設備投資が急増し、消費が増大した結果、過大な供給力が追加されてきた。バブルの崩壊による需要の急減で、過剰供給が表面化してきている。こうしたなか、自国の不況が多国籍企業を一段と中国投資に向かわせ、これが世界的供給過剰、デフレを加速する。
● 過大投資の反動でデフレ調整は長期化
アメリカ製造業の稼働率は現在約75%で、4分の1の設備が稼動していない状況だ。日本ではバブル崩壊後、製造業の稼働率が75%まで落ちたのが92年だった。ちょうど日本の10年後を追いかける形でアメリカの供給過剰が表面化してきている。バブル期の設備投資の増大で供給力はなお拡大傾向にあり、生産と能力のギャップの拡大が続く結果、アメリカの稼働率は70%を切ってくるだろう。
これだけ大きな過剰設備を抱えている状況で、需要政策を行っても意味がない。供給カットが必要だが、それは政治的に非常に難しく、どうしても需要政策で対応していくことになり、結果的に調整が遅れる。アメリカの調整も日本と同様に10年ぐらいかかるのではないか。
もう一つの問題は、コンピュータなど設備機器の価格低下で、設備投資デフレータが大きく落ち込んでおり、金額ベースで投資がカットされても、実際の設備能力はあまり落ちていないことだ。アメリカの設備投資比率は対名目GDP比で現在10.6%だが、今回の調整過程で8%を切るぐらいまで落ち込むことになるのではないか。
● 対中投資抑制に乗り出すアメリカ
中国の対米輸出が激増している。90年を100として指数化すると、米国の中国からの輸入は現在769.6とNAFTA(北米自由貿易協定)を結んでいるメキシコの442.0をはるかに上回る。中国からの輸入が米国の輸入全体に占めるシェアは93年当時の3%から10%へ伸び、日本のシェアを上回ってきている。
ただし、中国の対米輸出が急増したといっても、半分は中国を生産拠点とした外国企業からの輸出である。したがって、中国の対米輸出の急増を放置しておくと、日本、韓国、台湾といった近隣諸国の空洞化の進展に繋がる。これを食い止めるために、対中国直接投資を抑制するような政策が必要となってくるだろう。
アメリカの不況が深刻化するにつれて、アメリカが中国問題の先頭にたつ可能性もある。人民元の切り上げ要求も出てくるだろうが、中国が簡単にこれを飲むとは考えられないので、アメリカが中国製品の輸入規制といった措置を採ることも充分あり得る。日本の貿易との関連でいうと、アメリカの不況化で中国の対米輸出が落ちてくると、現地の生産拠点向けに機械や部品の輸出が急増している日本の対中国輸出も打撃を受けることは避けられない。
● 逆利回り革命を加速するブッシュ減税
ブッシュの経済対策に盛り込まれた配当二重課税の撤廃案によって、キャピタルゲインよりも配当の方が、税制上有利になる。これが実施されることになれば、株式の配当利回りが国債利回りを上回る、逆利回り革命を加速する可能性が高い。
同時に、これによって、企業経営者の手にあった資金配分の決定権が投資家の手に戻ってくる。株主が受け取った配当をどこへ再投資するか決めるようになり、これが経済の成長分野を決めることになっていくだろう。
さらに、配当課税撤廃の対象となる利益は税務当局に申告する企業所得だから、アメリカの企業会計の透明度が高まると期待できる。アナリストの利益相反という問題が表面化した背景として、最も重要なのは銀行と証券の分離を義務付けたグラス・スティーガル法が99年に廃止されたことだ。アメリカ企業のモラル低下の加速という今回の結果が、グラス・スティーガル法の復活、シティグループの再分割といった事態につながる可能性は充分残っている。
● 住宅ローンのリファイナンシングによる消費ブームの終焉
アメリカ経済を下支えしてきた住宅ローンの借り換えによる消費ブームも、ピークを打ったのではないか。個人の可処分所得に対する住宅ローン残高の比率は従来の40%程度から75%前後へ、歴史的にみても異常に上昇した。
ITバブルの崩壊後に連銀が積極的に金融緩和を行った結果、住宅ローンの借り換えが急増し、住宅や自動車を中心とした消費バブルにつながった。このような消費ブームのなかで、住宅ローン以外の消費者ローンも急増してきたが、クレジットカードのデフォルト率が史上最高水準に達するなど、もはやこれ以上家計部門も借金を増やせない状況になってきている。
2002年に、住宅ローン2.43兆ドルのうち、借り換えは1.41兆ドルを占めた。米国抵当金融協会の試算では、このうち10%強、少なくとも1400億ドルがいわゆるキャッシュアウトによって現金化された。これが主として自動車などの高額消費に回ったわけだが、米国抵当金融協会は2003年に住宅ローンの借り換えは半減すると予測する。
住宅ローンの借り換えに依存した家計部門の消費ブームは遠からず終了し、高額消費の代表である自動車の不況化は今後不可避であろう。そうなれば、日本の景気回復をリードしてきた自動車輸出も大きな打撃を受けることになる。
