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今回の議論も実のある内容はゼロ
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投稿者 あっしら 日時 2003 年 2 月 21 日 22:26:45:

(回答先: 黒田前財務官、岩田教授VS吉川教授−財務省セミナーもデフレで激論 [ブルームバーグ] 投稿者 あっしら 日時 2003 年 2 月 21 日 20:04:26)


昨日の内閣府経済社会総合研究所主催のフォーラムよりは少しレベルが上の議論だと思われる。

● インフレターゲット論の岩田教授

岩田氏のインフレターゲット論批判は昨日の書き込みで代えるが、1930年代「大恐慌」と現状の「デフレ不況」の本質的な違いを理解していない点を指摘しておきたい。
「大恐慌」の解消策は、連鎖的な銀行破綻と企業倒産が引き起こした急激なGDP縮小と物価下落を出発点として実施されたということである。

 日本は「震災手形」から金融不安は継続しており「大恐慌」に先行するかたちで「昭和金融恐慌」が起きている。
 米国も、1933年まで物価下落とGDP縮小が続き、そのあとで緩和政策が効き小康状態が続いた。
 言わば、アク抜きが終わった段階だからこそ、金輸出解禁・通貨発行量拡大や財政支出拡大といった政策が効果を見せたのである。

 しかし、管理通貨制と民主制福祉国家である日本で起きた「バブル崩壊」では、破壊的な経済崩壊は抑え込まれ、管理されたダラダラ“恐慌”として続いた。98年以降のGDP縮小や物価下落は、年率1%から2%といった限定的範囲である。
それどころか、産業競争力が高い日本経済は、財政支出に支えられながらとは言え、96年まではGDPも拡大し物価もわずかながら上昇した。

 壊滅的経済状況からの回復とこのような本質的な違いを考慮しないまま「高橋時代」の政策有効性を持ち出しても説得力を持ち得ない。
 必要もなく受け入れもされないことだが、「バブル崩壊」で生じるはずの銀行破綻と企業倒産を放置していていれば、一時的な大災厄を経験するにしても、日本産業の力から言って急速な回復を見たであろう。もちろん、底が深いのでデフレ不況であえぐ現在のGDP規模まで回復したかどうかもあやしいが、景気は、規模ではなく変動に規定されるものなので、経済活動は活発なものになったであろう。(「デフレ不況]逃れの中国などへの製造拠点移転も大きく抑制されていたはず)


● 円安論者の吉川教授

 吉川氏は、マネタリズム的物価変動論の反証として、19世紀後半の英国大不況を挙げている。
 しかし、これも、ベースマネーの伸びを示しているが、マネーサプライの伸びには触れていない。
 「6年の長期にわたり(マネーの増加にもかかわらず)物価が下落した時期があったことが十分な反証となっている」としているが、英国内のマネーサプライ変動を示さないままそう結論するのは欺瞞である。

 この時期の英国は、インド・アフリカでの植民地開発や米国での産業近代化に膨大な投資を行っているのみならず、日本もそうだが、通貨不足の国々に貸し出しを行っている。
 そして、投資を行う米国での生産性上昇がもたらす財の供給量拡大を輸入というかたちで受け止めている。(そうしなければ、投資した米国の企業が破綻することになる)
 米国のみならず、この時期にはドイツも急速に産業近代化を遂げており、英国の生産性を上回りより安価な財を供給するようになっていた。

 この時期の英国は、増加する金保有をベースに通貨発行量も増加したが、貨幣はより有利な収益性を求めて、国内ではなく米国や植民地などへの投資や外国政府への貸し出しに回り、その一方では、成長著しいドイツや米国そして植民地から安価な財が流入するという経済状況であったが故に、供給>需要のギャップ拡大から長期のデフレ不況が続いたのである。

 吉川氏は、「今の日本は20世紀の大恐慌より、19世紀の大不況の方が似ている」としているが、高い産業競争力・世界一の経常収支黒字・対外債権大国&国内“余剰通貨”という要素を考慮すれば、20世紀「大恐慌」に近いといえる。
19世紀「大不況」的側面は、中国への投資とそこからの製品流入である。

 吉川氏は、「デフレを止めるためのメカニズムとして最も理解できるのは、為替相場の円安だ。できれば1ドル=130円、140円くらいに何らかの形で円安になれば、デフレに対して即効性があると思う」と主張しているが、これは達成されないだろう。
(1ドル=200円くらいになれば、悪性インフレ=スタグフレーションというかたちでデフレが解消されると見ている)

円安は、同じ数量の輸出であっても輸出企業の利益を増加させ、輸入財の価格を押し上げる働きをする。
しかし、現在でも優良輸出企業は高収益を達成しているが、それを需要に転化する給与引き上げや拡大的投資に使っているわけではない。円安でさらに利益が増加しても、給与引き上げや国内での拡大投資に使われるという見通しは立てにくい。
(新規投資も中国などに振り向けられる可能性が高く、そのために資本財などの輸出が拡大するとしても、安定的な需要増大要因である雇用の拡大にはつながらない。それどころか、投資先が稼動を始めれば、そこで生産された製品が日本に持ち込まれ、デフレ圧力に加わることになる)

輸入財の価格上昇はデフレ解消に資するだろうか。これも否である。

給与の引き上げなどで可処分所得=購買力が増加すれば、輸入財の価格上昇がもたらす最終消費財の価格上昇をこなすことができるが、購買力が変わらない(それどころか賃下げも行われている)のに、どうやって価格上昇を受け止められるというのか。
将来への不安もなく貯蓄もある家計は、生活内容を維持するために貯蓄を取り崩して対応するかもしれないが、そうでない家計は、生活内容を切り詰めて対応することになる。
そうでない家計が多数であれば、輸入物価の上昇で生じたコストアップを販売価格に転化できなかったり、販売数量が減少してしまうことで、企業収益がさらに減少し破産や首切りが増加することになる。
日本は食糧自給率が40%であるから、輸入物価の上昇は生存の基礎である食料品の価格にもろに跳ね返る。余裕がない家計は、可処分所得に占める食料費を高め、産業製品への支出を減らすことになる。

ドラスティックな円安になれば、必需品の物価上昇が給与引き上げを必然化すると思われるが、企業収益の低迷であえいでいる現状では、総体的な物価上昇を埋め切れるだけの給与引き上げが行われるとは考えられない。

もう一つ、製品輸入比率が60%を超えている現状で、円安が輸出企業の価格競争力ひいては利益の増加につながるのかという大きな問題もある。
かつてのように原材料を輸入して、国内で生産した機械設備や中間財を使って生産した財を輸出するという構造ではない。
資本財や中間財の輸入比率が高ければ、給与水準は同じでも、財の生産コストがアップし、円安による輸出競争力を帳消しにしてしまう。


● 総需要論の吉野教授

 日本の物価変動に影響を及ぼす要因として「最も大きいのは総需要で、次に金融政策、財政政策、そして銀行貸し出しとなっている」と指摘する吉野氏は、総需要が一番(影響が)大きいという説明だけなので、そうですねとしかいいようがない。

総需要を短期長期の両方でできるだけ歪みなく増加させる方法が問われているのだから、総需要がいちばんと言うだけでは意味がない。
貸し出しの増加は総需要拡大の結果生じるものであるから、金融政策と財政政策に拠らない総需要拡大策を説明しなければ、何も言っていないのと同じである。

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