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黒田前財務官、岩田教授VS吉川教授−財務省セミナーもデフレで激論
東京 2月21日(ブルームバーグ):20日の内閣府経済社会総合研究所に続き、財務省傘下の財務総合政策研究所が21日、「日本経済の課題−デフレと経済政策」と題したフォーラムを開催。代表的なインフレ目標論者である岩田規久男学習院大学教授と、黒田東彦前財務官、経済財政諮問会議メンバーでもある吉川洋東大教授らが論争を繰り広げた。
岩田氏はまず「1930年代、高橋是清蔵相のもとでの日本の政策も、ルーズベルト大統領のもとでの米国の政策も、デフレ容認からリフレ策へ、人々の予想に働き掛けるレジーム転換が重要だった。マネーの増加が期待を裏付けることによって、たちまちデフレは止まり、インフレになって生産も右上がりになった」と述べた。
岩田氏はまた、高橋蔵相のもとで景気が回復したにもかかわらず銀行貸し出しが減少を続けた点を指摘。「貸し出しの増加によってではなく、銀行が証券を買ったりすることでマネーが増え、さらにそのマネーが資産に向かい、銀行と企業の財務が改善し、デフレ期待がインフレ期待に変わって実質金利が低下した」と指摘。そのうえで「予想に働き掛ける政策を徹底的にやることで、実質金利を引き下げることができる」と主張した。
円安がデフレ阻止の即効薬
これに対し、吉川氏は19世紀の英国の大不況(1873−96年)を例に挙げ、「ケインズも著書『貨幣論』で言っているが、1890−96年は日本の今と同じようにベースマネーは10%程度伸びて、マネーサプライも伸びたのに、デフレが続いた」と指摘。マネーを増やせば物価が上昇するという貨幣数量説については「6年の長期にわたり(マネーの増加にもかかわらず)物価が下落した時期があったことが、十分な反証となっている」と反論した。
そのうえで「今の日本は20世紀の大恐慌より、19世紀の大不況の方が似ている。『デフレは貨幣的現象』という主張は半分正しいが、半分は今言った理由から留保したい」と述べた。吉川氏はインフレ目標については「それ自体が期待インフレを上昇させるという見方には懐疑的だが、1、2%の緩やかな目標なら、目くじらを立てて反対するようなものか、と思う」と述べた。
吉川氏はそのうえで「インフレ目標は政策のパッケージに被せる傘みたいなもので、それよりも、パッケージに何を入れるかの方が重要だ」と指摘。さらに「デフレを止めるためのメカニズムとして最も理解できるのは、為替相場の円安だ。できれば1ドル=130円、140円くらいに何らかの形で円安になれば、デフレに対して即効性があると思う」と主張した。
緩和の結果の円安は問題ない
次に、吉野直行慶應義塾大学教授は、日本の物価変動に影響を及ぼす要因として「最も大きいのは総需要で、次に金融政策、財政政策、そして銀行貸し出しとなっている」と指摘。そのうえで「金融政策は短期金利がゼロ%で、コントロールが難しい。財政政策の影響は60年代、70年代は大きかったが、最近は小さい。長期の説明としては総需要が一番(影響が)大きい。金融緩和は必要だが、物価に働き掛けるのはそれだけではない」と述べた。
その後、黒田東彦前財務官を交えて議論が行われた。デフレを止めるためには円安が最も即効性がある、という吉川氏の指摘に対して、黒田氏は「一国が物価の安定を目的として為替を切り下げるために介入をするのは、一般的な合意を得るのはなかなか難しいし、現時点では得られない」と反論。
黒田氏はそのうえで「金融政策にはいろいろなチャンネル(経路)がある。ポートフォリオリバランス(しみ出し)で(民間の)資産の中身を替えるときに、(日銀の購入資産は)外貨資産の購入に絞る必要はない。株や実物資産、外貨資産、さらには極端なことを言えば、直接的にモノを買うことで消費や設備投資を代替してもよい」と主張した。
財務省、日銀とも腰が引けている
吉川氏は日銀の金融政策に対して「金利については限界があるが、できるだけ緩和をすべきだ。2000年には(ゼロ金利解除という)逆噴射もあった。日銀は外部との対話という点で、どうも引けているところがある。せっかくある程度のことをやっても、(政策効果とは)逆のことを言ったり、(速水総裁が)円安は国を売ることだと言ったり、ちょっと良く分からない点があるので、改善すべきだ」と苦言を呈した。
吉川氏は返す刀で黒田氏に対しても「相手があるから(為替は)動かせないと言うが、一方で日銀に対してはマネーサプライを増やせと要求している。財務省、日銀ともに腰が引けている」と批判した。
黒田氏はこれに対して、「日本が大幅に金融緩和したとき、為替が円安に振れる可能性が高く、デフレ脱却に役立つことについては同意見だが、介入で外国の短期国債(TB)を買って、直接円安を引き起こそうとするのは、その是非よりも、国際的なルールとして受け入れられるかというと、そうはなかなか行かないのが現状だ」と指摘。そのうえで「金融緩和の結果としての円安は何ら問題ない」と述べた。
東京 日高 正裕 Masahiro Hidaka
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