短期的にはアメリカは深刻な状況になるが、消費不況の加速で、過剰消費、低貯蓄率、経常赤字といった構造問題が是正され、中長期的には米国経済の相対的な強さが再認識されることになろう。
[U] 日本経済の調整は最終局面に入った
● デフレ本格化の分岐点は97年
日本経済の名目GDP(2002年第3四半期501兆円)と実質GDP(同538兆円)との乖離は97年頃から顕著になってきた。97年頃からデフレが加速し、名目では日本経済は着実に悪くなっている。特に消費で、この傾向が顕著で、実質では堅調だが、名目では弱い。
その他の経済指標をみても、97年から就業者数が着実に減少しているし、銀行貸出も同様である。雇用の問題をもう少し詳しく見ると、97年以降、製造業、建設、卸・小売といった狭義のサービス業を除く非サービス業の就業者数は、年率70万人のペースで減少している。一方、サービスの雇用は年率30万人増えてきた。
製造業、建設、卸・小売といったオールド業種での雇用減少は、構造調整の観点から言って、合理的で加速されるべきである。日本のように労働力人口の増加が期待できない経済にとっては、この部分の雇用をもっとカットして、合理化を進め、生産性を引き上げていく必要がある。一方で、サービス部門の効率を上げ、雇用を増やし、非サービスから吐き出される余剰人員を吸収していかなければならない。
しかし、これまでの、不良債権処理を通じた過剰の整理というやり方では調整のスピードでは遅すぎる。経済政策として不良債権処理しかしてこなかったことが問題を長期化させてしまった。非効率な部分の淘汰、新たなサービスの創出と育成を急ぐ必要がある。今、求められているのは、規制緩和と税制改革の推進である。
● 郵政改革よりサービス業の規制緩和
長期的な消費の動きも、サービス消費の拡大が、最終段階にきた日本の構造調整の目標であることを示している。2000年の一人あたり耐久財消費額は、米国の2857ドルに対して、日本は3742ドルとすでに米国を上回っており、基本的に買い替え需要しか期待できない。これに対して一人あたりサービス消費額は、アメリカの1万3883ドルに対して日本は7799ドルと、米国の60%程度に過ぎない。日本のサービス消費は大きく伸びる余地がある。
アメリカで90年代に伸びたサービスは何か。第一に人材派遣を含む企業向けサービス、第二が医療サービス、第三が社会福祉サービス、第四がエンジニアリング・マネジメントサービス(企業会計や広報等)、第五が教育サービスだったが、全体を通じて中小企業をサポートするサービス業が伸びていることが大きな特徴である。
日本の場合、サービス業発展の出発点は医療、介護等の高齢者サービス、教育にあるのではないか。こういった分野で高度のサービスが期待できなければ、消費者はよりよいサービスを海外に求め、消費者の空洞化が加速するだけだ。
● マネーサプライ鈍化の元凶はBIS規制
日銀の量的緩和にもかかわらず、マネーサプライは増えていない。日銀の積極的な緩和のおかげで、確かにマネタリーベースは前年比で19.8%増加しているが、マネーサプライの伸び率はM2+CDで2.2%、広義流動性で1.2%に過ぎず、むしろ伸びは減速している。
銀行は預金が増えても貸出しを伸ばさず、大幅な預金超過となっている。そして、銀行はこの余剰資金を国債の購入に充てている。BISの自己資本比率規制がある限り、銀行は自己資本比率の維持のために、貸出しを増やせない。
結局、金融緩和は銀行の流動性を増加させ、銀行を助けるだけで、その余剰資金で銀行が国債を買うというシステムを強化しているだけである。金融緩和やインフレターゲットは、国債消化をスムーズにやろうということでしかない。世界経済が悪化してくるなかで、BIS規制は日本の銀行だけでなく、世界の銀行の貸出し抑制を加速する原因となってきている。早晩、BIS規制手直しの国際協議が必要になるのではないか。
● 高金利政策が日本経済の生き残る道
新推計では、国民所得ベースの家計の貯蓄率が、個人の可処分所得の落ち込みで急落している。過去10年間に14.4%から6.6%へと半分以下に落ち込んだ。この家計貯蓄率では政府部門の膨大な財政赤字をカバーしきれない。
企業部門がフローでは貯蓄超過に転じているため、全体として辛うじて貯蓄超過を維持しているが、世界的不況が加速し、売上げが一段と落ち込めば、キャッシュフローは減少していく。設備投資を急激に落とさない限り、企業部門は再び投資超過部門になる。そうすると、経常黒字が予想外に早く解消していく可能性が大きい。
日本経済がなすべき合理的な対応策は、金利上昇によって家計部門の利子所得を復活させ、非効率な産業、政府の合理化を進めることである。今、政府に求められるのは、規制緩和と税制改革によって、日本のフロンティアであるサービスの創出と育成を促す枠組みを作ることだ。